政策期待も外部要因で下振れ懸念、原油価格を注視

著者:冨田康夫
投稿:2016/05/27 19:10

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、伊勢志摩サミットが終了したことで、消費増税の延期をはじめ、「ニッポン一億総活躍プラン」、「新成長戦略」、補正予算など、参院選を前にしての経済政策に関心が集まりそうだ。ただ、これらの政策は既に株価にほぼ織り込まれており、新たなプラス効果は限定的となりそうだ。

 政策期待感から、一定の買い需要は想定できるものの、原油価格や外国為替市場での円相場など、外部要因に大きく左右される下振れ懸念も同居する神経質な展開が予想される。日経平均株価の想定レンジは1万6400~1万7200円とする。

 市場関係者からは「27日の日経平均株価は、3日続伸となったものの東証1部の売買代金は1兆6581億円と今年最低を更新し、7営業日連続で2兆円を割り込んだ。まさに相場格言の“閑散に売りなし”が続いている」との見方が出ていた。

 外部要因で注目なのは、6月2日に開催される石油輸出国機構(OPEC)定例総会。ただ、NY原油先物の指標油種であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の価格が1バレル=50ドル台に乗せるなど、順調な戻り基調にあることから、増産凍結など価格上昇につながる協調行動が決議される可能性は少ないとの見方が多く、原油価格が株価の波乱要因となる可能性もある。さらに、6月14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)開催を前に、3日に発表される米5月の雇用統計に関心が集まりそうだ。

27日の動意株

 日本ラッド<4736>=後場に入って一時ストップ高。
同社はきょう、AI(人工知能)を活用した映像解析インデックスシステム「ブイアナライザー」のベータ版を6月1日にリリースすると発表。これが材料視されているようだ。ブイアナライザーは、録画済みの映像から主要な物体を自動認識するほか、映像中の看板や標識などを読み取り文字化することにより、管理画面からの映像中の場面の検索を容易に行うことができる。

 ラクーン<3031>=大幅高で3日続伸。
主力のECサイト「スーパーデリバリー」が好調に伸びており、16年4月期営業利益は推定2割を超える増益見通しと高成長が続いている。改正資金決済法の成立を契機にオンライン決済でノウハウを持つ企業に物色の矛先が向かっているが、同社は運営するBtoB掛売り・請求書決済代行サービス「Paid」が昨年フィンテック協会に加盟するなど同関連銘柄としての位置付けが定着している。需給面でも直近売り残・買い残ともに増加し、取組妙味が高まっている。

 日本化学工業<4092>=後場一段高。
リン製品やクロム塩類などの工業薬品メーカーで、電子材料では自動車向けなどにコンデンサー材料の需要が旺盛だ。放射性物質吸着剤向けにシリカ製品が好調なほか、リチウムイオン電池普及で不可避となる発熱、発火事故に対する安全性を担うホスファゼンを手掛けていることも注目されている。

 ガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>=急反発。
同社はきょう、iOSやAndroid、Kindle Fire端末向けのパズル RPG「パズル&ドラゴンズ」中国版の事前登録を開始したと発表。ユーザー数拡大による業績への寄与が期待されているようだ。「パズドラ」中国版は、中国の総合的なインターネットサービスの大手プロバイダーであるテンセントと共同で開発を進め、このほどテンセントが提供するWeixin/WechatおよびモバイルQQで事前登録を開始した。

 光陽社<7946>=急伸。
同社は26日の取引終了後、従来未定としていた17年3月期の最終利益予想について、7億8000万円(前期4500万円)になりそうだと発表しており、これを好感した買いが入っている。東京都新宿区の土地・建物を売却したことに伴う譲渡価額が12億円で確定したことが要因としている。なお、売上高42億円(前期比0.3%増)、営業利益1億円(同11.1%増)は従来予想を据え置いている。

 FPG<7148>=急反発。
同社は投資家から資金を集めてリース案件を組成するオペリース投資商品を手掛けるが業績は好調に推移している。東海東京調査センターが26日、同社株のレーティングを「アウトパフォーム」継続で目標株価を1468円に引き上げており、これが好感されたかたちだ。同調査センターでは同社の16年9月期通期の業績予想について、売上高206 億円(前年比34.5%増)、当期利益88億円(同38.7%増)と前回予想から増額している。今下期の中堅・中小企業における出資金への需要は予想以上に強く、金融機関からの顧客紹介の動きも加速するとみている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想