方向感に乏しい推移、下値固めで地合い改善へ

著者:冨田康夫
投稿:2016/03/29 20:21

明日の株式相場見通し

 30日の東京株式市場は、日経平均株価の動きが一段と煮詰まり感を強めるなか、売り買いともに手控え姿勢持続で方向感に乏しい推移となりそうだ。

 実質4月新年度相場入りしていることから、3月期末の配当などの権利取りを終了し、持ち高を減らす売りも継続しそうだ。半面、外国為替市場では、円相場が1ドル=113円台後半から114円台をうかがう動きをみせており、積極的に売りにくい地合いとなりそうだ。

 市場関係者からは「きょうは、3月期末の権利落ち日に当たり、配当権利落ち分は市場推計で130円弱だった。したがって、即日埋めは叶わなかったものの、実質は前日比ほぼ100円高となり、市場参加者には底堅い印象を与えたようだ」との見方が出ていた。

 29日の東京株式市場は、朝方売りに押される展開となったが、下値では押し目買いも入って下落幅を縮小する推移となり、日経平均株価終値は前日比30円84銭安の1万7103円53銭と小幅反落した。ただ、権利落ち分を差し引くと実質的にはプラス圏で着地したことになる。

 日程面では、2月の鉱工業生産指数(速報値)、2月の自動車生産・輸出実績に注目。
海外では、米3月のADP雇用統計、ミャンマーで政権委譲(新大統領就任)の記念式典が焦点になる。

<動意株・29日>=ナノキャリア、グローバルグループ、シリコンスタジオなど

 ナノキャリア<4571>=後場一段高。
同社が国際特許共同出願していた、新規抗体の抗ヒトTissue Factorモノクローナル抗体に関して、日本の特許庁から特許査定を受けたと発表しており、成長力強化への貢献を期待した買いが入っている。同出願は、ヒトTissue Factor(TF)を標的とするモノクローナル抗体の中でもユニークな活性をもつ抗体に関するもので、国立がん研究センター新薬開発分野長の松村保広氏らのがんと血液凝固の長年の研究から見出された抗体の一つ。

 グローバルグループ<6189>=大幅高。
同社は18日に東証マザーズに新規上場したIPO銘柄。首都圏を中心に自治体から認可を受けた保育施設と学童クラブ・児童館を運営しており、「待機児童解消に絡む子育て関連株として再評価されている」(アナリスト)という。公開価格2000円を60%上回る3200円で初値をつけた後、上場初日に3590円まで買い進まれたが、その後は利益確定売りに押され軟調に推移していた。ただ、全体相場は方向感に欠け大型株が買いにくくなるなか、同社株は市場のテーマにも乗り見直されており、新高値更新も視野に入っている。

 シリコンスタジオ<3907>=後場上げ幅を拡大。
同社は午前11時45分ごろ、同社の高度な光学的表現を可能にするポストエフェクトミドルウエア「YEBIS 3」が、中国Aurogon Info&TechがWindows向けに提供するシリーズ最新作「Gujian Online」に採用されたと発表しており、これを好材料視した買いが入っている。「Gujian」シリーズは、中国・上海に本拠を置くAurogon社が手掛けるMMORPGで、同社の製品が中国市場において採用されるのは今回が初めて。これを皮切りにした中国での事業拡大への拡大が株価上昇につながっているようだ。

 ケイティケイ<3035>=一時ストップ高。
同社は28日の取引終了後、16年8月期の連結業績予想の修正を発表。売上高を従来予想の171億8800万円から171億円(前期比2.4%減)へ、営業損益を8100万円の黒字から1億2500万円の黒字(前期4000万円の赤字)へ、最終損益を1400万円の黒字から7000万円の黒字(同7800万円の赤字)へ修正。加えて期末一括配当を1円から4円(前期は無配)へ引き上げた。V字回復を目指す「ktk リバイバルプラン」を最速実行する中で営業効率を向上させた効果が表面化、原材料費の低減を中心とした製造コスト、調達コストの削減のほか、業務効率改善による経費削減なども利益を押し上げている。

 第一稀元素化学工業<4082>=急伸。
同社はジルコニウム化合剤の大手で触媒事業や燃料電池材料、ファインケミカル事業などを展開する。東海東京調査センターが28日付で同社のレーティングを「アウトパフォーム」継続(目標株価6410円)でフォローしており、これが株高を後押ししている。主力の触媒向けが堅調に推移すると想定され、ファインケミカル向けの中期的成長性も変化がないとし、現在のバリュエーションは割安と判断している。同調査センターでは同社の17年3月期営業利益について、今期予想比ほぼ2ケタ増益となる45億円を予想している。

 ニューテック<6734>=ストップ高。
同社は28日の取引終了後、16年2月期の単体業績予想の修正を発表。売上高を従来予想の24億3300万円から24億1800万円(前の期比11.1%増)へ、営業利益を1億500万円から1億1800万円(同2.1倍)へ、純利益を8200万円から1億3800万円(同3.7倍)へ修正。加えて期末一括配当を従来予想の10円に特別配当8円を加えた計18円(前の期10円)に引き上げた。経費圧縮などの効果に加えて、繰延税金資産の計上により、税金費用が減少することも利益を押し上げている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想