そのようなヒトが亡くなられてから解剖すると、
大動脈にカルシウムがびっしりとコビリついてガッチガチになっており、
手で触れるとパキパキと砕けるらしい。
生前に何が起きていたのかというと、
血中のカルシウムが減ってきて、特に背骨からカルシウムが溶け出して、
それが物理的に一番近くにある大動脈にコビリついているのだと目されている。
高齢になると腎機能が落ちてきて、活性型ビタミンDを作りにくくなり、
するとタダでさえ吸収の悪かった腸からのカルシウムが、
ますます吸収されなくなり、血中カルシウム濃度が減ってしまう。
次に、したかがないので副甲状腺ホルモンが働いて、
それまであった骨からカルシウムを溶かしだすのだという。
こうなってしまうと、細胞内のカルシウム濃度が上がってしまい、
高血圧を惹起するという。
また、膵臓の働きも落ちて、糖尿病になりやすくなるという。
今でいう、炭水化物過剰摂取による糖質があらゆる病気の大本なのではないかという勢いで、カルシウムもそうした病気の大本なのではないかと、
この著者はその当時に考えている。
★「カルシウムの脅威」
藤田拓男著 ブルーバックス 1992.10.26.第9刷
だからといって、カルシウムを過剰に摂取すると、
骨から溶け出たカルシウムと同じように、血圧などが上がる方向へいくのではないかと思う人は多いだろう。
そこで、放射性同位元素カルシウム45を使用して、研究してみると、
大動脈へ移行するカルシウム45は、骨からでたカルシウムがほとんどだと判明したという。
これを「カルシウムパラドックス」というそうだ。
著者である藤田医師の推測によると、恐らくは食物からのカルシウム吸収率がとても悪いので、骨から溶け出てくるカルシウムの方が量的に莫大で、血管などに与える影響が大きいからなのではないかと。
従って、たとえ吸収率は悪くても、口からカルシウムを積極的に摂取していると、骨から溶け出てくるカルシウムが減少し、先のような悪循環を防げるのだという。そして、もちろん骨も丈夫になっていく。
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ガンの治療や予防、コロナ対策に免疫力向上を狙ってビタミンDの活性体を、処方薬や市販カルシウム剤から積極的に摂取することは、
さきの「カルシウムパラドックス」が理解できれば、
従って、かなり有用に思われる。
これに糖質制限が加われば、ほとんど鬼に金棒なのではないか?