またぞろ、大御所主治医のY医師に呼ばれた。
齢80歳くらいかもしれない。背筋はしゃんとしている。
「なにか腫瘍でも見つかったのですか?」
問うと、こっちに来てくれないと仲介した看護師は説明できないという。
その昔、胃潰瘍で入院したときに、肺上部に謎の陰影が移り、藤沢市民病院へ紹介されたことがあった。
紹介先の病院医師は、こんなのが腫瘍だというのなら、その病院へは行かない方がイイと逆鱗していたことがある。
とどのつまりが、肺結核の残像だということだった。
だが、今回のは違うという。
見ると、片肺下部に誰が見ても明らかな黒い陰影があった。
肺炎だとすると熱発があるはずだが、それがないので、
技師とも話し合ったが、悪性の腫瘍ではないかという。
オイラの方は、うちの大御所は高齢だし、近藤誠プロトコルに従おうと以前より思っていたので、その旨をY医師へ伝えた。
Y医師も、同様なことを考えていたというので、放置プレイが決まった。
が、明くる朝、おもむろにネット検索してみると、
画像診断というのは思いのほか難しいもので、それ一発で確定診断がなされるものではないとわかった。また、打撲の場合、それに追随した内臓出血の可能性が高くなるという所見も知った。
片肺下部、それは打撲した背骨の位置からほど近い。
内出血痕の可能性があると思い、さっそく病院へ電話し伝えた。
それを訊いた大御所主治医のY医師から、またすぐに会おうという。
看護師経由の伝言だった。
もしもそれが腫瘍だったら近藤誠プロトコル、内出血痕だったらバイタルサインに異常はないし、すでに出血は止まっていると判断して放置プレイでいいのではないか、なのでわざわざ時間を捻出して会うまでもないのではないかと返答した。
なにか間違っているだろうか?