オイラの目の前に、ラベルの剥がされた小瓶に充填されている白い粉末があった。懲戒免職になる前に、こども医療センターの薬剤部に勤務していたことのあるオイラは、白い粉の扱いに慣れていたのだが、その日は緊張を隠せなかった。
「純度でも、試してみたらどう?」
金髪をしたその女親分は、白い粉末の入っている小瓶の蓋を開け、オイラに差し出した。
幸いなことに、真面目に服薬していたアレルギー薬のおかげで、オイラの嗅覚は正常を保っていた。
「タダでいいのかな?」オイラは訪ねた。もちろん、と女親分は言った。
人差し指と親指で、その白い粉末をつまんだ。
さらさらしていて、とても粒子の細かい粉末だとわかった。
そっと、白い粉末をオイラの舌に載せてみた。
「う、美味い」オイラは絶句した。
強烈な旨味はあるのに、塩気は全然ない。
この塩分のないところがイイ。どんな料理に入れても通用する旨味だ。
普通に売っているダシ顆粒より、塩分がないだけ応用力が半端ない。
「実はわたし、ほとんどの料理にその白い粉を使っているの」と、金髪の女親分は白状するのだった。
職場の対面にある「味の十八番」の主が、オイラに味の素製の「プロの料理人の間にだけ流通している白い粉」を紹介されたことがある。種類がとても多く、中には茶色い色をした粉もあった。内密なはなし、プロは実店舗でさまざまに利用しているのだという。
ひょっとして、あのインドカレーの店でも使っているのだろうか?
こんな粉を使ったら、どんな料理だって美味くなるに決まっている。
考えてみて欲しい。この純白の粉だけ舐めても美味いって、どーいうことなのか。
PS:TV東京でずっと前に放映された亀田製菓の「ハッピーターン」を思い出した。実は「魔法の白い粉をまぶしているの」と放映されていた。この粉のことなのかもしれないと、マジで思った。