2005年に発行されており、第30号までが手元にある。
ちょうどその頃、NHKで「義経伝説」を放送していたので、
当時、この週刊誌はけっこう売れていたと思われる。
その中で、そういえば疑問に思ったことがあった。
「どうして、平清盛は常磐御前とその息子たちを助けたのか」
常磐御前がとびっきりの美人だったから。
その息子の中でも牛若が、平家側で他界した子供にうり二つだったから。
このような二つの理由が、「週間義経伝説紀行」では述べられていた。
一応、納得したものの、釈然としない何かがわだかまっていた。
なにかが、足りないような気がする。
「週間義経伝説紀行」で描かれている常磐御前は、
彼女が三人の子供を引き連れて、
六波羅にいる平清盛の前へ出頭する場面からだった。
そういえば、それまでの経緯は一切省かれていた。
★「京都ぎらい 官能編」
井上章一著 朝日新書 2017.12.30.第1刷
この書籍の終盤に、
夫である源義朝や、常磐御前に縁のある清水寺周辺の
関係が書かれており、
それによると常磐御前が清盛に殺されなかった大きな理由のひとつに、
義朝へ嫁ぐ直前に世話になっていた藤原一族の権威があったのだという。
清盛は、藤原一族に大きな借りがあり、考慮せざるを得なかったというのだ。
この周辺の書き方が、
たいへん巧みに、しかも意外性に充ち満ちて描かれており、感心した。
また、この書籍の他の部分の構成も、
実に多面的で、興味深い記述にあふれている。
おまけに、著者の井上は実は養老孟司を意識しているようだ。
「どーして、養老の書籍はあんなに売れるんだろう?」と。
恐らく、養老の書籍を徹底的に読み込んだのであろうか、
養老孟司の文体に似ている部分が、多々ある。
特に、冗談を記述するような部分に。
いろいろな意味でオモロイ書籍、著者なのであった。
養老孟司はひょっとすると、そろそろ書くネタが尽きるかもしれない。
井上章一には、チャンスかもしれない。
過去に書いた書籍も、売れる可能性が出てきた。