「わたくすといふ存在に、さふいふ性質があるのなら、一死万死(いっすばんす)に値ひすますーっ。」と報道陣に取り囲まれて、
竹下登総理大臣は、声を放って男泣きに泣くのでした。
その泣きようは、テレビで見ていても、尋常ではなかったなぁ。
顔が崩れて行くーっ!このひと、ほーんと、頭おかしくなったんぢゃなひの。
待てよ!これに類した絵画を見たことがある。
それは、パブロ・ピカソの名画「泣く女」。
リクルート事件のさい、国もとの秘書に、首吊り自殺されたときの出来事。
さらに皇民党事件。竹下さんの地元の右翼が上京して、街宣車で「竹下さんにまかせりゃ、大丈夫」とかなんとか。いはゆる「褒(ほ)め殺し」。佐川急便事件だったらふか。
あっさりと総裁選を降りてしまふ竹下さん。
ここまできて、なんかヘンだぞと思ったジャーナリストがいた。
そこで島根県に取材に行った。
やっぱり出てきた竹下さんの、ある過去。
陸軍に召集された竹下さんは、鳥取砂丘の駐屯地で、少尉をしていた。そこに、ある夜、新妻が訪ねてきた。
そして、涙ながらに、打ち分けるには、・・・・・・義父に犯された。
しかし、竹下青年は、「お前にスキがあったからだ」と妻を追い返してしまった。
次の日の朝、駐屯地の隣の松林で、妻は、首をつって、死んでいた。
竹下青年は、陸軍特攻隊に志願して、上陸してくる米軍と刺し違えて死なふと猛訓練にあけくれたが、その日は、つひに来なかった。
ポツダム中尉として、故郷の町に帰ってきた竹下さんを見て、周りの人間は、みな驚いた。性格一変。あの帝国軍人の面影は、まるでなひ。いつでも、だれにでもニコニコと柔和に笑ふ。
そして戦後が始まった。
神無月 ひのとう日 ほんまそうかい記