最初の数行だけ読んで没にされるという話を聞いたことがある。
小説の下読みも、人件費と時間がかかるので、
そういうものかもしれないとも思う。
今回発見した書籍の著者は、
下読み歴10,000件、
しかもけっして放らずに、全部に目を通してきたという強者。
そんな彼が、初心者のために指南書を書いた。
一読してみて、たとえばほとんどの初心者がやらかしてしまうという
「視点の揺らぎ」問題について、
彼ほどシンプルかつ的確なアドバイス例をみたことがない。
ただしこれには例外があって、
夏目漱石の作品には、「視点の揺らぎ」があるという。
また、花村萬月のように、
「視点の揺らぎなんて、ちっちぇーこと言ってんじゃねー。
小説は気合いだっ!」
みたいな、星野仙一のようなことをいう作家も存在する。
でも、新人の時は、いちおうルールに則って書いた方が無難に思われる。
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他には、たとえば
「400字詰め原稿用紙に換算して400~600枚」
という投稿規定をよく目にする。
彼によれば、
見やすいように適宜レイアウトを変えてもイイという。
どーも、写「新宿鮫」を400詰めで書くと、
いや、文庫本の文字数と行数通りに書いて
印刷してみると、すっかすっかで枚数がかさむので、
変だと思っていた。
★「懸賞小説神髄」
齋藤とみたか著 洋泉社 2012.3.12.初版
この書籍には、いろいろなオモロイ仕掛けも施してある。
下読みプロによる覆面座談会とか、
著名作家のエピソードも満載だ。
「もう先生に残された道は、官能小説か歴史小説しかありません」
という最後通牒を出版社から宣告されていたという、
謙三親分と仲良しな、佐伯泰英。
19●●年生まれだということが、
オイラにバレてしまった桜庭一樹。
(ププッ、いや~、もっとずっと若い人かと思ってた・・・・・)
三浦しをんのエピソードも載っていたりする。
けっこうオモロイ書籍なのであった。