■招待客1人あたり費用は10年で3割増
リクルートマーケティングパートナーズ(東京・中央)の結婚情報誌「ゼクシィ」が実施した「結婚トレンド調査2015」によると、挙式・披露宴の総額は全国平均で352.7万円(税込み)だった。前の年の調査に比べ19万円増えた。
日本に限ったことではありませんが、1980年代以降、恋愛、結婚、出産、育児、教育は全て商売の対象となり、ビジネスサイクルに組み込まれてしまいました。それらのビジネスは全て、メディアを通して人々の自己愛と自己承認欲求を刺激することで、彼らから多額のお金を引き出すことに成功しています。「十分」な恋愛、結婚、出産、育児、教育は賞賛し、「不十分」な恋愛、結婚、出産、育児、教育を笑い者にすることで、顧客に「買わなきゃ」という強迫観念を植え付ける…こういうやり方は、ビジネスモデルとしては非常に強力です。
でもその結果何が起こったか。多くの人が恋愛を避けるようになりました。結婚もしなくなり、結果出産しなくなってしまいました。自己愛と自己承認欲求を満たすだけの財力がある人はいいでしょう。また、そういったつまらぬものとは無縁の健全な精神を持ってる人たちも関係ありません。でも、世の中には自己愛も自己承認欲求も自己顕示欲も強いにもかかわらず、それを満たすだけの十分な資金を投下できない人たちがたくさんいます。そういう人たちは自尊心を保つため、恋愛や結婚といったものから遠ざかるという選択をするようになりました。そう、いつしか彼らの中で、結婚しないことで失う自尊心よりも、「不十分」な恋愛、結婚、子育てをしてしまうことで失う自尊心の方が大きいと考えてしまうようになったのです。
では「十分」な恋愛、結婚、子育てをできる人たちとはどんな人たちでしょう。「お金のあるひと」ということになりますが、それは多くの場合ある程度キャリアを積んだひと、つまり歳を重ねたひとです。結果として結婚式を挙げる人たちの費用と年齢が高騰し、晩婚化が進むことになってしまい、更には少子化も進んでしまったんじゃないかな、というのが私の考えです。
だから待機児童を解消するとか、教育を無償化するとか、育休を増やすとか、そういったことでは少子化対策としてのあまり効果が無いんじゃないかなと。それは実際に子育てする人してる人にとって「子育てしやすい社会」になるという意味では必要かもしれませんが、そもそも恋愛や結婚を避ける人たちの自尊心を守ることには何も役に立たないから、彼らにとっては何のモチベーションにもなりません。たとえば、フランスのPACS(民事連帯契約)が少子化対策として役立ったのは、恋愛や結婚に対する価値観を一変し(結婚と子育てを切り離し)、過去の結婚制度を時代遅れのものにしてしまったことが大きいのではないでしょうか(いい方法かどうかは別として…)。日本でも「恋愛(結婚、子育て)にお金使う」という行為を時代遅れのものにする様な家族制度になれば、少子化は解消されるかもしれません(「家族のあるべき姿」とのバランスは難しいですが)。
…かくいう、そんな私もまだ未婚なわけですが…もし結婚するとしたら、最低でも「自分の結婚が他人の商売の食い物にされるのだけは絶対イヤ」という価値観を共有できる人がいいです。