北鎌倉が出てきちゃうんじゃ、惚れちゃうだろっ

元祖SHINSHINさん
元祖SHINSHINさん

この小説の主人公は、中学生の女の子なのだけれど。
背景となる場所が、大船~北鎌倉~鎌倉となっていて、鶴岡八幡宮も登場する。
オイラは高校生のころ、北鎌倉が最寄り駅だったので、
こういう作品を読むと惹きつけられてしまう。

 

なので、この作品を読んでいくうちに、
オイラの高校時代の体験が見事に蘇ってきて、
自分の魂が若返っているのに気がついた。

 

★「荒野」
  桜庭一樹著 文春文庫 全三巻

 

とても爽やかな作品で、川上弘美の作風を思わせる雰囲気がある。
この前に書かれた「私の男」とは、まったく別物だ。

「製鉄少女」に及んでは、これまた驚かされたエンタメになっていたし、
それが「赤朽葉家の伝説」のスピンアウト作品と解説で知って、またまた驚く。
一番最初に読んでみたのが「ブルースカイ」だったのだが、
どれもこれも、作風がまったく違っていて、
桜庭一樹の小説家としての技量に、驚かせられる。
「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」や「道徳という名の少年」も、すっごくイイ。

 

文体はおのおの、かなりシンプルなのだが、
作品の雰囲気やストーリー構成の妙には、まったく感心してしまう。

一樹は小説を書くときに、映画監督であり自身も役者のように書いている。
小説の進行は画像ベースだし、役者の声にもそうした思いが表れている。
そして、文章を読んだ読者の頭の中に、
どんな画像が浮かぶのか、それを完全に知り尽くしている。
そういうことを、実にシンプルな文章で表現する。

 

その上、ユーモア精神も盛んなので、
例えば、「夕日フェチ」な辻原登と知り合いになるや否や、
その作品が夕日まみれになっていたりする。
辻原登がベッドに縛り付けられていて、
そこに桜庭一樹という女王様が、
「夕日」という鞭を持って辻原をいたぶっているような。

 

こういう風に、各作品に振り回されて魅了されていくうちに思う。
それは自分がそれら作品に引き寄せられているというよりも、
それを書いている桜庭一樹自身に惚れてしまったのではないか?
正直言って、そういう自覚すら芽生えてくる。

 

表題に挙げた「荒野」は、
一見ラノベ風の軽い作品に思えるかも知れない。
けれども、まっとうな読者ならば、
その前に書かれた作品を知っているはずだ。
桜庭一樹の凄さを、すでに十分わかっているはずだ。

 

なんで女のに、桜庭一樹という男風のペンネームにしたのか。
ずばり、桜庭一樹はバイセクシャルの、男寄りだからだ。
そう、オイラは睨んでいる。

 

自身が女だろうが男だろうが、
バイセクシャルというものに理解を示している芸術関係者には、
オイラの知る限りでは、こんな人々がいる。
大島渚、塩野七生、佐藤亜紀、ヤマザキマリなど。
(かな~り女寄りには、ロラン・バルト/村上春樹は男寄りの男だな、ありゃ)
オイラの学生時代を思い出しても、そういう人々は沢山いた。

 

実は太古から日本は、バイセクシャル王国だった。世界もそうだ。
寿命の短かった太古の世界で生きるには、
己の本性に素直に従うしかなかったのだろう。
たまたま男と女の組み合わせの時に、こどもができた。
こどもができるかも知れないから、戸籍ができた。

 

北鎌倉が舞台になっている「荒野」を読んでいて、
オイラはそういう過去をまざまざと思い出して、新鮮だった。
オイラはこの「荒野」で、完全に桜庭一樹に落とされてしまった。

これがキャバクラ他(ほかってどこ?)などなどという環境だったならば、
こいつのために、いくら散財するのか、わかったもんじゃない。

桜庭一樹が、小説家でよかった。
新宿に住んでいるという桜庭一樹が、
SMクラブの女王様でなくって、ホントウによかった。
(これって逆説的に、なんでSMクラブにいないんだオマエって、
 言っているのに等しいのだけれども)

 

PS1:さすが読書家な桜庭一樹、
   「荒野」にはちょっとだけ、ロラン・バルトが入ってる。

 

PS2:というわけで、まだ読んでいない桜庭一樹作品を、
    これからせっせと集めるオイラなのであった。

    ちょうど今は、「伏」を読んでいる。

 

 

 

 

2件のコメントがあります
1~2件 / 全2件

あーそれ、オイラもTVで知りましたよ。

 

アニメには詳しくないのですが、

アニメのシナリオを書いている人たちも、

凄いと思っています。

 

そういう脚本力に巧みなのが、

まったくもって、桜庭一樹なのだと唸らされます。

 

信じられないほどの小説を読み込んできた賜物なのでしょう。

 

うらやましいですね、小説やドラマに出てくるというのは。

マンガのスラムダンクのオープニングに出てくる踏み切りもそのままあるそうですね。
垂涎の的らしいです。
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