先日ロイターの報道にもありましたが
日銀が12月に追加緩和を行う可能性は極めて小さいと考えています。
理由は、黒田総裁の
「賃金の上昇率と、物価の上昇率は接近しているのが望ましい」という発言にあります。
では実態はどうかと云えば、今年の賃金上率が前年比+0.5%であるのに対し
生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数は、前年比+1.2%で0.7%の開きがあります。
勿論、原油価格の下落を考慮すれば、実質的な開きはもう少し小さくなる筈ですが
それでも賃金の上昇率が物価上昇率に追い付いていない現状に変わりはありません。
因みに日銀の発表によると
指定品目の物価変動は、24ヶ月連続して上昇が下落を上回っており(ざっくり上昇6割、下落4割)
例えば、産業機械や電子計算機関連のリース料。TVや新聞の広告料。
ホテル宿泊サービス料金などの上昇が目立つ一方で
外航貨物輸送と、国内航空旅客輸送料金は大幅に下落しています。
また日銀は2016年前半にインフレ率2%を目標に掲げていますが
現状のインフレ率は目標には程遠いものの、他の先進国に比べて平均的な水準にあることから
賃金の上昇率が物価上昇率より大幅に遅れる状況が続く限り
追加緩和には消極的にならざるを得ないと思うのです。
では来年はどうかと云えば、原油価格が大幅に下落したのは2014年末からなので
2016年度の原油価格対前年比は、逆に上昇する可能性があります。
そうなれば、放って置いても物価の上昇率は高まることになり
急いで追加緩和を行う根拠が益々希薄になるのではないでしょうか。
(参考)WTI原油価格の推移(単位:USドル/1バレル)
(2014年) 2015年 (2015年10月までの原油価格対前年比は、およそ-50%)
1月 (95.00)47.60 2月(100.70)50.72 3月(100.57)47.78
4月(102.18)54.20 5月(102.10)59.26 6月(105.24)59.10
7月(102.99)51.16 8月 (96.38)42.86 9月 (93.55)45.48
10月(84.40)46.20 11月(75.70) ? 12月 (59.10) ?
以上素人の勝手な予想ですが、12月になれば結果は自ずと分ります。
しかし株価だけは相変わらず堅調で、海外勢の中には
日銀が12月追加緩和に踏み切ることを想定している機関投資家も居る様です。
但し重要なことは、追加緩和があっても無くても
各々のケースで相場がどう動くかを予測し、柔軟に対応出来る準備だけはして置くべきでしょう。
つまり金融政策決定会合直前に一旦CP(キャッシュポジション)を高くするとか
保有銘柄が多い人はヘッジをするなど、自分流の資産保護対策が必要だと思います。
さらに12月の米国利上げは、既に株価に織り込まれたと言われていますが
私は天邪鬼なので、そんな予想を鵜呑みにしてはおらず、何が起こるか分らないと考えています。
結局、投資家の本音は「儲けたいし、損もしたくない」というのが普通です。
しかし現実はそう甘くはなく、「儲けたい」と「損をしたくない」という気持ちを切り離し
その時々の相場環境によって、どちらか一方の気持ちを優先させるべきだと思っています。
因みに、個人的には、大きなイベントを控えているタイミングでは
「損をしたくない」気持ちを優先させ、CPを上げたりヘッジを心掛ける様にしています。