2015/09/17 00:0 (ブルームバーグ)
米格付け会社のS&Pは16日、日本の格付けを1段階引き下げると発表した。
S&Pは、日本経済がソブリンの信用力を支える効果が過去3、4年低下し続けていると指摘。
当初は奏効する兆しがみられたアベノミクスでは
「経済が今後2、3年で信用力を好転させるまで改善する可能性は低い」と判断している。
発表によると、長期ソブリン格付けを「AA-」から「A+」(投資適格の第5位)に
短期格付けを「A-1+」から「A-1」に格下げした。格付け見通しは「安定的」としている。
野村証券の魚本敏宏チーフクレジットストラテジストは、今回の格下げについて「アベノミクスの積極的な活用による経済効果に比較的厳しい評価をつけたということは、正直に受け止める。
海外の投資家がアベノミクスに対する評価を少し厳しく見るきっかけになる可能性がある」と述べた。
魚本氏はまた、S&Pの格下げについてデフレ脱却を目指す日銀の異次元金融緩和が
「当初狙っていたほどの効果が出ていないという評価が出ている」としたほか
円安進行に伴いドルベースでみた所得の下落という側面もあるとの見方を示した。
日銀は13年4月から実施している異次元金融緩和でコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価)で2%の上昇を目指しているが、直近の7月は横ばいにとどまっており
黒田東彦総裁は達成時期を「16年度前半ごろ」に後退させている。
また、4-6月のGDP成長率(改定値)は前期比年率1.2%のマイナス成長に陥っている。
「財政は極めてぜい弱」
S&Pは発表文で、「日本の財政状況は極めてぜい弱」と指摘、消費増税効果や税収増を勘案しても
一般政府純債務残高の対GDP比は18年度には135%に上昇するとの見方を示した。
また、異次元緩和を続ける日銀が出口政策に踏み切れば金利が上昇し
財政をさらに圧迫するとも指摘した。
野村証券の桑原真樹シニアエコノミストは、政府の財政再建計画について
「目標はあるが、具体的にどうやっていくのか見えにくい。
歳出カットや増税よりも経済成長に賭けているような印象があったので信頼性に欠ける」と話した。
S&Pに先立ち、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは昨年12月に日本を「Aa3」から
「A1」に、フィッチも今年4月に「A+」から「A」にそれぞれ格下げしている。