元祖SHINSHINさんのブログ
石川達三と村上龍の共通点
候補作品九編を読み通して、私は損をしたような気がした。
心に残るもの、心を打たれるもの、全く何も無い。
こんな小説ばかり書いていて、何が新人だ・・・・・・と思った。
こんな新人なら一人もいなくてもいい。
小説なんて無くっても構わない、
といいたい程の怒りを感じた。
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★「芥川賞の謎を解く ~全選評完全読破~」
鵜飼哲夫著 文春新書 830円+税 2015.6.20.第1刷 P.94より抜粋
抜粋した選評を、かつて石川達三が書いたという。
かなり辛辣な表現だ。
しかし、ここ数年の芥川選評を読んで感じていたのだが、
この言い分は、村上龍のそれと同様のものだ。
抜粋はこの後も続いていて、
現代には取り上げるべき問題点が多いにもかかわらず、
この程度の主題しか見つけられないのかと、
作家たちを叱責する文章となっている。
これに反駁したのは、吉行淳之介ら、純粋文学を推す作家たちであったという。
「第3章 純粋文学か、社会派か」とくくって書かれたこの章の内容は、
なかなか読み応えがある。
これから小説を書いてみたいという初心者には、
自分が何を書こうとしてるのか、自分の立ち位置を探る道標となるだろう。
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「第2章 戦争と選評」では、
「糞尿譚」火野葦平のところで、思うところがあった。
火野葦平は自身が受賞して審査委員になってから、
芥川賞を受賞した作家に対して、
「芥川賞に殺されないようにしてください」
と、コメントしていたという。
そんな火野葦平が、自殺したということを初めて知って、驚いている。
彼は、芥川賞に殺されたのだろうか?
どうして芥川賞を受賞した作家には、自殺する人が多いのだろう?
それを想像しているうちに、怖くなってきた。
同時に、直木賞作家に比べて、
なぜか芥川賞作家は、作家として生き残る確率も低いような感がある。
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沢木耕太郎「深夜特急」を読んだり、その他書籍にも眼が移ったりしながらなので、
第4章以降は、これから読む。
かなり昔に読んだときには全く気づかなかったけれど、
「深夜特急」には「会話」が少ない。
石川達三は、きっと大いに褒めるだろう。
でも村上春樹は、それをやってはいけない。
会話に魅力のある作家が、そんなことしちゃ絶対にいけない。
かわいい女の子の会話は、特に。
序盤あんなにつまらない「キャッチャー・イン・ザ・ライ」だって、
初っぱなからオモロイ「フラニーとズーイ」だって、
村上春樹流の会話が、翻訳で表されなかったら、
実につまらないものになっただろう。
それから自作小説の中では、笠原メイが最高だ。
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