正直、帯に書いてあるセールストークほどの感動は受けなかった。
けれども、いわゆる「静かな小説」と言われるであろう文体と、
ミステリー的な話の持って行き方(ストーリーテリング)は、参考になる。
それに、こういう雰囲気の小説を好む読者というのも、いるに違いない。
「静かな小説」というのは、
まずヒットしないというのがもはや法則になっている感がある。
そんなことを、
「サリンジャーと過ごした日々」を書いたジョアンナ・ラコフが作中で述べている。
「Novel 11, Book 18」には、会話がほとんどない。
そういう文体も、「静かな作品」には共通しているのかも知れない。
江國香織の訳した「パールストリートのクレイジーな女たち」も、
「静かな作品」だ。
これら三作を比較すれば、
ミステリー的なストーリーテリングという要素が最も高いのは、
「Novel 11, Book 18」だろうとは言える。
言えるけれども、やはりこれは「静かな作品」なのであって、
「新宿鮫」のような訳にはいかない。
★「Novel 11, Book 18」
ダーグ・ソールスター著 村上春樹訳 中央公論新社 1,700円+税
以下は、オイラの妄想だけど。
作中、「父と子の関係」が話題になる部分がある。
オイラにとってこれは、大いなるセレンディピティ。
この文章の意味がわかるのは、恐らく世界でたった一人。
そんな寂しいこと、言ってくれるなよ。
「ドライブ・マイ・カー」を読んだときのような気持ちになった。
けれどもこれは、ダーグ・ソールスターが書いたことだ。
なのでこれは、世にも不思議なセレンディピティなのだった。
PS1:「素人のブログなんて読まない。たった一人を除いて」
そういうことを、あっち向いたまんま書くんだねー。
まったく、ひとたらしー。
PS2:癪だから、いろいろ知らんぷりしてようと思ったけれど。
セカンド守ってたんだー、そーなんだー。