高校時代に習った函数と変数をご存知でしょう。Y=ƒ(X)という数式で表わされ、Yという値は、Xという変数によって決まるというあれです。よく分からないまま卒業し、大学から会社に入って、またまた遭遇。過去のデータを時系列に並べ、それを数値化して、未来の需要を予測するためです。
始めは、Y=AX+Bで表わされる直線を使って、その線の延長線上に2年後、3年後の需要を予測します。過去のデータでは、時間と売り上げについての相関係数も高くマッチするのですが、その線を未来に引き伸ばすと当たらなくなります。直線で駄目なら二次曲線、放物線と高度な数学を用いたのですが……。
大抵「はずれ!」しまいには、計画は初めから変動幅を織り込んで作ることになりました。以来、時間を変数とした予測値は、信用しなくなりましたが、ひとつだけ、分かった事実があります。それは、時間を変数とする限り、未来を予測できないということです。
言い換えれば、明日のことは誰にもわからないのです。株価を例に取ればもっと理解できます。Yを株価、変数(X)を時間とすると、過去については100%一致します。ところが、Xの値に明日の日付を入れても、答えは出てきません。
それでも、人間はなんとか明日の株価を当てようとします。なぜなら、株式市場は明日の株価を当てるゲームだからです。
テレビ、新聞等の解説では、一目均衡表、ボリンジャーバンド、RSI、MACDなど、チャートをベースにした株価の予測が多いようです。なにやら説得力がありそうですが……。
最近では前日のシカゴ日経先物とか、為替相場、中国の株価動向などのほうが、短期的にはよく当たります。おかげでチャート分析は、すっかり影が薄くなってしまいました。
株価を変動させる要因を分析して、これを変数して将来の株価を予測するファンダメンタル分析があります。時間以外に、先物相場、為替、内外経済、政治環境、さまざまなリスク……、を変数にします。数式は、Y=ƒ(A、B、……X)となるのでしょうか。
「株価は経済を映す鏡」といわれるように、GDP、雇用情勢、金利といった経済状況を反映する指標から、将来の株価を予測する方法がとられています。これとても、発表される時期のずれや、実体経済に与える影響力などから、株価予測としてどの程度の信頼性が置けるのか、いまだに定まっていないようです。変数が多すぎて、答えを導き出さないまま、模索が続いています。
昔読んだ経済学に、「物価は短期には需給で決まり、長期にはコストで決まる」というのがありました。今の経済学では問題にされないかもしれませんが、株価の形成要因をうまく表現しているように思えます。
株価は需給で決まるといっても、株価が上昇すると見る人が多ければ需要が増加し、反対に下がると見れば供給が増えてきます。需給は単なる結果で、その要因となる将来の株価を決める要因のほうが、大切なのかもしれません。
とはいっても、最近の株価の動きを見ていると、株価は需給で決まると断じても問題ないような結果になっています。少なくとも今年に関しては、良好な需給に支えられ、下値は硬い相場といえます。
皆さんは朝のテレビ番組で、株の専門家がその日の株価の見通しを発表しているのを参考にされておられると思います。いろいろ理屈を並べていますが、「あたるも八卦」と思いながらも、やはり気になります。
その際、その人の経歴と所属する会社に注目しています。情報会社よりも証券会社の人のほうがよく当たるのは、彼らが、需給についての情報をわれわれ以上に知っているからにほかなりません。