(略)
マンハッタン在住のアナリストであるジェイムズ・ミラーは、
こうした負担は彼らにとって「痛み分け」とは言い難いとし、
別の懸念を指摘する。
「保険会社や製薬会社、医療機器メーカーにはちゃんと抜け道がありますよ。
オバマケアは商品の値段についてはまったく規制をつけていない。
つまり彼らは増税された分だけ保険料や薬価に上乗せし、
負担を消費者に押しつけることができるのです。
月々の保険料なら、ゆくゆく一家族で年間300ドルから400ドルの値上がりとして
現れてくるでしょう。
大口でまとめ買いできない中小企業のオーナーはこの打撃をまともに食らいますから、
自営業者の87パーセントが確実に苦しむことになる。
2012年から23.8%上がる固定資産税も大きいですよ。
前年より59%の増税ですから」
CNNの試算によると、現在一般的な四人家族の収入が年間2%上昇していくなかで、
医療費支出は全体の35%を占めている。
今後物価の上昇と賃金の低下によって、この数字は2024年には50%に上がり、
2030年にはなんと63%を超えるという。
(略)
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★「沈みゆく大国アメリカ」
堤未果著 集英社新書 720円+税 P.103~104より改変・抜粋
オバマケアが、米国民の多くが期待していたとおりには、なっていないという。
失望が広がっているという。
まずすぐにわかる現象は、全員を保険に入れるために、当然ながら保険料が上がるということ。
そのために、特に中小企業は人件費削減に動くため、
正規社員→非正規社員→パートの流れがとまらない、または破綻して、
業種にかかわりなく大企業の寡占が進む。
オバマケアが、ふたを開けてみると医療機関に赤字をもたらすという現状があって、
オバマケアに入っても、その面倒を見る医療機関や医師が、ほとんどゼロに近い。
「貧困大国アメリカ」にもあったように、
自殺や廃業をする医師が跡を絶たず、惨憺たる状況だという。
その他、さまざまなことが複雑に絡み合いながら、
結局、多くの米国民は損をする方向に、転がり落ちているのだという。
製薬会社は、増税により損失を被るが、
かわりに例えば、インターフェロン不要な肝炎の新薬に、
1錠=1000ドルという価格を設定したりするのだという。
米国には、日本のように薬価を決める仕組みがなく、そーなるのだという。
TPPが大通しになった暁には、日本の薬価基準改定制度は真っ先に破壊されるのだろう。
他のあらゆる制度も、米国コピーとなってしまうのだろう。
PS:今回の堤未果の書籍は、途中陥っていた売らんかなのネットコピーではなく、
「貧困大国アメリカ」のように、初心に戻った取材をしっかりとした形跡がみられて、
好感が持てる。
また、米国民の現状をイイ方向へ変えようという存在にも言及しており、
次作では、そのことについて書くという予告もあった。