「株は貯金です」と聞くと、たいていの人は、「株はリスク資産だから貯金ではない」といいます。
日本では、貯金は銀行にするものと決まっているようです。でも、貯金を辞書で調べると、「お金を貯めること」とあって、別に郵便局や銀行に預けるとは書いてありません。お金は貯金箱や、タンスにしまっておくことから始まったようですが、いまや銀行に預けるのが一般的で、「タンス預金」は特別に扱われるようになってしまいました。
確かに株は、株価の変動により資産価値が変わり、現金化するのにも時間が掛かり、必要なときにすぐ使うわけには行きません。目減りすることなく、安心していつでも必要なとき引き出せるのが、銀行貯金のようです。
とはいっても、生活に必要な資金は、せいぜい百万円もあれば十分で、「貯金」の多くは、収入がなくなった際の「たくわえ」として、銀行に預けられているのではないでしょうか。となると、貯金でも老後に備える資金は、いつでも換金できる便利性よりも、長期にわたって資産が増える貯金を考える必要があります。
波乗り投資法では、ふやす世代として40歳から退職までの65歳代までに、1,000万円を5,000万円に増やして、株式からの配当で豊かに暮らすことを提案しています。1,000万円を貯めるだけならば、銀行や郵便局にコツコツと貯金すれば、できないことはないでしょう。
でも、1,000万円を5,000万円に増やすには、年率9%で増やす金融商品であればできますが、銀行に貯金していたのでは、絶対といってもいいほど不可能です。ここはやはり、リスクがあっても、増やすことが可能な金融商品を見つけて、実行しなくてはなりません。
長期運用を目的とした金融商品には、いろいろありますが、代表的な定期預金、国債、社債、保険、株式を比較しても、1,000万円を5,000万円に増やせるのは、株式(株式投信を含む)以外にはありません。
「ふやす」手段としての貯金は、株しかないといってもいいのですが、株が貯金だといっても信じてくれません。株式投資がそんなにリスクがあるのでしょうか。
アベノミクスにより、デフレからインフレに移行したとはいえ、株価は、バブルのときの4割程度で、バブルのときに買った人の多くは、まだ買値より大幅に下落した水準にあります。以後四半世紀にわたって、デフレで株価は上下動を繰り返しながら、右肩下がりの波動が続いたのです。
これでは、いくらいい株を長期に持っていても、買値より高くなっているとは限りません。デフレ経済の下では、株で預金するより、利息がほとんどつかない銀行預金のほうがよかったのです。政府日銀が、いくらインフレにするといっても、多くの人はまだ半信半疑の状態で、株式に対する不信はまだまだぬぐいされたとも思いません。
でもこれは、日本だけのもので、欧米の先進国では「利殖は株式」でというのが一般的です。大戦以後、先進国の多くは超インフレの経験はあっても、日本ほど長い間のデフレに陥った国はなく、株は相場の変動はあっても長期に持てばいずれは回復し、長期にわたって右肩下がりになることはありません。
そのため、金融資産に占める株式と投資信託の比率は、日本の倍以上になっています。もしデフレになって、株式が長期にわたって下落するような事態になれば、国を挙げて大騒ぎになります。そのためどこの国もインフレを維持するのに躍起になっています。
日本は今その岐路にありますが、日銀は無利子に近いような国債を無制限に買い取り、政府はNISAの導入や、年金の運用に株式の比率を引き上げて、国を挙げてインフレ対策に取り組んでいます。インフレ下では、相場の波を読み、いい株をいい時期に購入して長期に所有すれば、老後が豊かに送れます。
このことは、「金融資産のほとんどを、ファンドに移し、波を読み、いい銘柄を安いときに買って、長期に保有することで、退職後の人生を配当金で豊かに暮らしている」筆者が実証しています。