10月16日のテレビ東京「モーニングサテライト」で、60万円を20億円にした32歳の男性の話を紹介していました。
19歳で専門学校を中退し、ニート生活を続けていましたが、23歳からバイトでためた60万円で株を購入し、10年間に3,000倍までに増やしたそうです。投資の基本は、あまり着目されていない中小型株を、決算短信で詳細に分析し、企業の成長性に着目して、大量に買うことでした。
企業のファンダメンタルを、決算短信で分析し、大金を動かす点では、私の「波乗り投資法」と変わりませんが、違う点もいくつかあります。
第一に、期間ですが、「波乗り投資法」では、20年間に5倍。1,000万円を5,000万円とする目標ですが、彼の場合は、10年間に3,000倍。60万円を20億円にしたということです。目標をたてたというよりは、結果がそうなったようです。
第二に、世代ですが、「波乗り投資法」では、45~65歳を対象としていますが、彼の場合には、20歳代です。
第三に、投資の目標が、「波乗り投資法」では配当狙いですが、彼の場合は値幅取りです。
第四に、企業の分析方法でも、「波乗り投資法」では、安定的に配当がえられる点に重点をおいていますが、彼の場合は企業の成長性を重視して銘柄を選んでいるようです。
多くの点で違いが目立ちますが、最大の要因は出発点の年齢と投資資金と考えています。
彼の場合、23歳で60万円の資金ですから、リスクは最大に取れる条件です。それこそ「なくなってもともと」とばかり、値幅の取れる小型株に、全資金を預けたものと思われます。同じ20歳代でも資金が1,000万円であれば、もう少し違った方法となり、このような結果にはならなかったのではないでしょうか。
投資環境は過去10年間、基本的にデフレが続き政治も経済も不安定で、株価も最近の2年間を除けば、決して恵まれた環境ではなかったはずです。その中で、これだけの成果をあげるには、おそらく限られた成長分野への徹底的な調査活動を行ったに違いありません。最近、再生医療のベンチャー企業に投資しているところを見ると、この分野の知識は相当なもののようです。
ただこのような例は、再現性のないのも事実です。最大の問題点は、60万円を20億にする過程で、銘柄を乗り換えていたときの行動です。乗換えが1回でも失敗すれば、そこでおしまいです。
バイバイゲームというテレビ番組がありました。質問に正解すれば賞金が倍になりますが、失敗するとそれまでの賞金がゼロになります。勝ち残るためには、知識と意思が必要で、たいていの人は途中で降りてしまいます。ひとつの大きな成功例には、それを支える99人がいることを忘れてはなりません。
とはいっても、この方の成功例は、時間を武器にしないで、値幅取りで資産を大きく伸ばすことが、夢でないことを証明しました。手法が、ファンダメンタル重視の正攻法で、企業の業績向上の配分からの収益で、資産形成を成し遂げたという点で、「波乗り投資法」にも通じるところがあります。
さて、今週は冴えない相場となり、9月につけた高値から1ヶ月もたたない間に、1,800円も下落してしまいました。株式市場から撤退された方もあったように見受けられます。
10月は企業決算月にあたり、投資家としては決算内容を確認するため、動きにくい相場になります。とくに今年は、消費税の値上げによる消費の冷え込み、円安による企業業績の向上、大型IPOとアメリカの金融引き締めによる需給、といったもろもろの要因が重なり、先行きに対する不透明感が今まで以上に増しています。
政治の世界でも、消費税増税のタイムリミットが刻々と迫っている中で、内閣改造が裏目に出て、安倍内閣の支持率低下を招いています。消費税増税ができなければ、支持率の更なる低下は避けられません。今回の外国人売りも、それを見越した売り仕掛けとも見て取れます。
ただ、株価を決めるのは企業業績です。投資環境が読みにくくなればなるほど、業績しだいで株価が大きく振れることも予想されます。発表される決算短信を先読みして、株価の変動に備えることが、例年以上に必要となります。
株価は、すでに業績の変化を先読みして動いていますが、全般の下げに影響された部分も多く、必ずしも企業業績を先取りしているようにも見えません。しっかりした相場観をもって個別企業の発掘に臨まないと、いつまでたっても99%のグループから抜け出せない状態が続きます。
決算を先読みすることは、そんなに難しいことではありません。
1.発表済の4~6月期の業績
2.海外移転の進み方、為替変動の織り込み方
3.アナリストの見通しが発表されている大型株の決算動向
4.業界紙などによる新製品、新市場に対する評価
など、企業の業績を読める指標を分析すれば、企業決算の先読みはできるのです。
「投資法の基本は、あまり着目されていない中小型株を、決算短信で詳細に分析し、企業の成長性に着目して、大量に買う」という、あの若きカリスマ投資家?の声を無視してはいけません。
年末までの株価は、この短信にかかっているのです。