元祖SHINSHINさんのブログ
モロボシダンと呼ばれていた男
「駐車場はどちらになるでしょうか?」
扉を開けたオイラは、店のママと覚しき妙齢だが美しい女性に尋ねた。
場所を確認し、再度入店すると空いている席に着いた。
「出身は北海道でね、18の頃、たったひとりで上京しました。なんの当てもなかった」
その声を聞いた瞬間、オイラの頭は緊張で少しばかりクラクラした。
一階右奥に固まっていた四人の男に囲まれて、
平素は無口でどちらかというと無愛想だという噂を聞いていた男が、
笑顔を振りまき、饒舌を振るっていた。
すぐ側には、こうもり傘のような形をした黒い集音(集光?)器具らしきものが、
天井近くまでそびえていた。
右手にはグランドピアノがあり、
その上には、かなりな大きさをしたポインターが佇んでいた。
相当リアルな出来で、じっと見つめていると乗れるのではないかという錯覚に陥る。
「セブンはね、他のシリーズと違うんだ。あれはね、大人の話なんですよ、実は」
その話のとき、大柄な男が入店してきた。
先客たちに向かって名刺を差し出し、円谷プロの人間だと名乗った。
*
” ウインダムの親分に、会いに行かないか? ”
そんな意識を感じたオイラの、第六感は鋭かったようだ。
どこかの取材の最中だ。
オイラはそもそも、ある目的を持って取材に来たつもりだった。
なんてラッキーなことだろう。
こんなに近所に住んでいるというのに、
鵠沼伏見稲荷と同じく、一度も訪ねたことのなかった店だ。
その店の場所は、藤沢警察と鵠沼伏見稲荷のちょうど中間にあった。
店内には、彼が出演した映画ポスターやら、
定期的に開催される度に参加してきた女性シャンソン歌手の写真が11枚、
センス良く展示されていた。
夜の部であるシャンソンとジャズの集会に、是非参加してみようと思う。
*
その後で、行きつけの「漁り火」へ赴いた。
森次晃嗣の話をしているところに、伴さんがやって来た。
「なんだゴルバチョフ、来てやがったのか!」
元ラガーマンで不動産の仕事をしているという伴さんは、
いつもこんな調子でオイラをからかうのだった。
「おいおい、俺はね、あそこの奥さんをよく知っているんだ。
ゴルバチョフにそういう目的があるというなら、俺が声をかけておいてやるよ」
今すぐにどうこうという目的ではないのだが、
オモロイ構想が頭に浮かんできて、伴さんと一緒に馬鹿笑いしたのだった。
「ゴルバチョフ、お前の話はな、その辺の小説を読むより笑えるってんだよ、まったく!」
ちょいとうけたので、少しだけ自信が湧いてきた。
ネタは、いろいろあった方がイイ。
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