出せません。出すつもりもないのです。
理由としては、
(1)これ以上の日銀の追加緩和策は、通貨安競争の引き金を引くとして、欧米諸国からの非難を浴びる恐れがあり、政策対応しなくとも貿易収支の改善がない限り、円安に向かうとの読みがある。
(2)アベノミクスの第三の矢として期待されている分野については、自民党の政権基盤からの反対が強く、集団的自衛権論議に悪影響を及ぼすなどで、時間を掛けて結論出したいところ。
私は、日銀も政府も、いくら催促されても出さないと見ています。欲をいえばきりがありませんが、今のところ想定以上に、デフレは解消し、企業収益は改善しているのです。今は、これ以上の政策対応よりも、時間を掛けて検証する時期に当たります。
今年に入って株価は低迷しています。その原因として、アベノミクスに失望した外国人の売りをあげている向きが多かったようです。これ以上の円安や、これ以上の経済対策が必要だといっているのは、外国人と、その売買で恩恵を受けている国内の証券会社と取引所、アナリストたちが中心です。
株価は低迷しても、企業業績は、昨年度の大幅増益に続き、今年度も消費税増税があっても、増益基調が維持されています。株価だけを見ていると経済が悪くなっているようですが、実態は違います。
今年に入ってからの下げは、昨年末よりアメリカではQE3の縮小が始まり、海外に流れていた資金が本国に還流しているからです。アベノミクスに失望したというのは後講釈で、対策が出ようが出まいが資金の引き上げは想定されていたのです。
それに対して、インフレ定着と景気回復から買うと見られていた日本勢が、消費税引き上げの影響を見極めたいとして、積極的に参入しなかったために、売りを吸収できないために起こった、一時的な需給のギャップが理由です。
政府も日銀も10%程度の下げは、想定していたと思います。むしろ、政策対応を見送り、下げを容認していたとさえ見ることもできます。恐れていたのは、バブル崩壊やリーマンショックのときのような、外国人の売りが株価の暴落につながり、それが後の景気悪化の引き金になることだけでした。
バブル崩壊のときは、日銀は極端な金融引き締めに走りました。リーマンのときは、すべてのリスク資産から資金が引き上げられました。今回は、日銀による未曾有の資金供給があります。市場から外国人の資金が引き上げられても、景気の腰を折るようなことはありません。
外国人売りが、景気の腰を折らないならば、むしろここは相場を下げたいところです。
「なぜかって?」それは、これから始まる年金運用改革です。
GPIFは、130兆円の運用資産を抱える「世界最大の年金基金」で、国内債中心の運用を株式に振り向けるよう計画しています。いずれ予想される国債暴落に備えて、日本の金融機関が、国債運用の比率を下げるようにしている流れに合わせた動きで、合理的な判断なのですが。ただ、これには株価維持対策だとして反対する向きも多く、政治的な決断で決まったようです。そのため、改革の成功は絶対に必要で、株を安値で仕込むことが要件です。
昨年、日本株で大儲けをしたヘッジファンドとしては、高値で買い取ってくれる受け皿が、あればいいと思っていたのでしょうが、見事に裏切られました。同じように、ヘッジファンドに追従してきた個人も、被害者となってしまいました。
一連の動きを指導したのは、財務大臣のA氏と想像しています。彼の言動は、マスコミには評判がよくないようですが、金持ちのぼんぼんとはいえ、実業家としての経験や、国際金融関係者との親交などから、経済政策については政府を動かしています。彼がときどき漏らす失言に注目すると、これからの経済対策が分かるような気がします。
先週で二番底を確認し、今期の企業業績が読めてきたところで、受け皿が動き出しました。GPIF改革は6月といわれていますが、すでに相当の資金を株式に移動させているように思えます。トップ交代が明確になれば、その下の者は、われ先に新しい方向に動きだすのは、日銀総裁の交代劇で、日本中が見ています。
企業決算の発表に合わせた増配や、自社株買いも過去最高にまで膨らんできました。
後は富裕層の参加です。個人資産の多くを占める高齢の富裕層は、迷っています。今まで安全であれば、たんす預金でも、銀行預金でも、物価の下落で実質的な金利を受け取っていたのですが。20年来続いたデフレからインフレに変わったことが、まだ実感として理解できません。
安定的に収入が得られる投資先としては、不動産か株式です。不動産による賃料収入も、テナント不足から二の足を踏んでいる状況です。とりあえず、投資信託に現金の一部を動かしているようですが、マイナス金利が定着してくると、この層から株式に回る資金は、10兆円単位となります。
外国人の動きは、アメリカでの金融緩和縮小が続く限り、今年一杯は売りが止まらないと見ています。国内勢の動きで年の後半に掛け、需給は改善し、外国人の投資動向を、あまり気にしない相場になりそうです。割安に放置されていた日本株は、じり高傾向は続くものと思われます。
ただ、長期資金での銘柄選択は、あくまでもファンダです。指数買いではなく、銘柄を選んで安値で買いを入れる投資手法をとっています。銘柄選択と投資時期は、ますます重要になってきます。慎重にそして果敢に行動すれば、これからの資産形成に大きな差をつけることができます。
そして、豊かな老後を楽しく過ごしましょう。