本屋さんの株のコーナーには、夢と恐怖が並んでいます。
「100万円の資金を1年間で1億にした主婦…」と夢の話。
「40年働いた退職金を株で失くして保護生活…」と脅します。
いったい株とは、天使なのでしょうか、それとも悪魔なのでしょうか。
これらの本も、よく読んでみると、「夢」は再現性のないおとぎ話のようなもので、「悪魔」もそうならないために、といった但し書き付きです。夢でもなければ、恐怖を感じるほどのこともないのですが。それでも売れていると見えて、一番目立つところにおいてあります。
売れているということは、「実話」をベースにして、株に関心のある人の感性に訴えかけているからです。作者が実際に経験したかどうかはさておいて、まったく起こりえないことではない点が味噌です。
これは、初心者が株を買うときの心理状態をよく表しています。買うときは夢を持ち、買ってしまうと恐怖を感じ、そしてそれを癒してくれるのが時間となります。時間というよりは、その後の動きで行動の結果を、検証しているといったほうがいいかもしれません。
癒しに時間を選ばないで、損切りという方法もありますが、株の世界から離れてしまいますので、私は塩漬けを勧めます。やがて関心が薄れていき、放置しておくと、いつの間にか買値を大きく上回って、夢の実現とともに幸せを感じるのです。
この繰り返し……。ただ、時間が大きな要素を占めています。株を買ってみれば、このサイクルがよく理解できます。それによって、株への関心が湧いてきます。
同じことが、株の評論についてもいえます。株をもっていない人の意見は、単なるニュース解説です。目先の情報で、相場観が絶えず変わります。売っている人は弱く、買っている人は、強い相場観を持つのは当然です。
株式投資の専門チャネルに登場するキャスターは、新聞記者から出発した人が多いせいか、
結果の報告といった感じになります。証券会社系のアナリストは強気のバイアスですが、ネット証券となると強弱が分かれます。ネット証券では、信用取引を利用する投資家が多いからかもしれません。
この欄の意見も、それぞれの個性がありますが、私としては株をもっておられる方のほうが、感性に触れます。ただ銘柄情報については、私のポートフォリオにないものばかりなので、あまり関心がありません。
私の相場観には、強気のバイアスがかかっていますが、長期に物を見るという点では、少し違うのかもしれません。私の投資の目的は、「長期の資産形成を通じて老後を豊かに送る」ことにあります。
長期投資では、その株に投資した全員が、企業の利益の増加により、値上がりと配当を受けることができます。短期投資では必ず敗者が生まれますが、長期投資では全員が同じ利益を受けるという点で平和主義ともいえます。もっとも、企業間では激しい競争と勝敗で、選ぶ会社を間違えると、全員が地獄へということもないとはいえませんが。
金融資産のほとんどは株で運用し、現金は原則持ちません。そのため、資産は相場の動きに敏感に反応して上下します。株価の上昇期には、持ち株を増やし、下落時には現金ポシションを上げるというような、器用なことはやっていません。相場を完全に読めれば、こういった運用も可能ですが、安定した配当金を受け取るためには、不況期でも株は持ち続けます。
ある意味、日本経済の長期発展を信じて、企業収益は将来に向かって安定的に増え続け、株を保有することによって、配当金が豊かな生活を支えると考えています。
ただ、持ち株の構成には人一倍敏感です。単に安定的に高配当株というだけでは、ポートフォリオには組み込みません。将来の高配当を狙える時流にあった銘柄を、10銘柄以下に絞って所有し、「資産形成で配当収入を得る」ように心掛けています。
ここまでくるには、時間がかかっています。持ち株の価値は相場の上下によって変わりますが、銘柄選択を間違えなければ、また元に戻ります。「株資産はまぼろし」だと思うようになったのはごく最近です。
「ちょっと、待ってよ!」またしても、天からの声です。
「お前の自慢話を聞いていたってしょうないや。初心者の方が、どうすればいいのかというのが、テーマだろ!」
「さっさと結論を出しなよ!」
結論はないような気がしてきました。要するに、自分の投資法にあった人を見つけ、その人の意見を参考に、後は自分の判断で……。
「なんじゃ、それ!」
でも、無限にあると思っていた「時間」という資源が、そろそろ底をついてきました。この先は、神の領域になりそうです。天国で相場の見通しをやったり、儲け話をしたりしても、相手が神様では聞いてくれそうにありません。