(略)
青年 強烈なスポットライト?
哲人 ええ。われわれはもっと「いま、ここ」だけを真剣に生きるべきなのです。
過去が見えるような気がしたり、未来が予測できるような気がしてしまうのは、
あなたが「いま、ここ」を真剣に生きておらず、
うすぼんやりとした光のなかに生きている証です。
人生は連続する刹那であり、過去も未来も存在しません。あなたは過去や未来を見ることで、
自らに免罪符を与えようとしている。過去にどんなことがあったかなど、
あなたの「いま、ここ」にはなんの関係もないし、
未来がどうであるかなど「いま、ここ」で考える問題ではない。
「いま、ここ」を真剣に生きていたら、そんな言葉など出てこない。
青年 し、しかし・・・・・・。
哲人 フロイト的な原因論に立っていると、
人生を因果律に基づく大きな物語としてとらえてしまいます。
いつどこで生まれて、どんな幼少時代を過ごし、どんな学校を出て、どんな会社に入ったか。
だからいまのわたしがいて、これからのわたしがいるのだと。
たしかに、人生を物語に見立てることは面白い作業でしょう。
ところが、物語の先には「ぼんやりとしたこれから」が見えてしまいます。
しかも、その物語に沿った人生を送ろうとするのです。
わたしの人生はこうだから、そのとおりに生きる以外にない、悪いのはわたしではなく、
過去であり環境なのだと。
ここで持ち出される過去は、まさしく免罪符であり。人生の嘘に他なりません。
しかし、人生とは点の連続であり、連続する刹那である。
そのことが理解できれば、もはや物語は必要なくなるでしょう。
青年 それをいうなら、アドラーの説くライフスタイルだって、一緒の物語ではありませんか!
哲人 ライフスタイルは「いま、ここ」の話であり、自らの意志で変えていけるものです。
直線のように見える過去の生は、あなたが「変えない」という不断の決心を繰り返してきた結
果、直線に映っているにすぎません。そしてこれから先の人生は、まったくの白紙であり、
すすむべきレールが敷かれているわけではない。そこに物語はありません。
青年 しかし、それは刹那主義、いやもっと悪質な享楽主義です!
哲人 違います。「いま、ここ」にスポットライトを当てるというのは、
いまできることを真剣かつ丁寧にやっていくことです。
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★「嫌われる勇気」
岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社 1,500円+税 2013.12.12.第一刷 2014.1.8.第2刷
P271~272より抜粋
実はデイヴィッド・ゴードンも「ミステリ・ガール」で、この哲人と同様のことを述べていた。
直感で書くということの理由について。
相当な書く技量が伴わないと難しそうだが、なかなかオモロイ手法だ。
デイヴィッドが、アドラー心理学を知っている可能性はとても高いと思われる。
どーやらデイヴィッドは、かなり博識で腕利きな作家なようだ。
となると、早く次作を読んでみたい。
PS:直感という手法を彩るためによく採られるラストシーンが、
オープンエンディングだと気がついた。