読みかけの途中、他の書籍に目を奪われて、少し休んでいた。
序盤「桜田門外の変」における描写、
雨の中、血みどろな地面に切り落とされた指や耳。
戦のすさまじさを、直裁にではなく間接的に描いていた場面、
朝井まかての剣により、魅了されるあまりオイラも切り刻まれてしまった。
(つかみパーフェクト)
しかしその後、話の展開が緩やかになった折、
つい他の書籍に目がくらんだわけ。
どこかで、「新宿鮫」のような直接的な戦いの描写を見たかった。
チャンバラを見たかった。
ひょっとして、円月殺法みたいな剣の描写に期待したりした。
が、それはなかった。
けれど、読むのを再開してみると、
また話の流れは激流になっていき、
今度はページをめくる手が止まることはなかった。
嵐の前の静けさだったという。
構成の巧みさも、精緻な人物・風景描写も、間接的な戦の描写も、
話の合間に絡まる和歌の魅力で、まかての筆力が増幅されているように思えた。
登場する人物は、最初さり気なく描かれる。
特に「爺や」がお気に入りだが。
けれど、登場人物のほとんどが途中で豹変するという、
この描き方はポイントだろう。
また、登場人物は多いのだが、その濃淡の付け方が絶妙なので、
読んでいて惑うことはほとんどなかった。
全面的に、盗ませていただきます。