ウクライナに分裂の危機、ソチ五輪閉幕でロシアが攻めてくる?

冬山さん
冬山さん
混迷するウクライナ情勢。22日にヤヌコビッチ大統領が首都キエフを脱出し、ハリコフへ、そしてドネツク空港から国外(おそらくロシア)に逃亡しようとしたが失敗。未確認情報では空港から空路脱出に失敗した時に装甲車に乗り換えて逃走したというが、現在地は不明という。

一方そのころ首都キエフでは、議会がヤヌコビッチ大統領の解任を決議。そして、2010年の大統領選で敗北した後、"詐欺"、"殺人"などの容疑で、ヤヌコビッチ政権により収監されていたティモシェンコ元大統領が釈放された。

ティモシェンコは早速演説を行い、次の大統領選への意欲を表明。
議会は5月25日に大統領選をおこなうとし、暫定政権の樹立に着手。
予てから民主的な手段での安定化を望んでいた欧米はこの姿勢を高く評価し支援。
現在は大統領代行が議会によって指名され、25日中には暫定内閣が組閣できるように急いでる。

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ウクライナ情勢に対するロシア側の動きの予想
・ソチ終わったらロシアはウクライナ南東の分裂工作を仕掛け、傀儡化するかロシア連邦への併合を目指す
・特にロシアが狙う都市は東部のハリコフと、南東部のムイコラーイウ、セバストポリ
・ハリコフを抑え陸上兵器輸出市場でのロシアのシェアを回復させる
・ムコラーイウを抑え旧ソ連時代の空母建造能力を回復、ミストラル級揚陸艦の国内建造をここで行う
・セバストポリを抑え続け、可能な限り黒海をロシアの庭池として維持し続ける
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ティモシェンコが釈放されて、これで大統領に返り咲いて親EUに戻る...というほど楽観はできない情勢である。
ウクライナは分裂の危機があるといわれいている。というのも欧米寄りなティモシェンコと、ロシア寄りなヤヌコビッチは支持基盤が全く異なり、北西部ほど欧米寄りで、南東ほどロシア寄りと顕著に分かれている。
最も重要な工業都市はハリコフだが、ここは旧ソ連時代にソ連の最大級の工業都市であった。そしてヤヌコビッチのおひざ元だ。また、東南部の黒海寄りの二つの都市にも注目だ。

黒海の最重要の軍港都市セバストポリ。そして造船都市のムイコラーイウ。
この三つは現在もロシアとしては産業上も軍事上も回収したい都市であることは間違いない。
(特にセバスとムイコラは実質的にセットであり、日本でいうと横浜→横須賀、長崎→佐世保のよう関係である)

ハリコフはあらゆる重工業が発達しているがその中でも戦車・装甲車・トラクターなどの生産ができる。
ムイコラーイウは、大型艦の建造が可能で、昨年中国海軍に就役した空母遼寧も、元はソ連時代にこの都市で建造された空母ワリヤーグである。ソ連崩壊の際にウクライナの所有となり、まわりまわって中国に売却された。

そしてセバストポリは歴史上度々激戦地になった場所で黒海全体を抑え、さらにトルコを通って地中海ににらみを利かせる拠点である。ソ連時代ここは黒海艦隊の司令部が置かていた。
ソ連が崩壊した後はウクライナ領になったが、現在もここはロシア黒海艦隊が租借地としている。
94年に、旧ソ連の黒海艦隊の艦艇がウクライナとロシアどちらに配分するか貴族が決められ、さらに97年には2017年までセバストポリはロシアが租借としていた。現在もロシア海軍黒海艦隊が置かれている。

このセバストポリ問題も、実は親ロシアで現在逃亡中のヤヌコビッチが噛んでいる。
2010年にヤヌコビッチがウクライナ大統領になると、同年にセバストポリのロシアへの租借期限を2045年まで延長したのだ。
したがってロシアはあと30年余、セバストポリ、つまり黒海を自国の池のように扱えるという事である。

しかもロシアはミストラル級強襲揚陸艦を、フランスに建造してもらっているが、現在建造中なのは1番艦と2番艦までであり、1番艦がウラジオストク、2番艦がセバストポリという艦名である。(以降は国内でライセンス生産とされるが、旧ソ連の空母建造実績を見るとムイコラーイウで建造する予定なのではないかと思われる。つまりミストラル2隻を輸入して、その建造期間の間にウクライナを傀儡化するかロシア連邦に併合し、そしてムイコラーイウで建造する算段だったのではないかと思う。)

ウラジオはさておき、セバストポリという艦名は、一応形式上はウクライナ領だからといっても、完全自国領という心理がよく表れていると思う。

おまけに、ウクライナ南東はロシア系住民が多く、分裂してロシア化していっても特に不思議はない。

さらに黒海周辺だけではなくてもっと世界規模の事を考えても、何らかの形でロシアはウクライナ南東部を回収ないし傀儡化させる必要はあると考えているはずだ。

というのも、かつてソ連崩壊後にウクライナが独立すると、ウクライナは外貨獲得手段としてハリコフ製造した戦車を輸出し始めた。特にT-80UDやT-84有名であり、これらはパキスタン、グルジア、アンゴラなどへの輸出実績がある。同様にBTR系の装甲車は新イラクへ輸出されている。
さらに旧式のT-72やその改良型、さらにT-72アップグレードキットなどを輸出品にしているし、アメリカに研究用に保有兵器を輸出なども行っている。

これらは、兵器輸出が極めて重要な産業であるロシアにとっては好ましい事ではないだろう。
当然、安全保障上もよろしくない。その極めつけが、空母ワリヤーグの中国への売却である。
勿論、ロシアが所有権をすでに放棄していたため止める事が出来なかったのだが、東欧のウクライナにとって中国の海軍力が強化されたところで別に困らないが、ロシアとしては明らかに困る事だった。
おまけにその艦載機のSu-33の中国への輸出や技術提供はロシアは拒否したが、ウクライナは国内に残っていた試作機も2007年に中国に売却した。そしてこれはJ-15でありまもなく生産が開始されるといわれている。

このように、ロシアの武器輸出上の商売敵であり、ロシアにとって好ましくない国に兵器を輸出するというのは大問題である。特に兵器体系がロシアとウクライナは同じであるから、顧客もほとんど重複するだろう。

だからこそロシアとしてはウクライナが意図しない方向に発展していくことは大変に困る。ぜひに傀儡化したいだろうと思うのだ。



そんあことなので、25日には発足すると思われる暫定内閣は、ウクライナ全土から強い支持を集め、軍のコントロールを確実なものにしなければならない。そして国家分裂を未然に防ぐ可能性があるだろう。

まもなくソチオリンピックが閉幕する。五輪期間だからこそ抑えていた部分はあるだろうから、明日からロシアがウクライナにたいしてどういう風にアプローチをかけてくるか見ものである。

ヤヌコビッチは親ロシア...というよりほとんど傀儡政権だったわけだが、このままでは親EU政権が発足してしまうことは不可避だ。

はたしてロシアは軍事的圧力をかけてくるだろうか。 まあそれはさておき政治の都合でいくらでも司法が影響を受ける途上国ってホント恐ろしいなと思う。
2件のコメントがあります
1~2件 / 全2件
冬山さん
コメント、ありがとうございます!
纏まりのない長文でスミマセン!

そういえばこの所の相場の難易度が高すぎますよね。

このウクライナの件ように、国際的な要因で穀物やガスなどが動くのではとコモディティのほうが気になっています。
あとビットコイン乱高下で、為替やら金相場に影響でないかなあなんて。

日本株はどれもこれも配当1%未満や、PER20オーバーが多く、今までの感覚からすると隠れた割安だ!みたいなのはなかなかなく、あっても出来高が一日数単元とか、ちょっと触りにくい銘柄だらけで機会損失が増えています。

難しいですね、しかし僕なら・・・・・・・。

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