勝新太郎の座頭市をたまに見るのだけど、
今見ても新鮮なオモロサがあると思う。
タケシが作った座頭市映画も、なかなかオモロかった。
いつだったか、行きつけの寿司屋で飲んでいた時、
「たしか子母澤寛(しもざわかん)という作家が、鵠沼に住んでいた」
と、大将が言ったことがある。
随分と変な名前の作家だと思ったが、
実はその男が、座頭市を考え出したのだった。
★「思い出の作家たち 文藝春秋編」
文春文庫 714円+税 2011.5.10.第1刷 「子母澤寛 P.9~45」
作家亡き後、残された親族にインタビューを重ねて、
生前の様子を描き出すという企画書籍。
藤沢の橘通にある「金寿司」に足繁く通っていたという子母澤は、
たいへんな食通だったので、
マグロのネタ元が変わるとすぐにばれて参ったというエピソードが書いてあった。
その店には「味無値(あじにあたいなし)」という色紙があるという。
オモロイのはこれだけ魚好きなのに、大のネコ嫌いだという。
猿と犬は好きだったらしく、犬だけでなくなんと猿も飼っていたという。
喧嘩に強い男で、新聞記者時代に誤って右翼に襲撃されたが、
相手を殴り倒したという武勇伝がある。
心筋梗塞を発症しニトロを服薬していたが、
昭和43年7月19日朝方、
縁側にあるいつものソファーに座ったまま往生されたという。
空振りだった取材先、宿の親父さんから聞いた話。
「昔、市さんという盲目の変わった人がいましてね・・・」
雪になったその夜、火鉢にかじりついて聞いたその話から、
座頭市は生まれた。