現在はアベノミクス相場の上昇期にありますが、波動を描きながら上昇しています。相場にはそれを動かすドライバーがあります。そのドライバーは、今年と来年で大きく変わります。
ドライバーの変更は、通常ならば株価が大きく落ち込み、新しい相場に入るとき起こりますが、今回は上昇しているうちに起こりました。運転手が、止まったときでなく運行中に変わったのです。原因は、税制の変更とインフレの定着にあります。
この変化に気が付かないで漫然と株の売買をやっていては、今年と同様、大多数の個人投資家が、指数に負けてしまうという結果に終わってしまいます。税制の変更は、個人投資家に株離れ引き起こすと考えがちですが、実際は堀古さんも指摘しているように増税の翌年は、個人投資家が株式に回帰し株価が上昇している結果になっています。来年はこれにインフレが加わり、待機資金が株価をいっそう押し上げます。
第1幕(13年前半) 初期波動、テーマ株の物色
第2幕(13年後半) 値動きのいい新興市場株に向かい、投資より投機へ
第3幕(14年前半) 投資主体の変化による指数のひずみ解消へ
第3幕は正確にいえば、来年の受け渡し日となる12月26日から始まりました。来年は投資主体が、外国人から個人に移ります。富裕層が動き始めるわけですが、富裕層が株を買う条件は値上がりではありません。値下がりしないこと、配当利回りがいいこと、の2点です。
ファンダメンタルがしっかりしていて、低位に放置されている株式に狙いをつけますが、必ずしも有名である必要はありません。彼らは、外国人やアナリストにはない、独自の情報網からの確度の高い会社業績を知ることができます。ファンダがいい個別株物色に狙いをつけ、安いうちに買います。決して高値を追いません。
もちろんテーマ株も上昇しますが、平均より上を狙うには、まともにテーマ株を買っていては駄目です。インフレだといって不動産株、円安といって輸出株では、せいぜい2割程度の上昇に留まります。不動産、自動車、電機、内需の建設、通信、小売の有名どころは、すでに相当買われています。
ここは収益が向上しているにもかかわらず放置されているもの。経済全体が上向いているのですから、テーマ業種に絞る必要はありません。増益基調にあって今年上がらなかった株に、狙いを付けてみてはどうでしょうか。
年末に掛けて大暴騰した藤倉ゴム。マグネシュウム電極がきっかけのようですが、これだけでしたら一過性で、こんなに上昇しません。ゴム株は自動車関連株とみなされ、業績が向上しファンダがいいにもかかわらず、電気自動車時代には不要になるとして、相場から相手にされませんでした。藤倉ゴムのダイアフラムも、東北大震災の際には、復旧が急がれたサプライチェーンだったのですが、実際には本業の樹脂シャフトが収益の柱で、収益が向上しファンダ的に割安だったからです。
このような発想が、これからの相場には必要になりそうです。短期間に2~3倍になる株を発掘し、上がる前に仕込んでおくのがもっとも効率がいい投資方法です。背景は増益、低PER、高配当にあります。
株式投資は、だれがババ(放送禁止用語ですか?それならジョーカー)を抜くか、が問われます。いつも素人の投資家がその役割を担っているようにいわれますが、情報化社会の下では、素人を馬鹿にしてはいけません。特に富裕層は独自の情報網を持っています。その動きがドライバーになるのです。
個別株の物色には、富裕層が買いたい銘柄を先回りして、辛抱強く待つのが一番のような気がします。「勉強」と「運」が試される相場を予想しています。
最後に、相場のリスク要因は?
戦争、災害、公害など、不確実性は更に増してきています。相場が天井期に差し掛かっているとすれば、相場下落にも今まで以上に備えるのはよく分かります。ただ、予測不能の災難は、いつの時代でも存在し、「それに備えろ」は、株を買うなと同義語です。
今考えられる最大のリスク要因は、安倍総理の退陣です。安倍内閣の支持率は、当面最も注視する指標と考えています。今回の靖国訪問について、いろいろ批判されていますが少なくとも相場への影響はなかったのはなによりです。一番安心したのは安倍さんだったのかもしれません。
というのも、「株価は経済の鏡」といわれていましたが、いまや「株価は社会情勢を写す指標」になっているからです。株価は、経済再生を政権公約に掲げて、政権交代を果たした安倍内閣の通信簿と見ることもできます。経済が上向いている中国や韓国の株価が上がらないのは、社会が安定していないからと見る人さえいる時代です。安部総理が、明日の大納会に顔を見せるのも、株価を気にしているからにほかなりません。
今年株で儲かってその使い道に迷っておられる方は、私の小説『五能線』をご覧になれば、ヒントがえられるかもしれません。保証はしませんが……。
皆さんいいお正月を!