大変だと思われる方も、簡単だと思われる方も、何かが抜けていることに気が付かれたでしょう。「そうです。時間の要素が抜けているのです」
20年間に5倍にするとしたらどうでしょうか。年率9%の複利で増やせば可能になります。「それなら簡単さ!」そうでしょうか。
外国債券でも購入していれば、毎年コンスタントに増えてゆくと思われるかもしれません。でも為替の変動はどうでしょうか。リスクのない金融商品はありませんから、この間に1回でも暴落があり、仮に20%資産を減らせば、その次の年からは20%以上の利殖を考えなければなりません。資産活用を経験される人であればあるほど、この目標は相当高いと感じるはずです。
それでは、10万円を1年間で50万円にするというのはどうでしょうか。同じ5倍ですが、時間は1年間に短縮されています。1,000万円を20年かけて5,000万円にするよりは、簡単のような気がします。現在のような株式環境なら、1回の値上がりで5倍になる銘柄もないわけではなく、銘柄を2~3回乗り替え、幸運に恵まれれば達成はそう難しくないように思われます。
「なぜでしょう?」これはリスクに対する感覚の相違があるからです。10万円だと、失う損失より得られる利益のほうを重視する心理によるものと考えられます。失敗しても10万円くらいならまた稼げるからと思えば、思い切ってリスクがとれ、その結果大きなリターンが得られるのです。
これが1,000万円となるとそうは行きません。せっかく貯めた虎の子の1,000万円を倍にするために、大きな賭けに出る人は少ないでしょう。どうしても安全思考になり、結果として5,000万円は遠くなってしまいます。
私の生涯株式投資法では、40歳までに1,000万円を貯めます。方法は問いません。「10万円を50万円」にする投資を織り込めば、かなり可能性があがります。そうして40~60歳までの20年間に5,000万円まで増やします。
20年間で5倍、大変のように見えますが、リスクを少なくするために、時間を最大限に利用するのです。この間に4~5回ある大きな流れを読み、これに乗ることで可能になります。
時間を味方に付け、1相場が終わった時点での持ち株の評価額が、1.5倍になっていれば、4相場が終わった時点で5倍になっているはずです。相場ですから、上昇期ばかりではありません。1相場の底値から天井までに資産が倍になれば、下落時に7割まで落ち込んでも、スタート時点から1.5倍にとどまることができます。
この程度の資産増加でしたら、それほどのリスクをとらなくても達成できます。持ち株の構成(ポートフォリオ)は、相場に合わせて変えてゆきますが、業績が向上している限り短期に入れ替える必要はありません。
幸いなことに、アベノミクスによって、投資環境が変わり、長期投資が報われる時代になってきました。ゲームとしての株式投資の面白さは否定しませんが、そろそろ短期投資を卒業されて、長期の資産形成を考えられてはいかがでしょうか。この欄の参加者で、相当羽振りよくやっておられた方でも、1年間で2割ほど消えています。
この1年間で、株価は倍近くになっているんですよ!