やはり投資家のマインドから不安が消えないうちはちょっとした理由で結構売られますね。
今日の下げ理由にされたのは日銀がLTRO(Long Term Refinancing Operation)の導入を
見送ったためだといわれています。
LTROはECBのドラギ総裁が、銀行信用の緊縮を打開するために打ち出した方策で
一言でいうと、担保を差し出せば中央銀行は何時でも金を貸しますよといった内容です。
しかし黒田総裁は異次元緩和を打ち出した時点で
市場の変化に合わせて一々追加緩和はしないと言っている訳ですから
市場が先走って期待をし勝手に落胆しているに過ぎません。
こんな茶番劇で株式市場や債券市場が振り回されるのもまた心理戦の表れなのでしょう。
こうした流れを受けて不動産やその他金融業は売り込まれましたが
中でも金利の上昇が続けば不動産業の黒字倒産リスクが気になります。
そこで不動産業の財務内容に注意して置く必要があることから
主なチェックポイントを幾つか挙げてみます。
当該企業に投資される場合は超短期投資を除き事前に充分な精査をお勧めします。
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「みんかぶ」予想を見ても、財務に問題がありそうな中小不動産企業に期待する投稿を見掛けますが
不動産業は先ず借金からスタートすることを考えると財務内容で明暗が分かれそうです。
財務諸表に精通されているベテランの方々にとっては今更の話で申し訳ありませんが
初心者の方々にとって不動産セクターの低位株は魅力ある投資対象だと思います。
そこで念のため、「ある日突然!」にならない様抑えて置くべきポイントをご紹介しておきます。
あくまでも念には念をということで・・・・・
先ず不動産企業が黒字倒産に陥る主な原因は
借金して買った土地や借金して建てた施設・マンションなどの売却が進まないこと。
賃貸し物件に於いて賃料の支払いが滞ること。金利の上昇などが考えられます。
さらに転売が進まず棚卸資産が増加した場合、損益計算書の上では黒字でも
資産の評価次第では金融機関が資金を引き揚げる可能性がある上
現金が底を突いても損益計算書に利益が計上されておれば
納税義務が発生するので経営は完全に行き詰ります。
<チェックポイント>
重要なことは利益と借入金規模のバランスや
営業キャッシュフロー(CF)から資金繰りに困る状況が予測出来るか否かです。
つまり売上が伸び利益を計上出来ても、売掛金、在庫、買掛金といった運転資本が増加する様では
銀行も与信を拒否する可能性があり
その結果現金が無くなり、借入利息や買掛金の未払いで倒産に追い込まれる場合があります。
しかも有価証券や不動産の評価損は計上されるまで分らないというリスクも存在します。
そこで肝心なのは損益計算書の利益より営業CFに注目することです。
営業CFがマイナスまたはそれに近い状態というのは本業では稼げない証拠ですから
将来的に企業の存在自体が危ぶまれ投資対象としては不適だと言えます。
また営業CFがプラスの場合でも幾つかのパターンがあります。
①営業CF(+)・投資CF(+)・財務CF(+) 滅多に見られませんが財務は極めて健全
②営業CF(+)・投資FC(-) ・財務CF(-) 財務が健全である代表的な例
③営業CF(+)・投資CF(+)・財務CF(-) 借入金の返済が進み財務内容が好転中
④営業CF(+)・投資CF(-) ・財務CF(+) 標準的な財務内容
因みにすべてのCFがマイナスという企業は典型的な倒産予備軍です。
(CFはYahooファイナンスや四季報などで確認して下さい)
財務の健全性を表す指標(単位:%)
流動比率=流動資産÷流動負債 (資金繰りの難易度を示す指標)
(200以上→健全、150→標準的、100以下→不健全、80以下→危険)
当座比率=当座資産÷流動負債 (支払い能力を示す指標)
(120以上→健全、100→普通、80以下危険)
固定比率=固定資産÷自己資本 (資産の安全性を示す指標)
(100未満→健全、100→普通、200以上→不健全)
自己資本比率=自己資本÷総資本(返済義務のない資本)
(50以上→健全、30→普通、20以下→不健全、10以下→危険、0以下は債務超過)
ところで不動産業78社を対象にした純利益率は直近の決算で平均2.14%だそうですが
企業によっては数十%と高い利益率の企業もあります。
但し利益は純利益より本業で稼ぐ力を表す営業利益が重要で
純利益には営業外利益(受け取り利息、有価証券や不動産売却益など)が含まれている上
営業利益のマイナスを一般管理費の削減等で補っている場合もあるからです。
ですから不動産業で売り上げ規模が小さい企業や赤字が続いている企業の決算短信を見て
純利益が黒転していたとしても、それで先行き有望と判断するのは早計です。
一般論でも低位株に該当する企業にはそれなりの理由は必ずあるものですが
不動産業は先ず借金有りきなので、資金力に乏しい企業は常に自転車操業を強いられます。
そしてある日突然スポンサーである金融機関がノーと言えばそれでアウトという訳です。
幾らアベノミクスに期待しても
この様な結果を招く恐れのあるグレー企業が無いとは言えません。(むしろ有るでしょう)
従って不動産セクターへの本格的な投資は債券相場が落ち着いてからの方が無難だと思います。