株を始めたばかりの人が失敗をする原因は沢山ありますが
努力すれば解決出来る課題も決して少なくありません。
例えばしばしば失敗の原因となるのは
①相場の仕組みや歴史を知らないまま安易な気持ちで始めた
②銘柄の分析が甘い ③資金管理が甘い ④周囲の意見に流されやすい
⑤状況の変化に鈍感 ⑥常に資金を目一杯投資している ⑦ヘッジをしない ・・・等々
この中で①に該当する人は無免許運転と同じですから勉強して一から出直すべきです。
しかもこういう人に限って
株で一儲けして高級グルメを堪能したい、旅行したい、家電を買い替えたい
車を買い替えたい、家を建てたい・・・・・などと捕らぬ狸の皮算用が多いものです。
しかし現実はそんなに甘くはありません。
高級グルメは自家製のカブの塩漬けに変わり
旅行は夢と化しTVの旅番組を見る度に株に手を出したことを後悔するでしょう。
家電を買い替えるどころか電気を止められる事態にもなり兼ねません。
車は少なくともあと5回車検受をけることになるでしょう。それでも車が残ればまだマシです。
家を建てる?将来必ずこう思います。「株にさえ手を出さなければ家が2~3軒建っていた」
②銘柄の分析が甘い
株を買う前に銘柄分析を行うのは当然ですが、そこには見えない落とし穴が隠されています。
つまり自分が買いたいと思う銘柄は、先入観が邪魔をしてひいき目で見てしまうので
分析に客観性が欠ける恐れがあります。
ですから買いたいと思う衝動が強い銘柄ほど、分析結果は差し引いて評価する必要があり
少なくとも同業他社と比較して買われ過ぎか売られ過ぎかの判断は不可欠です。
因みに、財務指標をチェックする際勘違いしやすい事例を幾つか挙げて置きます。
◇経費削減による利益は成長性と関係が薄いので、増益決算の場合は純利益より営業利益を重視
◇PERが低くても割安とは限らず、配当性向が低い(=社内留保)為に敬遠されている場合がある
◇ROEは株価と逆相関し、株価が上がると減少し下がると増加するので絶対的な指標とは言えない
◇BPSは増配によっても減少するのでBPSが減少した時は必ずその原因を調べる必要がある
◇最も勘違いが多いのはPBRで、1倍以下が割安かと言えば必ずしもそうではない
例えば資産100億円の企業でも、設備が老朽化していたり、不動産の価値が下がっていると
資産価値は簿価を大きく下回ります。
つまりPBR0.5倍の企業は市場が資産価値を50億円しか認めていないという訳です。
また浮動株が少ない企業や赤字続きの企業では、長期間に亘ってPBRが低くなる傾向があります。
◇有価証券の含み損(=隠れ負債)は見逃しやすいので、投資規模を予め確認しておく方が賢明
◇企業活動は延々と続くため、財務指標は点ではなく線で判断する必要がある
つまり直近の収益力や財務状態だけで判断するのではなく
少なくとも過去3~5年の決算内容を確認し、業績や財務内容の経時変化を知ることが重要です。
③資金管理が甘い(損切りが苦手)
損切りが苦手な人の特徴は、銘柄に拘る(思い込みが激しい) 勝率に拘る
売ると上がりそうな気がしてなかなか売れない 含み損は実損ではないと考えている
殆どの人がこれら4項目の何れかに当て嵌まると思います。
結論から言うと、損切り出来ない人や個別売買の勝率に拘る人の解決策は
1年を一区切りとしたトータル管理を行うことです。
そうすれば取引ごとの勝敗に拘らずに済む様になり、たとえ勝率が1割でも
トータル収支がプラスになれば良いという発想の転換が可能になります。
つまり10銘柄買って9銘柄損切りしても
残りの1銘柄で大きく利益を上げて収支がプラスになれば良い訳です。
投資は資産の運用ですから、基本的に損をすることは許されません。
ですから銘柄ごとの勝ち負けに拘るのはナンセンスで
あくまでも年間トータルの勝ち負けに拘るべきです。
そしてその為には障害になりそうな銘柄は容赦なく切り捨てなければなりません。
因みに資金管理は投資戦略を練る上で大変重要です。
もしどんぶり勘定でトレードを行えば勝てる要素は運だけで何れ退場は間違いありません。
次に、損切りの重要性を再確認出来る事例を二つご紹介して置きます。
(例1)貴方は100万円の資金で株を始めました。(但し手数料は無視します)
何度か売買を繰り返しているうちに資金が半分になってしまいました。
この時資金の減少率は50万円÷100万円=50%です。
しかし失った50万円を取り返そうと思えば残りの資金は50万円なので
パフォーマンスは50万円÷50万円=100%という計算になり
失った資金を取り戻すためには2倍のパフォーマンスが必要になります。
(例2)貴方は1株1000円の株を1000株買いました。
株価が900円に下がり900÷1000=10%の含み損が発生しました。
ところが株価が買値に戻るためには1000÷900=11.1%上昇しなくてはならず
値幅は上下何れも100円ですが、パフォーマンスに1.1%差のあることが解かります。
つまり損切りのタイミングが遅れれば遅れるほど取り戻すのはより困難になることを
パフォーマンスの違いが証明しているのです。
次に売ると上がりそうな気がしてなかなか損切り出来ない人は
株は買えば下がる習性があることに気付いていません。
ご存知の様に株価は需給で決まりますから、買いたい人が売りたい人より多いうちは上がり
買いたい人より売りたい人が多くなれば下ります。
但しこの時点ではまだ買いたい人が残っていますから
残ったグループに属する人は理論上買った直後に含み損を抱えることになります。
しかも通常機関投資家や情報通の大口が最前列を争って買いますから
少なくとも真ん中より後に並んだ投資家は全員買ったら下がる運命にあると言って良いでしょう。
その代表的なタイプが衝動を抑えきれない人で、買いたいと思えば何が何でも買ってしまいます。
しかし株価が下がり始めるとぎりぎりまで耐えた挙句、最後は恐怖心で投げてしまうのです。
つまり、高く買って安く売るという慈善事業的な投資行動をとっている訳です。
そうでなくても株は買えば下がり売れば上がる確率が高いので
冷静に需給を見極めて売買することが大事です。
また需給の判断はチャートを見れば一目瞭然ですが
需給が均衡状態にあることを示すローソク足に注目すれば売買のタイミングが掴み易いと思います。(参考) http://kabu-psychology.com/wp/?page_id=478
最後に含み損は損失を確定するまで実損ではないと考える人は大変な勘違いをしています。
何故なら、含み損が発生した時点で既に資産が目減りしている上に
塩漬けにすれば機会損失をも被ることになるからです。
つまり、含み損(塩漬け)=実損+機会損失となり
含み損を放置しておくのは実損より質が悪いことになります。
④周囲の意見に流されやすい
こういうタイプの人が株を買う時にしばしば犯す過ちは
投資顧問に奨められたので、アナリストが推奨していたので、雑誌の推奨記事を読んで
株式掲示板の買い煽りに納得して、たまたま推奨しているサイトを見付けたので・・・
この様に自分の意思で決められなければ、自ら投資をするより投資信託に委ねる方が安全です。
そこで周囲の意見に振り回されない様にするには
自分の意思で決められるだけの知識と経験を蓄積するしかありません。
但し知識は教科書から容易に学べますが
経験は自ら教科書を作ることと同じですからそれなりに時間がかかります。
つまり将来の投資に役立つ体験はその顛末を記録し、マニュアルとして保存しておくべきです。
因みに、判断力は情報量、決断力は経験量に比例するため
マイ・マニュアルが充実している人ほど投資に自信が持てる筈です。
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ところで株式市場では日々心理戦が繰り広げられています。
そこで心理戦に強くなるためには、相手の行動パターンを知ることと
自らのメンタルを強化する必要があるので、後半はその点に少し触れてみたいと思います。
<メンタルを強化する方法>
①株は心理戦
「株は心理戦」と言われますが、心理戦を仕掛けて来る代表的な存在がヘッジファンドです。
彼らは心理戦のプロで、株価だけでなく為替や債権或は商品市場などを巧みに操ることで
投資家心理を翻弄するのです。
また仕手筋も篩い落としなどの心理的な揺さぶりを多用して個人の懐を狙っています。
しかし冷静に考えてみると彼らの手口には限りがあり
基本的な行動様式を理解しいていれば何度も騙されることはありません。
例えばヘッジファンドの場合、日本株を大量に買って円を売れば高く売り抜けることが出来ますし
先物を売ったり輸出関連株に空売りを仕掛けておいて円を買えば安く買い戻すことが可能です。
また債券相場を巧みに操れば金融株や不動産株で簡単に儲けることも出来ますが
逆に考えると、彼らの手口の限界は株式、為替、債券、商品市場などを操作する
幾通りかの組み合わせしかないのも事実です。
つまり彼らの行動様式には一定のパターンと限界がある訳で
それらをある程度理解すれば心理戦に振り回されっ放しということは無くなるでしょう。
そしてこうした仕掛けを見抜くためには
普段と異なる相場の変化に着目する習慣を身に付けることが重要だということを
付け加えて置きます。
また、もう一つ個人投資家同士の心理戦があることも忘れてはいけません。
例えば株式掲示板で盛んに買い煽ったり売り煽ったりする連中にはしばしば魂胆があります。
塩漬け株を早く売りたい、もっと安く買いたい・・・など理由は様々だと思いますが
文章を読めばだいたいの見当はつくものです。(詳しくは別の機会にお話しします)
ただ一つだけ見え見えの買い煽りがあります。
ある日突然ステハンを使って見苦しいほどの買い煽りを繰り返す輩のことですが
彼らは間違いなく仕手の真似事をしているデイトレーダーです。
また個人同士の心理戦は駆け引きだけではありません。
例えば相場が暴落した場合、大勢(集団の多く)がどの様な行動をとるか?
起こっている暴落は一過性なのか、長引きそうか、或はセリクラに繋がる性質のものか?
こうした判断が冷静に出来る様になれば個人同志の心理戦には必ず勝てる筈で
ケースごとに分けて個人投資家の行動様式を知ることも勝者になる秘訣だと思います。
②「たら・れば」解消法
「たら・れば」が多いのは、常にベストを尽くしていないことが原因で
こういう人は投資の心構えが出来ていないか投資をギャンブルと勘違いしているかの何れかです。
例えば株を買う前に
地合いはどうか、需給はどうか、ファンダやテクニカルはどうか、割安だと思う理由を調べたか
株価水準を業界他社と比較したか、主な得意先・主要株主・提携企業などを知っているか etc
つまりその銘柄を何処まで理解していたかによって半分以上勝敗が決まってしまいます。
また、あの時損切りしていたら、あの時利確しておけば良かったなどと
損をしたり儲けそこなったことを悔やむのは自分自身に対する言い訳でしかなく
殆どの場合実行すべきことを怠った(or決断出来なかった)自分自身の責任です。
ですからトレードの結果を後悔しない様、常にベストを尽くすことこそ
「たら・れば」を解消する唯一の解決策だと言えるでしょう。
③スランプ脱出法
投資のスランプは多くの場合
強気になるべき時に弱気になり、弱気になるべき時に強気になることが原因です。
そしてこの様な状況に陥りやすいのは、相場観や投資対象の評価を間違った時か
失敗が続いて焦りが生じた時です。
また間違った相場観を持つのは特定の情報源や少ない情報を鵜呑みにしてしまうからで
情報源が偏っていたり、幅広く情報収集する努力を怠ることが原因です。
スランプの解消法は幾つかありますがbestは「休むも相場」を実行することでしょう。
人はスランプに陥ると思考回路がネガティブになり易く、ネガティブ思考がまた判断を狂わせます。
そこで思考回路をポジティブに切り替えるために
休んだり緑に親しんだりというリフレッシュ対策が必要になるのです。
ですから「株で一儲けして旅行したい」という考えは間違いで
投資のスランプを解消するために旅行に出掛けるという考え方が正しいのです。
因みにどうしても休みたくないという人には少々荒療治ですが
自分の考えや閃きと真逆のトレードを行ってみるという方法もあります。
所詮裏目に出るのなら最初から自分の考えと反対の投資行動を起こしてみるという発想ですが
これも裏目に出る様であれば頭を冷やして原因が解かるまで休むしかありません。
④感情を抑える
感情はトレードの大敵です。例えば銘柄に惚れるのも、損切り出来ないのも、買いたい病に罹るのも
全て感情を抑えきれない結果です。
ただ感情を抑えるのは至難の業で、解決策は我慢する訓練を繰り返すしか方法がありません。
つまりワンちゃんに「待て!」を教えるのと同じです。
では誰が教えるのかと言えばそれは自分自身です。
例えば衝動買いをしたくなった時に、もう一人の自分が「ちょっと待て!」と声をかけるのです。
説明が解かり難いかも知れませんが
要するに行動を起こす前に葛藤することが解決への第一歩だということです。
逸る気持ちの自分とそれを抑えるもう一人の自分を一人二役で演じる、そんなイメージです。
因みに私も訓練をした一人ですが、少しでも我慢することで失敗を免れたケースは数知れません。
またトレードから感情を排除する他の方法として、システムトレードがありますが
それでは味気ない上に責任の所在が不明確になるので私は我慢する訓練を選択しました。
ところで感情を抑える訓練は、例えば特定の銘柄を買いたいという衝動に駆られた時
簡単に買わず、かなり低い位置に指値をし下げて来るまで買わない
指値は余程の理由(相場の急変など)が無い限り変更しない
無条件に一日我慢する・・・・・など極めて原始的な方法ばかりですが
あくまでも逸る気持ちを抑える訓練なので、仮に結果が裏目に出たとしても
それは無視して訓練を繰り返すことが目的達成の近道だと思います。
何ともまとまりのない文章になりましたが、最後に要点をまとめてみます。
◇投資で成功するためには先ず心構えが大切
◇やるべき事にベストを尽くす
◇自分自身のメンタルを鍛える(弱みを解消する)
◇他人の心理(行動様式)を読む力を身に付ける
どれも言うは易し行うは難しですが、こうした問題を一つ一つクリアして行かなければ
とても資産の運用など出来ないと思います。