手配していた「いねむり先生」が届いたので、
むさぼるように読んでみた。
伊集院静は、エッセイストというイメージが強かったのだが、
「受け月」という作品で92年に直木賞を取っている小説家であった。
「いねむり先生」の中にも、小説家らしい表現がさりげなく出てくるので。
阿佐田哲也との交友と、共に苦しんできた幻覚などの病状との闘いぶりを、
しばしば連れ立つことになる地方への競輪旅打ちを通して描いている。
書籍のカバーを外してみると、阿佐田哲也が発作に襲われてベンチに腰掛け、
居眠りしている、なんとも素敵な絵が描かれている。
この作品を読むと、多くの人に愛されていた阿佐田哲也の実像に触れることができよう。
それも、伊集院静はじめ井上陽水など、ごくごく身近な人しか知らなかった実像だ。
あの阿佐田哲也=色川武大と、
こんなにも仲良くなってしまう伊集院静という男は、
実に強運の持ち主なのだと思い知らされる。
意外だったのは、伊集院静は小説を書きたいとは思っていなかったという点。
というよりそれは、小説に対する拒絶反応のようにもみえる。
編集関係者や色川武大から、小説を書け書けと、しばしば仕向けられている。
伊集院静は、小説というものに対して、とても謙虚な人なのだと知った。
ラストシーンでは、愛する人を失うということに対しての、
実像をも知ることになった。
★「いねむり先生」
伊集院静著 集英社 1,600円+税 2011.4.10.第1刷 2011.5.30.第4刷
阿佐田哲也=色川武大や伊集院静と一緒に、
あなたも旅打ちに行ってみませんか?