(略)ふわりとした感覚か、とぼくは考えてみる。
そう言えば、二人きりのこの部屋で、彼女は、いつも、そういうものを求めている。
開け放たれた窓から流れ込む柔らかな風とか。
そこでは、いつもウィンドチャイムズが澄んだ金属の音を響かせている。
普段、引っ詰めている髪を解いて、心地よさに目を閉じている姿は、
なるほど、ふわり、を存分に楽しんでいる。
それをながめるぼくも、同じ気分を共有している。
勧められるままに、冷えた白ワインを啜り、それが舌の上で温まる頃、
ぼくも、やがり、ふわりとなる。
風に膨らんで揺れる彼女の髪の毛が、ワインの絶好のつまみになるのを知り、再び思う。
知らなかったことを、また、知った。(略)
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★「タイニーストーリーズ」
山田詠美著 文春文庫 543円+税 2013.4.10.第一刷
「420、加えてライトバルブの覚え書き」P.295より抜粋
赤字の部分、こういう表現を読むと、やられたーとか、まいったーとか思ってしまう。
小説家って、やっぱりちがうなー、うまい!などと思ってしまう。
なかなかできないね、こういう組み立てと表現。
山田詠美は、村上龍のことをとても尊敬しているようだ。
短編を21集めた「タイニーストーリズ」の中のある一話には、
村上龍から授かったという題名が付けられていた。
エロいので馬鹿正直に表記できないが、
「○×▲リスにバターを」という題名だというw
それから、在日米軍の黒人が大好きなようだ・・・w
後半の短編に行けば行くほど、
パンチ力の増してくる話や表現を楽しめる。
ちょいとかっこイイね、山田詠美って人は。
「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」
という山田詠美の作品が、第97回直木賞だとあるので、これもそのうち読みたい。
PS:「420」って、フォートゥエンティとなって大麻の隠語なんだって、ゴホゴホッ。。