元祖SHINSHINさんのブログ

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「理由」

満場一致で直木賞が決まったという作品。
書き出しを読んだとき、これって神の視点というやつなんじゃないか?
と思って、大沢在昌氏の著作にあった文言を思い出した。
 

「神の視点なんかで書いてよこしたら、即座に落とすからな」

 (べらんめぇ!って行間、聞こえてくるような・・・)

 

彼はそう言って、教え子たちに一人称で書く練習をさせていたのだった。

『私は顔をポット赤らめた』とか、
『私は緑色のメッシュの入った茶髪をかき上げた』
などという表現はあり得ないと大沢氏は言うのだ。

 

一人称って、面倒くさい語り口だな。

それでつい、三人称多視点となって、やりすぎちゃって神の視点になるみたい。

描写が欠けて説明ばっかりになると、そうなっちゃうのだろうか。
「この小説は視点がぶれている」という悪評はよく目にすることなので、
こういう語り口の視点問題を、決して無視することはできない。

 

さて一体、神の視点で書いて、満場一致の直木賞ってどういうことだろう?
途中まで読むと、まるで神の視点に思えた語り口は、
インタビュー形式で物語が進行しているからだとわかった。
(でもそれが完璧ではなくって、微妙なところも多々あったけど)

そういった語り口の実験的な試みが評価されたそうだ。

 

また、取り上げた題材である競売に絡むイカサマ手口である
占有屋という社会の闇的な材料がオモロかったことや、
登場してくる色々な問題をはらんだ家族描写に優れていた点なども評価されたと。

 

★「理由」
    宮部みゆき著 新潮文庫 890円+税 H24.4.10. 第41刷

 

だけどオイラにとってこの小説は、なるほど勉強にはなったのだが、
今ひとつ、ふたつ、いやみっつくらいオモロくなかったんだ。

 

直木賞作品というものを、まだあまり読んではいないのだが、
色川武大氏の「離婚」や、奥田英朗氏の「空中ブランコ」の方がずっとオモロイ。
自分がオモロイと思えないものを書いてもしょうがないので、
こういう感性をちょいと大事にしてみたい。

 

あー、オモロかったこと、ひとつあった。
池上冬樹氏の解説(笑)
「リアリズム」と「ファンタジー」について。
今度は宮部氏の「ファンタジー」系小説を、読んでみたい。

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