ある元同僚の死〜1

kfjさん
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この6月,ある講演会場で久しぶりに会った元同僚の知人から,共通の元同僚・I.さんが亡くなったという話を聞かされた。

享年49歳,女性。肺がん。非喫煙者。県内随一の進学高校から某有名国立女子大学を経て公立高校教員,と地方在住者の子女としてはまあ申し分のない経歴。ところが20歳代で甲状腺だか腎臓に病を得て(詳細は不明)ずっと通院を続けた後,肺がんを発症。そのことを同僚などには全く知らさないまま,ごく短い入院後昨秋亡くなった。そうした経緯を,その知人が教えてくれたのである。

I.さんは,一緒に勤めた今から9年前〜6年前,年末年始や盆休みには決まって海外旅行のパックツアーに参加し,片や仕事は自分の担当分のみをきっちりこなすという絵に描いたような公務員風情の仕事ぶりだった。ところが上記の経歴からか自負心は人一倍旺盛で職階や分掌を越えていろいろ差し出がましく口(だけ)を挟む。当時,「いい気なものだ」と少し呆れていたものである。

昨日講演会が終わって帰り道すがら,I.さんについて知人と色々話をし二人が達した共通見解は「弱い心や寂しさを見透かされぬよう,鎧をまとってわが身を守るようなところがあった」。つまり,配偶者を見出せなかった不全感や寂しさを高学歴ゆえのプライドで覆い隠そうとする一連の振る舞いである。

今でもありありと思い出すのは,世間雑話でたまたま孤独死に話が及んだ折「私,将来孤独死して何ヶ月も経って遺体が発見されないか,とても心配」と恐怖の色を表情に浮かべた場面である。「そんなことを今から心配してどうする?! 今,もっと考えるべきことは他に一杯あるだろう」と内心失笑を禁じえなかった。ただ,I.さん本人にしてみればそれが一大懸案であるほど,孤独をかこっていたのだろう。そして実に皮肉なことに,彼女が恐れていた孤独死は図らずも避けられた。

I.さんとは三年間同じ職場に勤めただけという関係に過ぎなかったが,彼女の死は人生のあり方について私にまた色々考えさせる契機となった。
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