[ブリュッセル 23日 ロイター] 23日開催された欧州連合(EU)首脳会議では、国際パートナーや金融市場からの圧力にもかかわらず、危機を克服に向けた決定的な対策をまとめる上で
大きな進展はほとんど見られなかった。 深刻化するユーロ圏ソブリン債務危機への対応に欧州中央銀行(ECB)の資金活用を求める案へのドイツの強い反対を受け、サルコジ仏大統領は、同案を取り下げた。
サルコジ大統領は、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)を銀行に衣替えし、ECBから資金供給を受けて機能を拡大する案はドイツおよびECBと合意できないことから絶望的だとの認識を示した。
大統領はドイツのメルケル首相との共同記者会見で「すべての欧州機関の支持が得られなければ、いずれの解決策も実行可能ではない」と語った。
メルケル首相は、4400億ユーロ(6000億ドル)のEFSFのレバレッジ活用で残る選択肢は2つとなり、いずれもECBの資金は活用しないと指摘した。
ユーロ圏関係者によると、解決策は、EFSFを利用してイタリア・スペインの新発債投資家に部分的な保証を提供する案と、国際通貨基金(IMF)と特別目的会社を創設し、中国などの主要新興国からの資金を取り込む案の組み合わせになる見通し。
唯一の具体的な進展の兆候として首脳陣は、欧州の銀行の資本増強に向け、財務相がまとめた包括的枠組みを支持したことを明らかにした。
ただ、ユーロ圏非加盟国の英国とポーランドが、危機対応策について、ユーロ圏に加盟していない10カ国を含めたEU27加盟国すべてが関与することを要求したため、時間の多くはこれをめぐる手続きに割かれた。これを受け、26日夜に再度EU首脳会議を開くことになった。
欧州首脳は、経済規模のより大きな国への危機波及を防ぐため、ギリシャの債務負担軽減や、欧州の銀行の資本増強、ユーロ圏の経済的ガバナンスの改善、EFSF機能拡充で合意を目指しているが、これらの問題ぞれぞれに困難が伴っている。
メルケル首相は7時間にわたる協議後、記者団に対し、26日に下される決定は危機克服に向けた最終的なステップではないとの認識を示した。
ファンロンパイEU大統領は、ドイツとフランスの見解の相違を認めた上で、「われわれは歩み寄りの精神で取り組んでいる」と語った。
同大統領はまた、EU首脳がイタリアに対し、ギリシャのような債務危機を回避するため経済改革を加速するよう求め、同国のベルルスコーニ首相がこれに合意したと明らかにした。
メルケル首相とサルコジ大統領は、ユーロ圏諸国における信頼性のある具体的な改革措置の緊急性を強調するため、この日最初にベルルスコーニ首相と30分間の個別会談を行った。
欧州の財務相は、21日と22日の準備会合で前進し、ギリシャへの80億ユーロ(110億ドル)の融資実施に加え、ギリシャ国債の民間投資家による損失負担の大幅拡大を目指すことで合意した。
また、欧州の銀行の資本増強に向けた枠組みでも基本合意した。銀行監督当局によると、銀行がソブリン債関連損失に持ちこたえるために必要な資本増強額は1000億ユーロをやや上回る水準とされるが、詳細はまだまとまっていない。
ロイターが入手した、財務相のまとめた文書によると、多くの銀行がインタバンク市場から締め出されるなか、銀行によるホールセール市場での資金調達を支援する保証スキームが検討されている。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガルにEU/IMFの救済を受けることを余儀なくした債券市場の混乱からイタリアとスペインを守るため、ギリシャの債務負担をどのようにして管理可能にするかや、EFSFをどのように拡充するかが主な懸案となっている。