その女性の場合は、大学を卒業すると、ロンボクにある役所に就職をした。
そこでは上司たちが業者から賄賂を受け取っていた。
若くて潔癖な彼女は、仲間の入るのを拒否した。
すると上司たちは、もしかして、彼女から不正行為を告発されるのではないかと心配になった。
ついには、バリアンに彼女を殺すように依頼したのである。
アディさんの叔父さんと同じく、彼女も動けなくなり、身体の不調を両親に訴えた。
しかし、病院へ連れて行って検査をしても、原因はわからなかった。
これは普通の病気ではないと気づいた父親が娘を伴って知りあいのバリアンを訪ねた。
バリアンが祈祷すると、彼女の身体の皮膚からは、色々なものが出てきた。
それは人間の毛髪だったり、椰子の葉だったり、塵のようなものだったりした。
年配のバリアンは彼女を見て、
「私のところに来るのが遅すぎました。私には、この人を助けることはできません」
と父親に宣言した。
誰かが、遠くから魔術をかけている。
こちら側のバリアンが戦っても、どうにも対抗できない場合があるのだそうだ。
実際、その娘さんは、半年ほどで息を引き取った。
汚職をしていた連中が、黒魔術をかけて、真面目な若い部下を殺してしまったわけである。
そんな理不尽なことが、本当にまかり通るのだろうか。
「残念ながら、これは真実です。バリアンのレベルが高いと、殺そうと思った相手に、
すごく遠くからでも魔術をかけられるのです」
「でも、どうやって、そんなことを?」
せき込むように私が尋ねると、アディさんが答えた。
「それは、殺したいと思う相手の持ち物を、まず手に入れるのです」
「たとえば、どんなものですか?」
「そうですね、爪とか髪の毛とか、足跡とかです」
「それで?」
「たとえば、髪の毛だとしたら、それにマントラをかけて、その人の家の玄関の前に埋めます。
それで離れた場所から、エネルギーを送るのです。これから逃れるのは、もう難しいです」
アディさんは、髪の毛を手にするような動作をして、じっとそれを見つめ、
低い声でマントラを唱える真似をしてみせた。
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★「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」
工藤美代子著 メディアファクトリー 1,300円+税 2011.5.20初版 2011.7.30第三刷
バリ島の黒魔術 P.174~176より引用
まるで、夢枕獏氏の陰陽師を読んでいるかのような話だ。
あの平安時代の魔術ととてもよく似た内容だし、
バリアン同士が戦うなんて、もう小説そのもの。
狙われた方は、たまったもんじゃない。
だがしかし、心がけが確かなら、対抗策はあるようだ。
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「アディさん、黒魔術をかけられないようにするには、どうしたらいいの?」
ヴィラの門を出ようとするアディさんの後姿に、私は声を掛けた。心細かったからだ。
「それは神様です。神様がこの世で一番強いのです。
毎日、神様にちゃんとお祈りすれば、必ず守ってくれます」
白い歯を見せてアディさんは、にっこりと笑い、軽く会釈をして去っていった。
********************************(同P.178~179より)
なんだ、オイラは大丈夫だ。
伊勢白山道式でほぼ毎日、神棚と仏壇にお礼参りしているし。
それに神社でお祓いするのは好きだし。
お礼参りの効能は、次の三つというところか。
1 嫌な予感が当たりやすくなる(魔除け)
2 嫌な予感がしても敢えて突っ込んでいくと、やっぱり酷い目にあうのだが、
結果的に、相手方はもっと甚大な被害を被ることになる(特攻隊型で最強な呪詛返し)
→ オイラの場合には、相手方関係者が落雷で二人死んだし、自民党も分裂して終わったし(爆)
3 だんだんと悪さができなくなってくる(善人になっていく)
オイラも少しはマシな人間になってきた可能性があるかもな~。
いやぁ、わっかんねぇけどな~。。(笑)