安部芳裕氏によるTPP勉強会(農業編)続き。
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日本の農産物の輸入先をみると(2008年)、
トウモロコシはアメリカから98.7%、
大豆はアメリカから72.3%、
小麦はアメリカから60.6%、
牛肉はオーストラリアからが76.3%でアメリカからは14.1%となっています。
ほとんどアメリカ頼りですね。
もうすでにこれだけ輸入しているのですから、
TPPに入ったからといって極端に輸入が増えるわけではないと思います。
ただ外国に食糧を依存しているというのは非常に危険なことです。
これから世界は食糧危機に向かうと予想されています。
食料輸出国自体が自国への食糧を供給できなくなれば、当然、輸出を止めてしまう可能性があります。
また、アメリカにはテキサス州を中心に8州にわたる世界最大の地下水層があるのですが、
その地下水が渇枯し始めており、十数年以内に当該地域の農業の4割が
放棄されるであろうと予測されています。
野菜などは中国からの輸入が多いのですが、
やはり中国も工業化と環境破壊による水不足で万単位の村が農業を放棄し、
年間五万回もの暴動が起きている状況です。
そんな状況の中、日本の食料自給率は下がり続けています。
カロリーベースでは約40%、金額ベースで70%あるのだから
実は日本の自給率はそれほど低くないという議論もありますが、
食糧の値段が高ければ金額ベースの自給率も高くなるわけですから、
あまり金額ベースの自給率には意味がないと思います。
やはり生命を維持するにはカロリーベースが必要なので、
カロリーベースを重視する必要があると思います。
どこの国でも食糧自給というのは非常に重視していて、
アメリカやフランスなどでは軽く100%を超えています。
食糧というのは単なるビジネスではなくて、国家安全保障の要なのです。
日本人は安全保障というと軍事のことしか思い浮かばないのですが、
食糧、エネルギー、軍事、この3つが国家安全保障の最重要事項なのです。
この3つを日本は全部アメリカに依存してしまっています。
これでは外交で日本の主張を通すことはできません。
日本には「農業を保護しすぎだ」と言う人が多いのですが、
日本の農家が政府からもらっているお金の割合は、収入の15.6%しかありません。
ヨーロッパの農家の収入は、80~90%が政府から補助金によって成り立っています。
保護主義を目の敵にするアメリカですら、24.6%が政府からの補助金です。
農業というものは、市場経済に委ねればそれでよいというものではありません。
国民の生命を守るために食糧を確保するという観点から、
補助金を出してでも食糧を自給することが重要なのです。
だから決して日本は農業を過保護にしているわけではありません。
逆に、保護してこなかったから自給率が落ちているのではないでしょうか。
そのため日本の農業は衰退していき、農業就業者は今や5%を切ってしまっています。
また、農業も林業も非常に収益性が低いものなので、
農家一人当たりの時給は250~300円という状態です。
こんな所得では、若い人は誰も農業に就きたいとは思わないでしょう。
実際、農業人口は1980年の697万人から2008年には299万人と激減しています。
その農業就業者の6割が65才以上で、平均年齢が65.8才。
この人たちはもうそんなに長く農業を続けられないでしょう。
後継者がいませんから、5年後、10年後、日本の農業はどうなるのでしょう?
更に日本は減反政策をやっていますから、耕作放棄地がどんどん増えて、
埼玉県と同じくらいの面積が耕作放棄地になっています。
農業というのは食糧生産だけではなく、環境を保全するという意味でも非常に重要です。
水田が巨大な貯水槽の役割を果たして土砂の流出を防いでくれているのです。
日本は世界の平均降雨量の2倍もある非情に雨の多い国です。
急峻な河川をもつ日本では、水田あるいは森林がないと常に洪水が起きてしまい、
国土が物理的に保てません。
水資源や環境、生態系を保全するという多面的機能を忘れて商業的利益の観点からのみ評価し、
第一次産業を切り捨てるのは愚の骨頂です。
日本学術会議によれば、田畑の公益的機能は金額に換算すると8.2兆円。
中山間地域の森林の公益的機能は年間70兆円。
これらが失われれれば毎年80兆円の公共事業をしても、
物理的に国土の維持が難しいと試算しています。
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逆からみると、国内農業というものにこそ、
実はビジネスチャンスが潜んでいるといえそうだ。
あ~御免ゴメン、安部さん。
ビジネスチャンスなんて言っちゃった(笑)
あるいは儲けるのが難しいビジネスなのだとして、
公務にする方法もあるのかも。