いよいよ証券の軽減税制が風前の灯になってきた。民主党の税制改正プロジェクトチーム(PT)は26日午前、総会を開き、2011年末までの時限措置となっている証券軽減税制については、「損益通算制度の導入を前提に、上場株式等にかかる税率は本則税率化を検討すべき。その際は一定額以下の取引を非課税とする日本版ISA(少額投資非課税制度)を大幅に拡充し、証券市場活性化を図るべき」と提言した。
証券軽減税制は、上場株式の配当や譲渡益の税率を本則の20%から10%に引き下げていたもの。2010年度の税制大綱では、12年1月から、本則に戻すことになっていた。
日本版ISAとは、証券会社や銀行などの金融機関で、専用の非課税口座を開設すると、上場会社の株式や投資信託の売却益や配当、分配金が10年間非課税となる制度。この非課税口座を開設できるのは2012年から2014年までの3年間で、各年に1人1口座(元本100万円まで)ずつ。つまり、3年間で合計3口座、最大300万円までの元本について、非課税になるというわけだ。この日本版ISAは、個人投資家に対する懐柔策として、証券軽減税制を本則に戻すこととセットになっているもの。
ただ、年間100万円以上を超えるなど、比較的投資規模の大きい個人にとっては課税強化になる公算が大きい。また、投資したものを売却してしまうと、再投資しても非課税にはならないという長期投資だけが有利という半端な制度。さらに、そもそも非課税口座を開設するためには、事前に税務署で、確認書などの交付を受ける必要があると予想されるなど、煩雑な手続きが懸念される。株式を売買、しかも年100万円までという少額投資の個人投資家がいちいち税務署で手続きするのも、現実的ではない話だ。
「貯蓄から投資へ」という国策を掲げる一方で、投資家の嫌がることをする。健全な証券市場育成には、それでも軽減税制の延長を要望という個人投資家の声を耳に傾けてほしい。(阿部秀司)
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