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アイ・エス・ビーのニュース
■今後の見通し
(2) 重点戦略
中期経営計画の中で重点戦略として掲げていたのが、1)プロダクト事業の展開と拡大、2)高付加価値業務へのシフト、3)コスト競争力強化、4)グループ経営戦略強化、の4点となり、進捗状況は以下のとおりとなっている。
1) プロダクト事業の展開と拡大
アイ・エス・ビー<9702>がプロダクト事業の展開に注力する目的は、現在の中核であるソフトウェアの受託開発型事業とは別に、顧客層や需要構造、収益モデルが異なる事業を育成して収益構造の複層化を図り、収益基盤の安定化と成長力を高めることにある。このため、同社は売上高の1%を研究開発費としてプロダクト事業推進のための投資に充当しており、プロダクト事業を受託開発型事業と並ぶ収益柱に育成していく方針となっている。
プロダクト事業の中心となるのはアートが展開するセキュリティシステム事業で、2020年12月期の売上高は前期比11.0%増の4,000百万円を計画しており、第2四半期までは順調に進捗している。アートは入退室管理システムの国内市場シェアで約26%とトップクラスであり、2017年に子会社化して以降、安定した収益を稼ぎ出し連結業績に貢献している。現在注力しているのはクラウド型のアクセスコントロールプラットフォーム「ALLIGATE(アリゲイト)」で、IDカードだけでなくスマートフォンを使って部屋の入退室や駐車場のゲート入退場、コインロッカーの鍵の解・施錠が行えるサービスとなる。2017年11月より提供を開始して以降、他社システムとの連携※も進めながら利便性の向上を図っており、売上高は月額数百万円規模と着実に増加している。
※2020年に入ってからの取り組みとしては、3月に(株)ヒューマンテクノロジーズが提供する勤怠管理システム「KING OF TIME」、(株)ニッポンダイナミックシステムズが提供する就業管理システム「e-就業」とそれぞれ連携し、入室・退室記録と出勤・退勤記録の同期を実現している。また、「ALLIGATE」についても、テレワーク対応機能として、リモートタップ機能(テレワーク環境で勤務開始・終了、休憩時間の記録が可能)を新たに追加した。「ALLIGATE」はリカーリングモデルで直近は月額2千万円強、保守サービスを含めると4千万円弱程度の規模になっていると見られ、当面の目標として5千万円規模まで積み上げていくことを目標としている。
そのほかの自社プロダクトでは、モバイルデバイスの管理ツール(MDM)となる「VECTANT SDM」の契約ID数が12.5万件まで増加しており、収益増に貢献している。企業におけるスマートフォンやタブレット端末の導入が進むなか、それらを安全に管理するMDMツールの市場規模は年々拡大しており、競争も激化している。このため、差別化戦略として付加サービスの拡充に注力しており、2020年6月にはAndroid版タブレット端末を利用したデジタルサイネージサービスの提供を開始したほか、GoogleのEMM認定※1を取得し、Android Enterprise※2版のサービスをリリースし、高度なモバイル端末管理サービスの提供を実現している。
※1 Googleの提唱する仕様に準拠したMDM製品が、Googleの認定に合格することで取得できる認定制度。
※2 Androidを安全・快適にビジネスに利用するために、Googleが提供している仕組み。
一方、医用画像関連システムの「L-Share」については売上拡大を目指していたが、コロナ禍のため商談がストップした状態となっている。そのほか、「Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)」※製品やM2Mクラウドプラットフォームなど自社プロダクトとして合計6つの事業の育成に取り組んできたが、今後は各々のプロダクトについて事業継続の可否を含めた検討を進めていくものと思われる。
※無線通信規格の1つで、日本では特定小電力無線と呼ばれる920MHz帯で使用されている。2.4GHzや5GHz帯を使用するWi-Fiと比べると、通信速度は遅いものの、通信距離が長く、通信の安定性が優れること、また、低消費電力であることが長所となっている。代表的な用途として、スマート電力メーターに利用されている。
2) 高付加価値業務へのシフト
ソフトウェア受託開発事業は、二次請け、三次請けが多く、利益率の低い事業構造であったが、同社はプライム業務(直接受注)の拡大、提案型業務の拡大、成長性の高い分野へのシフトを図ることで、収益性の向上に取り組んできた。こうした取り組みの結果、2020年12月期第2四半期累計の受託開発型事業における売上総利益率は22.8%と、3期前の16.1%から大きく上昇している。
2020年12月期第2四半期累計のプライム業務売上高は、コロナ禍のため前年同期比減収となったものの、業務システム分野におけるクラウド構築やWeb開発、運用・保守までをワンストップソリューションとして提供できる強みを生かして新規案件の受注獲得が進んでおり、通期では前期比7.7%増の600百万円と期初計画を達成する見通しだ。一方、成長分野として取り組んできた車載市場においては、コロナ禍による主要顧客の収益悪化により投資意欲がやや冷え込んでおり、第3四半期以降の売上高が弱含む可能性がある。車載市場向けの通期売上高は前期比15.7%増の1,700百万円を計画していたが、下振れする可能性が高い。ただ5Gの普及拡大によって、自動車分野も同社が得意とする高速無線通信技術に対応した様々な機能や機器の開発が求められるようになると予想され、中期的には成長性の高い市場であるとの見方に変わりはない。
3) コスト競争力強化
コスト競争力強化の取り組みとして、グループ内でのオフショア/ニアショア戦略を推進してきた。オフショア拠点として、2018年よりベトナム子会社のISB VIETNUM COMPANY (IVC)を本格的に活用。IVC売上高の80%以上をグループ内から発注する方針へと切り替えた。IVCの2020年12月期業績は人件費を約1割引き上げることや、オフショア比率を前期の91.3%から87.5%と保守的に想定し、減収減益で計画していたが、第2四半期累計でのオフショア比率は95.6%と過去最高水準に達しており、業績も増収効果で人件費増を吸収して増益となっている。通期のオフショア比率は92.2%を前提としている。なお、人員規模については120名で前期とほぼ変わらず、事務所の収容能力も限界になっていることから、当面は同水準を維持していく方針となっている。
一方、ニアショア拠点として、東北エリアで(株)アイエスビー東北、北海道で(株)スリーエスを活用しており、2社合わせた人員は約130名規模となっている。これら子会社でのグループ内売上比率は2017年12月期の18.4%から2020年12月期第2四半期累計では23.8%まで上昇し、通期では25.0%の水準を見込んでいる。また、2021年12月期以降についても、さらにその水準を引き上げていく方針となっている。2019年に新たに子会社化したコンピュータハウスの札幌拠点や福岡拠点なども今後活用していく方針で、特に、福岡では採用活動も強化していくことにしている。
4) グループ経営戦略強化
グループ子会社の経営リソースを効果的に活用するため、各子会社の特性を生かして協業/分業を進めてきたことが、2018年以降の業績躍進を支える原動力の1つとなっている。2019年1月に子会社化したテイクスやコンピュータハウスについても同様で、グループ内人材の活用や商流改善によって、それぞれ売上高を拡大している。特に、テイクスの2020年12月期第2四半期累計の売上高は前年同期比19.6%増と大幅増となっており、グループ連携による効果が最大限発揮されていると言える。テイクスの高成長については、協力パートナーを月100名規模で活用し始めたことも一因となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(2) 重点戦略
中期経営計画の中で重点戦略として掲げていたのが、1)プロダクト事業の展開と拡大、2)高付加価値業務へのシフト、3)コスト競争力強化、4)グループ経営戦略強化、の4点となり、進捗状況は以下のとおりとなっている。
1) プロダクト事業の展開と拡大
アイ・エス・ビー<9702>がプロダクト事業の展開に注力する目的は、現在の中核であるソフトウェアの受託開発型事業とは別に、顧客層や需要構造、収益モデルが異なる事業を育成して収益構造の複層化を図り、収益基盤の安定化と成長力を高めることにある。このため、同社は売上高の1%を研究開発費としてプロダクト事業推進のための投資に充当しており、プロダクト事業を受託開発型事業と並ぶ収益柱に育成していく方針となっている。
プロダクト事業の中心となるのはアートが展開するセキュリティシステム事業で、2020年12月期の売上高は前期比11.0%増の4,000百万円を計画しており、第2四半期までは順調に進捗している。アートは入退室管理システムの国内市場シェアで約26%とトップクラスであり、2017年に子会社化して以降、安定した収益を稼ぎ出し連結業績に貢献している。現在注力しているのはクラウド型のアクセスコントロールプラットフォーム「ALLIGATE(アリゲイト)」で、IDカードだけでなくスマートフォンを使って部屋の入退室や駐車場のゲート入退場、コインロッカーの鍵の解・施錠が行えるサービスとなる。2017年11月より提供を開始して以降、他社システムとの連携※も進めながら利便性の向上を図っており、売上高は月額数百万円規模と着実に増加している。
※2020年に入ってからの取り組みとしては、3月に(株)ヒューマンテクノロジーズが提供する勤怠管理システム「KING OF TIME」、(株)ニッポンダイナミックシステムズが提供する就業管理システム「e-就業」とそれぞれ連携し、入室・退室記録と出勤・退勤記録の同期を実現している。また、「ALLIGATE」についても、テレワーク対応機能として、リモートタップ機能(テレワーク環境で勤務開始・終了、休憩時間の記録が可能)を新たに追加した。「ALLIGATE」はリカーリングモデルで直近は月額2千万円強、保守サービスを含めると4千万円弱程度の規模になっていると見られ、当面の目標として5千万円規模まで積み上げていくことを目標としている。
そのほかの自社プロダクトでは、モバイルデバイスの管理ツール(MDM)となる「VECTANT SDM」の契約ID数が12.5万件まで増加しており、収益増に貢献している。企業におけるスマートフォンやタブレット端末の導入が進むなか、それらを安全に管理するMDMツールの市場規模は年々拡大しており、競争も激化している。このため、差別化戦略として付加サービスの拡充に注力しており、2020年6月にはAndroid版タブレット端末を利用したデジタルサイネージサービスの提供を開始したほか、Google
※1 Googleの提唱する仕様に準拠したMDM製品が、Googleの認定に合格することで取得できる認定制度。
※2 Androidを安全・快適にビジネスに利用するために、Googleが提供している仕組み。
一方、医用画像関連システムの「L-Share」については売上拡大を目指していたが、コロナ禍のため商談がストップした状態となっている。そのほか、「Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)」※製品やM2Mクラウドプラットフォームなど自社プロダクトとして合計6つの事業の育成に取り組んできたが、今後は各々のプロダクトについて事業継続の可否を含めた検討を進めていくものと思われる。
※無線通信規格の1つで、日本では特定小電力無線と呼ばれる920MHz帯で使用されている。2.4GHzや5GHz帯を使用するWi-Fiと比べると、通信速度は遅いものの、通信距離が長く、通信の安定性が優れること、また、低消費電力であることが長所となっている。代表的な用途として、スマート電力メーターに利用されている。
2) 高付加価値業務へのシフト
ソフトウェア受託開発事業は、二次請け、三次請けが多く、利益率の低い事業構造であったが、同社はプライム業務(直接受注)の拡大、提案型業務の拡大、成長性の高い分野へのシフトを図ることで、収益性の向上に取り組んできた。こうした取り組みの結果、2020年12月期第2四半期累計の受託開発型事業における売上総利益率は22.8%と、3期前の16.1%から大きく上昇している。
2020年12月期第2四半期累計のプライム業務売上高は、コロナ禍のため前年同期比減収となったものの、業務システム分野におけるクラウド構築やWeb開発、運用・保守までをワンストップソリューションとして提供できる強みを生かして新規案件の受注獲得が進んでおり、通期では前期比7.7%増の600百万円と期初計画を達成する見通しだ。一方、成長分野として取り組んできた車載市場においては、コロナ禍による主要顧客の収益悪化により投資意欲がやや冷え込んでおり、第3四半期以降の売上高が弱含む可能性がある。車載市場向けの通期売上高は前期比15.7%増の1,700百万円を計画していたが、下振れする可能性が高い。ただ5Gの普及拡大によって、自動車分野も同社が得意とする高速無線通信技術に対応した様々な機能や機器の開発が求められるようになると予想され、中期的には成長性の高い市場であるとの見方に変わりはない。
3) コスト競争力強化
コスト競争力強化の取り組みとして、グループ内でのオフショア/ニアショア戦略を推進してきた。オフショア拠点として、2018年よりベトナム子会社のISB VIETNUM COMPANY (IVC)を本格的に活用。IVC売上高の80%以上をグループ内から発注する方針へと切り替えた。IVCの2020年12月期業績は人件費を約1割引き上げることや、オフショア比率を前期の91.3%から87.5%と保守的に想定し、減収減益で計画していたが、第2四半期累計でのオフショア比率は95.6%と過去最高水準に達しており、業績も増収効果で人件費増を吸収して増益となっている。通期のオフショア比率は92.2%を前提としている。なお、人員規模については120名で前期とほぼ変わらず、事務所の収容能力も限界になっていることから、当面は同水準を維持していく方針となっている。
一方、ニアショア拠点として、東北エリアで(株)アイエスビー東北、北海道で(株)スリーエスを活用しており、2社合わせた人員は約130名規模となっている。これら子会社でのグループ内売上比率は2017年12月期の18.4%から2020年12月期第2四半期累計では23.8%まで上昇し、通期では25.0%の水準を見込んでいる。また、2021年12月期以降についても、さらにその水準を引き上げていく方針となっている。2019年に新たに子会社化したコンピュータハウスの札幌拠点や福岡拠点なども今後活用していく方針で、特に、福岡では採用活動も強化していくことにしている。
4) グループ経営戦略強化
グループ子会社の経営リソースを効果的に活用するため、各子会社の特性を生かして協業/分業を進めてきたことが、2018年以降の業績躍進を支える原動力の1つとなっている。2019年1月に子会社化したテイクスやコンピュータハウスについても同様で、グループ内人材の活用や商流改善によって、それぞれ売上高を拡大している。特に、テイクスの2020年12月期第2四半期累計の売上高は前年同期比19.6%増と大幅増となっており、グループ連携による効果が最大限発揮されていると言える。テイクスの高成長については、協力パートナーを月100名規模で活用し始めたことも一因となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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