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―注目材料が目白押し、西の都のビッグイベントで失われた30年を取り戻せ―
大阪に強烈な追い風が吹いている。2025年開催予定の「大阪・関西万博」、30年の開業を目指すと伝わる「大阪IR(統合型リゾート)」、そしてプロ野球・阪神タイガースの快進撃が大阪だけではなく関西全体に熱い魂を吹き込んでいる。燃え上がる「大阪・関西」関連株を点検した。
●さあ、トラ絶好調で好景気へGO
大阪・関西万博、そしてカジノを含む大阪IRと言えば、まさに株式市場の大きなテーマの一つで、さすがに食傷気味なところもあるが、ここにきては阪神タイガースのセ・リーグ単独首位という新たな“大材料”が飛び出してきた。少々気が早いがリーグ優勝、そしてまさかの1985年以来となる日本一も期待されるなか、関連銘柄はいまどうなっているのだろうか?
85年といえば、まさに日本経済の分岐点となった「プラザ合意」の年。日本をやり玉にあげたともいえるこの合意をきっかけに、急激な円高進行となり日本経済は大打撃を受けることになった。政府は景気対策として公定歩合の引き下げを繰り返し、これにより日本経済は急速に上向く。そして、史上空前のバブル景気に突入することになる。いわば85年は「バブルの入り口に立った年」ともいえ、こうしたことから阪神優勝は「好景気の象徴」とみる市場関係者は昔からいる。アノマリーというよりも希望的観測とも言えそうだが、“失われた30年”を取り戻すべく、タイガースファン以外には申し訳ないが、六甲おろしを高らかに歌いながら「好景気へGO」というのも悪くはない。
●やっぱり阪急阪神、H2Oリテイ
まずは、タイガースのオーナー企業を傘下に持つ阪急阪神ホールディングス <9042> [東証P]だが、23年3月期の連結営業利益は前の期比2.3倍となる893億5000万円に拡大したものの、24年3月期は前期比1.8%減の877億円とほぼ横ばいの見通し。前期の大幅増の反動といったところだが、脱コロナを背景に人流が急速に回復するなか、同社が展開する都市交通をはじめ、不動産、エンターテインメントなどのさまざまな事業に陰りなし。更にタイガースの快進撃が続けば、業績への追い風にもなりそうだ。株価は、22日に4580円まで買われ年初来高値を更新。現在は上昇一服も、まだまだ目が離せない場面が続く。また、阪急百貨店と阪神百貨店が統合して設立されたエイチ・ツー・オー リテイリング <8242> [東証P]は、仮にリーグ優勝、更には日本一となれば優勝セールで大いに盛り上がる可能性もある。株価は、インバウンド需要の復活を追い風に4月25日には1652円まで買われ年初来高値を更新。その後は軟調展開が続くが1400円台半ばでは押し目買いニーズも。
●上新電は露出度アップ、タイガポリにも妙味
同チームのスポンサー企業で家電量販店を展開する上新電機 <8173> [東証P]も関連株の代表格の一つだ。23年3月期の連結営業利益は前の期比6.5%減の83億1100万円になったが、続く24年3月期は前期比8.3%増の90億円に伸びる見通し。同社は、2002年シーズンからユニフォーム広告を掲出。今シーズンからは、昨年までの右袖、キャップ、ヘルメットに加え、左胸にも掲出し露出度を増している。株価は、年初来安値圏で下値模索の展開が続くが、タイガースがこのまま勝ち続ければ、思惑高を招く可能性もある。
また、ホース、ゴムシート、自動車用部品の大手・タイガースポリマー <4231> [東証S]も、なぜか関連銘柄として名を連ねる。「タイガース」という名称以外は特段関係もないのだが、常に名前が挙がる不思議な存在。とは言え、そもそも関連銘柄などというものは、こじつけに等しいものも少なくない。さて、このタイガポリだが、23年3月期の連結営業利益は前の期比14.8%減の10億9000万円だったものの、続く24年3月期の同利益は前期比2倍となる22億円を計画している。株価は、タイガースの如く上昇街道を突き進み、22日には561円まで買われ年初来高値を更新。現在は高値圏でもみあう展開となっている。
●いよいよ動き出す大阪IR
一時は暗礁に乗り上げた カジノを含むIR事業も進展している。政府が4月、夢洲(ゆめしま)でのカジノを含むIR誘致に関して大阪府と大阪市の整備計画を認定したことで、実現に向けて一気に進み始めた。開業時期については、米MGMリゾーツ・インターナショナル
MGMとの共同投資で事業会社の大阪IRを設立したオリックス <8591> [東証P]が、いわゆる「カジノ関連」株の中核になる。一昨年の同社への取材では、大阪を選択した理由として「発祥の地であり、不動産のネットワークもある」(広報)ことを挙げていただけに、同地域でのさまざまな展開にも期待が募りそうだ。10日には24年3月期の業績予想を発表。事業投資・コンセッション事業の回復などを想定し、最終利益で前期比20.8%増の3300億円を見込む。
●カジノで日金銭、グローリー
関連株としては、カジノが話題となるなか貨幣処理機大手の日本金銭機械 <6418> [東証P]やグローリー <6457> [東証P]に注目が集まる。日金銭が大阪市に、グローリーは兵庫県に本社を置くだけに、まさに地元での本領発揮に期待が高まりそう。日金銭の24年3月期は営業利益段階で前期比2.4倍となる15億円を計画。また、グローリーの24年3月期は同利益で350億円を見込み19期ぶりの過去最高益を更新する見通しだ。また、IR事業はどうしてもカジノに関心が集まるが、国際会議場などMICE(マイス)施設の設置も目指すことを忘れてはならない。リオープン(経済再開)が急速に進むなか、国際会議や国際見本市の再開が進むと見られ、このなか翻訳センター <2483> [東証S]は大阪市に本社を置き幅広い専門分野で翻訳事業を手掛けるだけに活躍期待も高まる。同社の業績は、24年3月期の連結営業利益は、前期比7.6%増の10億円を見込み2期連続で過去最高益を更新する見通しだ。
●ドリームアイランド関連は花開く
25年開催予定の大阪・関西万博は、同年4月13日の開幕まで2年を切った。前述の大阪IR事業及び万博の舞台は、いずれもドリームアイランド「大阪・夢洲」。万博の半年にも及ぶ会期は、インバウンド関連をはじめ物流、不動産などさまざまな角度から関西経済を刺激することになる。
こうしたなか投資家の視線が向かうのが、夢洲に物流用地を取得している上組 <9364> [東証P]や山九 <9065> [東証P]に加え、大阪地盤の杉村倉庫 <9307> [東証S]や櫻島埠頭 <9353> [東証S]だ。このなか杉村倉の23年3月期の連結営業利益は前の期比10.5%減の10億5200万円になったが、24年3月期は前期比13.1%増の11億9000万円になる見込み。杉村倉や桜島埠の株価は、3月終盤辺りから上昇基調を強めていたが、4月14日に「政府が大阪IR整備計画を認定」したと伝わり、これを思惑材料に急騰。その後、急速に値を崩し“往って来い”に近い状況にある。ただ、夢洲での万博、そしてIR事業はこれから本格化するだけにドリームアイランドを巡る関連株には折に触れ物色の矛先が向かいそうだ。
●三精テクノロには思惑いっぱい
また、大阪・関西万博関連として投資家の視線が熱いのが、舞台装置と遊戯機械大手の三精テクノロジーズ <6357> [東証S]。同社は、1970年の大阪万博はもちろん、モントリオール万博や、つくば博、愛・地球博における実績も豊富で、地元大阪企業という点で期待感が先行する。11日取引終了後に発表した同社の24年3月期の連結営業利益は、前期比44.5%増の29億円と大幅増益になる見通し。遊戯機械分野は国内外で受注環境が回復、舞台機構分野でもコンサートやイベント開催が本格的に再開され、仮設舞台装置の需要が盛り上がってきているという。加えて、年間配当計画を前期比2円50銭増配の40円としたことも功を奏し、株価は翌日にはストップ高の1096円に買われた。18日には1234円まで上値を伸ばし年初来高値を更新した後も、高値圏で頑強展開となっている。
●大林組、奥村組、エスリードにも恩恵
大阪・関西万博の開催や大阪IRは、こうした事業に直接関連はしなくとも同地域の経済活動を刺激し企業業績に大きく影響を与えることが予想される。都市開発では、関西発祥で大手ゼネコンの一角・大林組 <1802> [東証P]、関西地盤の奥村組 <1833> [東証P]などにも商機が増えそうだ。奥村組の24年3月期は、資材価格の動向が不透明としながらも建設投資は堅調さを維持するとみており、営業利益段階で前期比15.6%増の137億円を計画している。株価は新値街道をひた走るが、4000円大台奪回から一段高期待も高まる局面だ。更に、大阪を地盤とする森トラスト系のマンションディベロッパーのエスリード <8877> [東証P]にも注目したい。24年3月期は、営業利益で前期比23.4%増の117億円を計画し3期連続の最高益更新となる見通しだ。会社側でも決算説明資料のなかで、大阪・関西万博、その後の大阪IRによる関西経済の発展を背景に、更なる成長を目指すと意気込んでいる。
そのほかでは、大阪京都間が主力の私鉄・京阪ホールディングス <9045> [東証P]、西の名門と称されるロイヤルホテル <9713> [東証S]、関西地盤で建機レンタル大手のニシオホールディングス <9699> [東証P]などにも目を配っておきたい。
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