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―備えあれば憂いなし、電力、蓄電池、暖房機器、カー用品など注目―
冬が近づいている。いったんは新型コロナウイルスの感染が収束をみせている日本列島だが、“第6波”への懸念が拭えないなか冬を迎えることになる。新型コロナの感染にはもちろん警戒が必要だが、もうひとつ注意を払っておきたいのが強烈な寒波の襲来だ。現在のところ特異的な気象の変化は伝えられていないが、今後 大雪など異常気象を招くラニーニャ現象発生の可能性も高まってきており警戒が必要だ。昨年末の大雪に加え、年初に流入した凄まじい寒波による電力需給のひっ迫は社会生活にも大きな影響を及ぼしたことは記憶に新しい。備えあれば憂いなし、冬の到来を控え、「厳冬」「大雪」関連株を点検した。
●ラニーニャ現象時の特徴に近づく
昨年12月半ばには、新潟・北陸を中心とした記録的な大雪により関越道で多くの自動車が立ち往生し、自衛隊が災害派遣要請を受け出動。年が明けても寒さは衰えることなく、1月上旬の平均気温は北日本で36年ぶり、西日本で35年ぶりの低温に。全国的に厳しい寒さが続いたことで、暖房のための電力需要が大幅に増加し、電気事業連合会では節電への協力を呼び掛ける異例の事態にまでなった。気象庁では、この大雪と低温の要因について「西シベリアのブロッキング高気圧や熱帯のラニーニャ現象が影響」したと分析した。
気象庁が10月11日に発表した「エルニーニョ監視速報」によると、この時点では“平常の状態”としているものの、今年も「ラニーニャ現象時の特徴に近づきつつある」と指摘。更に「秋から冬にかけて平常の状態が続く可能性もある(40%)が、ラニーニャ現象が発生する可能性の方がより高い(60%)」としている。
●電力需給「過去10年間で最も厳しい」
株式市場においては、厳冬や急激な降雪に伴い関連銘柄に投資家の視線が一気に集まりやすい。特に、首都圏に大雪が降り社会生活に大きな混乱を及ぼした場合は、除雪に関わる感応度の高い銘柄が急動意するなど目を見張るものがある。更に、年初の異常な寒波により発生した電力需給のひっ迫は、NAS電池を手がける日本ガイシ <5333> など「蓄電池」をはじめとするさまざまな銘柄を、厳冬関連の一角として新たに戦列に加わらせた。ただし、関連株の特徴としては、気候の変動により急動意した後は、急速に沈静化する傾向があることを念頭に置く必要がある。また、総じて思惑買いを誘う銘柄も多く、値動きの荒さに警戒しつつ俊敏に動くことが肝要だ。
経済産業省は先月27日、2021年度冬季の電力需給について「過去10年間で最も厳しい」と公表した。10年に1度の厳しい寒さを想定した場合でも、全エリアで安定供給に必要な予備率3%を確保できるとしているものの、「東京エリアは1月に3.2%、2月に3.1%と3%ギリギリ」と表現するなど危機感をあらわにしている。背景には、世界がカーボンニュートラルを目指し脱炭素社会に突き進むなか、発電量が天候に左右される太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーが増加する一方、火力発電設備が減少傾向にあることが大きな要因として挙げられる。
●蓄電池でガイシ、ニチコン、活躍期待膨らむ東光高岳
寒波により電力需給がひっ迫し、厳冬関連の一角として急浮上したのが電力需要の少ない時にエネルギーを蓄積し、ひっ迫時に放電することで需給をコントロールできる蓄電池に絡む銘柄だった。電力系統用蓄電池では、前述のガイシをはじめレドックスフロー電池の住友電気工業 <5802> 、住宅用ではニチコン <6996> 、東電系で送配電機器が主力の東光高岳 <6617> などが注目を集めた。東光高岳は、スマートグリッドをはじめとする次世代電力ネットワークへの取り組みにも注力しているが、再生可能エネを含めた分散型エネルギー関連設備の更なる普及や、電気自動車(EV)向け急速充電器需要が立ち上がるなか、この分野においても活躍期待が膨らんでいる。
また、1月には電力需給のひっ迫懸念を背景に、東京電力ホールディングス <9501> 、関西電力 <9503> 、中部電力 <9502> 、Jパワー <9513> など電力株が軒並み買われている。日本卸電力取引所(JEPX)で取り引きされるスポット価格が高騰したことで、電力株全般に思惑的な買いが入った格好だが、大手電力がこうした事例で買われることはまれなことだけに、当時いかに需給がひっ迫していたかがうかがわれる。一方でスポット価格の高騰は、JEPXからの電力調達に頼る新電力事業者には逆風となり、関連銘柄のグリムス <3150> やイーレックス <9517> などが売られたことは気に掛けておきたい。
●備えよしのダイニチ工業、山善
昨年末からの急激な気温の低下は、暖房需要にも火をつけた。石油ファンヒーター大手のダイニチ工業 <5951> は、一躍スポットライトを浴びることになった。加えて、同社への注目を高めたのが、新型コロナ感染症の予防対策として加湿器の販売が絶好調に推移したことだ。先月7日には、「9月の加湿器生産数を前年同月比120%に引き上げ、今シーズンの販売に備える」と発表。新型コロナ感染症対策で需要が高まっていた昨年の同時期を上回る生産で、今シーズンの需要に対応する構えだ。冬を目の前にして、暖房機+加湿器で攻勢に出る同社からは今年も目が離せない。同社は、22年3月期通期の単独営業利益について、前期比9.5%増の22億円を計画している。
機械・工具専門商社の大手で、家庭用暖房機器にも注力する山善 <8051> にも目を配っておきたい。セラミックヒーター、電気ストーブ、こたつ、電気毛布、ホットカーペットと多彩なラインアップが魅力だ。また同社では、使用場所やニーズに合わせたさまざまな加湿器を提供してきたが、10月には大容量のタンクで広い空間も余裕で加湿できる「スチームファン式加湿器 KSF-N150」を発売。木造では約25畳、プレハブ洋室では約42畳の広さを加湿でき、リビングだけではなくオフィスでも十分に使用できるという。
●大雪感応度でタカキタ、やまびこ
“大雪感応度”の高さでは、小型除雪作業機を扱うタカキタ <6325> 、ショベル・スコップ大手の浅香工業 <5962> [東証2]が挙げられる。タカキタは、10月27日に発表した22年3月期第2四半期累計(4-9月)決算で、営業利益は前年同期比2.4倍の3億7300万円に急拡大し、通期計画の4億円に対する進捗率は93%に達している。会社側では通期見通しを据え置いているが、上振れ期待も高まりそうだ。一方、浅香工は商い薄だけに、思惑買いで急動意した場合においても注意が必要といえそうだ。そのほか、農林業機械大手のやまびこ <6250> 、北海道地盤の商社で産機、燃料、設備などを扱うナラサキ産業 <8085> [東証2]なども急騰習性がある。
●カー用品関連にも注視
極端な降雪は カー用品の冬もの需要にも大きなニーズを掘り起こし、株価を刺激する可能性が高い。オートバックスセブン <9832> でも、昨年12月中旬からの冷え込みに加え、日本海側で広範囲な降雪があったことで、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンが伸長、クロスレンチやジャッキなどタイヤ交換に必要な工具類や雪用ワイパーも好調となった。今夏は、感染急拡大による外出や帰省の自粛の影響を受け、ロングドライブを控える傾向が続いたことが業績の重荷になったが、緊急事態宣言の解除や新型コロナ感染者が減少するなか、早晩復活の足音も聞こえてきそうだ。そのほかでは、イエローハット <9882> 、タイヤ専門店のフジ・コーポレーション <7605> 、「オートバックス」と「業務スーパー」を2本柱にフランチャイズ展開するG-7ホールディングス <7508> にも注視しておきたい。
●ワークマンは究極のエコ防寒「ポンプ」ウェア
また、ワークマン <7564> [JQ]も厳冬関連の一角として注目してみたい。同社は、作業服・関連用品の専門チェーン大手だが、アウトドア、スポーツの専門店「ワークマンプラス」や「#ワークマン女子」などでも積極展開をみせている。また、動物/植物由来のダウンや中綿を全く使わずに空気で保温する究極のエコ防寒「ポンプ」ウェアに新製品を投入するなど、新機軸でも攻勢をかける点も見逃せない。同社はきょう取引終了後、22年3月期上期(4-9月)の決算を発表した。営業総収入は552億9500万円(前年同期487億1300万円)、営業利益は126億400万円(同110億7300万円)となり、会計基準の変更により単純比較はできないものの実質増収増益での着地となった。プライベートブランドの強化・拡充をはじめ、新商品のメディア露出を高めたことや各種店舗施策の実施などが業績に寄与した。なお、通期の営業総収入は1144億4500万円(前期比7.0%増)、営業利益は266億7300万円(同7.8%増)の見通しだ。
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