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学研ホールディングスのニュース
―M&A駆使し17期連続増収、PBR1倍台早期達成へ株式指標重視の経営に舵―
今年創業80周年を迎える学研ホールディングス <9470> [東証P]が株価を意識した経営に舵を切っている。学習参考書や図鑑で高い知名度を誇る同社は2000年代後半に経営難に直面したが、その後M&Aを駆使して業績はV字回復を果たし、26年9月期は17期連続で増収を見込むなどトップラインの拡大が続いている。教育分野では社会人向けのリカレント・リスキリング事業などに注力するほか、介護関連事業を展開する医療福祉分野では調剤薬局や看護などポートフォリオの強化に取り組んでいる。時価総額を現在の水準から大きく引き上げ、将来的に1000億円規模に近づけることを目指している宮原博昭社長に今後の戦略について聞いた。(聞き手・末藤潤也)
●ROE目標前倒し達成に意欲
──少子化や教育環境の変化に伴い業績低迷に苦しむことになりましたが、10年9月期以降は増収を続け、今期は売上高2000億円の突破を計画しています。
(10年9月期の)売上高780億円規模の時代から意識してきたトップラインの目標が実現することになります。2000億円という数字は他社の分析や経営トップとの交流のなかで見いだした、サービス業を営む企業として大きなプレゼンスを発揮していくための水準でもあります。水面下で進めているM&Aを含むさまざまな施策を踏まえると、学研HDにとって2000億円は通過点に過ぎません。3000億円、あるいは5000億円規模への拡大をすでに見据えています。10年12月の社長就任以来、売上高2000億円の達成を最優先事項とし、投資重視の経営に取り組んできました。そのなかで、株式指標重視の経営にも取り組んでいます。利益と連動する役員報酬制度への変更など体制整備を着々と進めています。
──株価は19年12月に高値1975円をつけた後、22年には一時800円を割り込みました。足もとでは1100円前後で推移しています。株式指標重視の経営を進めるうえで、目標とする時価総額の水準はありますか?
1000億円を目指しています。まずは27年9月期を最終年度とする中期経営計画で掲げたPBR1.0倍を早期に達成することが重要です。ROE(自己資本利益率)や自己資本比率などを意識して経営に取り組み、財務諸表を今まで以上に機関投資家や個人投資家から高く評価されるものへと磨き上げていきたいと考えています。なかでも(中計最終年度の目標である)ROE8%は、経営として必達すべき重要な指標だと考えています。可能ならば今期中に実現したい。M&Aをはじめとする投資重視の経営に取り組んできたかいもあり、ROE目標を実現するために必要な利益を生み出す体制は十分整っています。
──M&Aを積極的に活用し学習塾や出版会社などをグループ化し業績を伸ばしてきました。一方で中計では一部事業からの撤退も示唆しています。
中計の軸から外れている事業は撤退を検討する候補になります。事業の内容や働いている社員は全く悪くありませんが、学研HDがグループとしてよりシナジーが発揮できる事業ポートフォリオを再構築することが必要となります。最終的に撤退で得られた資金はグローバル展開や中計で注力する領域に挙げたメディカル・ウェルネス事業、AIの活用などに活用していきます。これまでM&Aは既存事業の川上・川下といった周辺領域のビジネスを取り込む形で進めてきました。私自身、今も全ての案件へ積極的に関わっています。
●「地球の歩き方」復活、創薬関連にも展開
──出版事業ではコロナ禍にあって「地球の歩き方」に関する事業を譲受しました。
事業譲受をした際、新型コロナウイルスによる経済活動への影響は短期間で収まると想定していました。実際は想定よりも長期間となり、譲受後は赤字が続いて大変でしたが、今は花を開き見事な復活劇を見せています。コロナ禍の中にあっても、海外旅行が難しいならと逆転の発想で国内版シリーズを20年に開始し、累計125万部超の大ヒットを記録しました。また、集英社(東京都千代田区)とタッグを組んで発刊した『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』はヒット商品になりました。
過去のM&Aの交渉では、学研HDへのグループインについて相手先をクライアントとする証券会社から、かなり厳しい言葉で断られ、悔しい思いをしたこともありました。今は業績が堅調に推移するなかで、学研HDによるM&Aへの需要・関心も高まっており、グループ化を進めやすい状態になったと感じています。
──中計では教育分野以外にメディカル・ウェルネス事業に注力する方針も示しています。
介護領域ではデイサービスにとどまらず、訪問介護やオンライン診療などに取り組んでいます。社会の高齢化が進み需要自体は拡大していますが、税制面で負担の少ない社会福祉法人と競争を迫られた結果、倒産する介護事業者も現れています。民間企業である学研HDが収益性を伴って事業を続けるためにはスケールメリットを求めなければなりません。単に介護施設を運営するだけではなく、医療法人のようなメディカル領域に立脚した高品質な介護を提供することが求められます。
認知症の早期発見や予防に関する取り組みに留まらず、治療や症状の緩和を見据えた創薬事業も強化する方針です。昨年8月に京都大学との共同研究を基盤とし創薬事業などを行う新会社「Gerok」(ジェロック)を設立しました。抗老化遺伝子「α-Klotho」(アルファ・クロトー)の機能解析や同遺伝子を活性化する低分子化合物の開発を進めています。Gerokの研究成果は認知症をはじめとする老化関連疾患への応用が期待されています。まずは早期の社会実装を目指し、スキンケアや頭皮ケアなどのヘルスケア製品の開発も推進することで、収益を研究開発に還元する循環体制の構築を図ります。
●欧米攻略を準備中、日本式教育の強み発揮へ
──中計ではグローバル展開について、東南アジア市場に注力するとあります。
東南アジアは日本のノウハウを生かしやすい市場です。特に算数・数学や理科・科学といった理数科教育においては、学習項目やカリキュラム構成が日本の指導要領と近いという特徴があります。そのため、既存の製品・サービス内容を横展開するハードルが他地域と比べ相対的に低いという現実があります。
しかしながら欧米市場の攻略に向けた準備も行っており、M&Aについて具体的な話も出てきました。「どぶ板営業」に取り組みながら、人脈を広げ関係性も深めています。現地の出版社らと意見交換も行い、進出に役立つ情報を集めているところです。米国や英国といった英語圏に事業基盤を持つことができれば、その後の全世界における事業展開が進めやすくなります。相手先があることなので、具体的に何年後という話はできませんが、資金に見合った規模の案件があれば取りに行こうと考えています。
──欧米市場に展開した場合、自社の強みをどう発揮していきますか?
インバウンドに対するホテルやレストランのおもてなしが日本の長所であるように、丁寧な教育方法は日本の強みであり、コンテンツも充実しています。日本型の教育方法は特定の宗教を前提としていないため、幅広い地域で高い親和性を発揮できるものとなっています。翻訳にかかるコストもAIで抑制できるようになりました。学研HDには教育・子育て支援の質が高いコンテンツ、教育に関して高い能力を持つ優秀な人材がそろっていますし、「リアル」の部分で競争力があります。生徒の継続率は対面型の教室のほうが、オンラインのみの教育システムと比べて明らかに高い。オンラインのみで、受講者側のモチベーションを維持・向上させることは困難です。
対面型の教室は教師や生徒同士が顔と顔を合わせてコミュニケーションをとり、その過程で生徒のモチベーションに働きかけていきます。教材作りにしてもAIが作成したものと比べ、学研HDの教材は学習時に生徒が苦戦しやすい点を意識し、理解が進みやすいよう丁寧に解説する内容となっています。受講者に寄り添う教育をこれからも自社の持ち味として大切にしていきたいと考えています。一方で、リアルとAIを掛け合わせ、生徒のモチベーションの向上を支援する「AI先生」も作ってみたいです。
──教育分野では教室・塾事業とともに出版・コンテンツサービス事業も着実に収益を拡大する計画です。コンテンツ・サービス関連では語学サービスやリカレント・リスキリングサービスのグローバル展開などを進め、27年9月期に売上高85億円(25年9月期69億円)、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)20億円(同16億円)に伸ばす目標を掲げています。
可能ならば早期に売上高100億円規模を実現したいと考えています。グループインによる拡大を含め事業を強化していきます。今期は資本・業務提携先であるレアジョブ <6096> [東証S]から、オンライン学習サービス「資格スクエア」に関する事業と、その運営会社の全株式を取得しました。就職してから同じ仕事で定年を迎えられる時代は終わり、日本の企業が強くなるためにもリカレント・リスキリングの重要性が増しています。学研HDの根底には、日本の教育を支えるという使命があります。これまでの知見を生かし、日本のリカレント・リスキリング市場の拡大に向けて企業としての責任を果たしていきます。
◇宮原博昭(みやはら・ひろあき)
株式会社学研ホールディングス代表取締役社長。1959年7月生まれ、広島県呉市出身。防衛大学校卒業後、貿易商社を経て、86年9月に学習研究社(現 学研ホールディングス)へ入社した。2007年4月に執行役員・第四教育事業本部長兼学研教室事業部長、09年6月に取締役へ就任。10年12月から現職に就いた。著書に「M&A経営論 ビジネスモデル革新の成功法則」など3冊。24年5月から日本雑誌協会理事長も務める。
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