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澁澤倉庫のニュース
■澁澤倉庫<9304>の中期経営計画
1. 中期経営計画「Step Up 2019」
中期経営計画「Step Up 2019」では、前中期経営計画の考え方を踏襲する一方、特色ある物流企業としての地位を固めることで企業価値の向上を目指す。数値目標は2020年3月期に営業収益67,000百万円、営業利益4,000百万円(営業利益率6.0%)となっている。戦略の考え方は、国内事業では消費財物流の拡充と流通加工などの高付加価値業務の拡大、海外物流では中長期成長に向けた事業基盤の強化、不動産事業は賃貸用不動産の資産価値向上と収益基盤強化、そして経営基盤強化に向けた公正性・透明性・機動性の高い経営の実現——である。
国内物流、海外物流、不動産事業とも積極経営・積極投資へ
2. 中期経営計画のセグメント別動向
セグメント別では、国内で6,000百万円の増収、海外で3,000百万円の増収を狙う。重点施策は国内の消費財物流と海外物流の拡大、不動産事業の資産価値向上である。
(1) 国内物流
消費財物流で2020年3月期営業収入25,000百万円(2017年3月期20,500百万円)と2017年3月期比4,500百万円の上乗せを目指す。現在、飲料や日用品の伸びにより各倉庫は既にフル稼働状態となっている。このため、2019年3月期において伊勢崎、相模原、各務原に新倉庫を稼働させる予定だが、さらに首都圏・関西圏の都市部内陸に拠点を新設・拡充する考えで、関東では埼玉南部(飲料・雑貨)、三郷・松戸・新船橋の既存3拠点のエリア(輸入雑貨)、千葉北倉庫の近隣(飲料)、関西では西宮(ペットフード)と神戸近隣(輸入雑貨)なども検討されている。
こうした拠点新設・拡充は、取扱量の増加だけでなく、エリア集中によって拠点間の連携が強化される効果もある(ドミナント効果)。例えば、人材や作業者の労務管理や過不足調整、季節性の強い飲料の在庫調整、WMS/TMSや長距離/地場、共同配送など陸上運送での連携強化などである。したがって今後、消費財取扱いにおいて競争力が一段と強化されることが予想される。今中期経営計画の先を見据え、高付加価値化やドメイン拡大を背景に新サービスも開始する考えである。EC向け在庫・受発注管理やサイトの作成、薬事管理など顧客管理業務の代行による業域の拡大、イベント設営、内装工事・レイアウト作成、非営利機関へのサービス提供など既存サービス機能の展開拡張、TMS動態管理サービスの外販、受発注・輸出入管理システムの提供、物流情報の加工などシステム機能・情報処理サービスの提供——などである。
(2) 海外物流
既存海外拠点も業域拡大などによって競争力を強化、生産基地から消費市場へと変貌するアジアでの中長期成長に向けた事業基盤の強化を目指す。中国では、フォワーディングから2014年にライセンスを取得した同国内輸送業務を拡充する方針。現在トラック5台を擁し利益率も想定以上に高いもようである。香港や広州との連携を強化し華南部での業容も拡大する。ベトナムでは、70,000m2の倉庫を有するVinafco Joint Stock Corporation(以下、Vinafco)に2014年に出資(現在持分45%)、2017年7月には執行役員を1名常駐させコラボレーションを強化、Vinafco拠点を活用して非日系客を取込みつつ内陸物流を拡大する方針である。なお、2018年3月期において持分法による投資損失を計上したため、今後は連結収益への寄与を見込みやすくなる。フィリピンでは、マニラの駐在員事務所を現地法人化、主力客の工場増設に対応するとともに、国内物流の取組みもスタートさせる考えだ。
(3) 不動産事業
計画的な保守・修繕、省エネなど環境対策、ハード・ソフト両面での機能向上、ビルマネジメントサービスの高品質化によってテナント満足度を引上げ、保有資産の価値向上と高水準稼働率の維持を目指す。不動産事業ではないが、横浜市恵比須町第2期再開発においても、こうした保有不動産の価値向上や高稼働率の維持という考えが踏襲されていると見ることができる。
(4) 投資と調達
中期経営計画期間中に最大総額20,000百万円の投資をする考えである。倉庫投資など計画が見えているものだけで10,000百万円になるもようだ。見えていない部分については、新たな案件・物件があれば対応できるように準備しておこうというのである。新たな案件・物件とは、新倉庫建設や海外を含めたM&A、不動産事業向け物件獲得などが想定される。一方、調達については、見えている10,000百万円についてはキャッシュ・フローでカバー可能と思われる。それ以外の部分については新たな借入が必要となるだろう。ただし、借入の条件が改善していること、財務体質や収益性が改善していることなどから、リスクの高い調達とはならないと考える。
(5) 懸念と対応
懸念されるのは、ドライバー不足と消費財拡大による在庫の変動である。ドライバー不足について、同社は事業用がメインのため、値上げや減量で話題のヤマトホールディングス<9064>ほどに人手を抱えなくて済むことから、傭車先を含めて当面影響は大きくなさそうだ。しかし、中期的には懸念材料であることに違いなく、拠点統廃合やドミナント、モーダルシフト、ITの活用などでカバーする考えである。在庫変動については、特に同社で取扱いの多い飲料やエアコンに関して、夏と冬の間の在庫量や在庫回転の違い、同じ夏でも猛暑と冷夏の荷動きの違いがリスクとなる。夏場の急激な在庫や回転の増加には十分な傭車力があるため対応可能だが、夏冬の繁閑差については、保管スペースや商品構成の最適化を模索する必要があるかもしれない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 中期経営計画「Step Up 2019」
中期経営計画「Step Up 2019」では、前中期経営計画の考え方を踏襲する一方、特色ある物流企業としての地位を固めることで企業価値の向上を目指す。数値目標は2020年3月期に営業収益67,000百万円、営業利益4,000百万円(営業利益率6.0%)となっている。戦略の考え方は、国内事業では消費財物流の拡充と流通加工などの高付加価値業務の拡大、海外物流では中長期成長に向けた事業基盤の強化、不動産事業は賃貸用不動産の資産価値向上と収益基盤強化、そして経営基盤強化に向けた公正性・透明性・機動性の高い経営の実現——である。
国内物流、海外物流、不動産事業とも積極経営・積極投資へ
2. 中期経営計画のセグメント別動向
セグメント別では、国内で6,000百万円の増収、海外で3,000百万円の増収を狙う。重点施策は国内の消費財物流と海外物流の拡大、不動産事業の資産価値向上である。
(1) 国内物流
消費財物流で2020年3月期営業収入25,000百万円(2017年3月期20,500百万円)と2017年3月期比4,500百万円の上乗せを目指す。現在、飲料や日用品の伸びにより各倉庫は既にフル稼働状態となっている。このため、2019年3月期において伊勢崎、相模原、各務原に新倉庫を稼働させる予定だが、さらに首都圏・関西圏の都市部内陸に拠点を新設・拡充する考えで、関東では埼玉南部(飲料・雑貨)、三郷・松戸・新船橋の既存3拠点のエリア(輸入雑貨)、千葉北倉庫の近隣(飲料)、関西では西宮(ペットフード)と神戸近隣(輸入雑貨)なども検討されている。
こうした拠点新設・拡充は、取扱量の増加だけでなく、エリア集中によって拠点間の連携が強化される効果もある(ドミナント効果)。例えば、人材や作業者の労務管理や過不足調整、季節性の強い飲料の在庫調整、WMS/TMSや長距離/地場、共同配送など陸上運送での連携強化などである。したがって今後、消費財取扱いにおいて競争力が一段と強化されることが予想される。今中期経営計画の先を見据え、高付加価値化やドメイン拡大を背景に新サービスも開始する考えである。EC向け在庫・受発注管理やサイトの作成、薬事管理など顧客管理業務の代行による業域の拡大、イベント設営、内装工事・レイアウト作成、非営利機関へのサービス提供など既存サービス機能の展開拡張、TMS動態管理サービスの外販、受発注・輸出入管理システムの提供、物流情報の加工などシステム機能・情報処理サービスの提供——などである。
(2) 海外物流
既存海外拠点も業域拡大などによって競争力を強化、生産基地から消費市場へと変貌するアジアでの中長期成長に向けた事業基盤の強化を目指す。中国では、フォワーディングから2014年にライセンスを取得した同国内輸送業務を拡充する方針。現在トラック5台を擁し利益率も想定以上に高いもようである。香港や広州との連携を強化し華南部での業容も拡大する。ベトナムでは、70,000m2の倉庫を有するVinafco Joint Stock Corporation(以下、Vinafco)に2014年に出資(現在持分45%)、2017年7月には執行役員を1名常駐させコラボレーションを強化、Vinafco拠点を活用して非日系客を取込みつつ内陸物流を拡大する方針である。なお、2018年3月期において持分法による投資損失を計上したため、今後は連結収益への寄与を見込みやすくなる。フィリピンでは、マニラの駐在員事務所を現地法人化、主力客の工場増設に対応するとともに、国内物流の取組みもスタートさせる考えだ。
(3) 不動産事業
計画的な保守・修繕、省エネなど環境対策、ハード・ソフト両面での機能向上、ビルマネジメントサービスの高品質化によってテナント満足度を引上げ、保有資産の価値向上と高水準稼働率の維持を目指す。不動産事業ではないが、横浜市恵比須町第2期再開発においても、こうした保有不動産の価値向上や高稼働率の維持という考えが踏襲されていると見ることができる。
(4) 投資と調達
中期経営計画期間中に最大総額20,000百万円の投資をする考えである。倉庫投資など計画が見えているものだけで10,000百万円になるもようだ。見えていない部分については、新たな案件・物件があれば対応できるように準備しておこうというのである。新たな案件・物件とは、新倉庫建設や海外を含めたM&A、不動産事業向け物件獲得などが想定される。一方、調達については、見えている10,000百万円についてはキャッシュ・フローでカバー可能と思われる。それ以外の部分については新たな借入が必要となるだろう。ただし、借入の条件が改善していること、財務体質や収益性が改善していることなどから、リスクの高い調達とはならないと考える。
(5) 懸念と対応
懸念されるのは、ドライバー不足と消費財拡大による在庫の変動である。ドライバー不足について、同社は事業用がメインのため、値上げや減量で話題のヤマトホールディングス<9064>ほどに人手を抱えなくて済むことから、傭車先を含めて当面影響は大きくなさそうだ。しかし、中期的には懸念材料であることに違いなく、拠点統廃合やドミナント、モーダルシフト、ITの活用などでカバーする考えである。在庫変動については、特に同社で取扱いの多い飲料やエアコンに関して、夏と冬の間の在庫量や在庫回転の違い、同じ夏でも猛暑と冷夏の荷動きの違いがリスクとなる。夏場の急激な在庫や回転の増加には十分な傭車力があるため対応可能だが、夏冬の繁閑差については、保管スペースや商品構成の最適化を模索する必要があるかもしれない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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