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イー・ギャランティのニュース
*12:04JST Eギャランティ Research Memo(4):売上債権の国内市場規模200兆円超、信用リスク保証サービスの成長余力大
■イー・ギャランティ<8771>の会社概要
3. 市場規模
同社の主力サービスの対象となる売上債権(受取手形、売掛金等)の市場規模は、200兆円を超える※1。こうした売上債権がすべて信用リスク保証のサービスを必要とするわけではないが、欧米では一般的に普及しているサービスであり、潜在的な成長力は高いと弊社では見ている※2。
※1 財務省「法人企業統計調査」によると、2024年3月末で240兆円(金融保険業除く)。
※2 例えば、日本では信用リスク保証サービスの浸透率が1%台に留まっているが、英国で12~14%、フランスで30~35%、ドイツで40%以上。
なお、保証料率に影響を与える企業の倒産件数の推移を見ると、2008年度の13,234件をピークに減少傾向が続き、2019年度に一旦、増加に転じたものの2020年度以降はコロナ禍での資金繰り支援を目的とした政府系金融機関による実質無利子・無担保融資政策が導入されたことにより再度減少した。しかし、これらの政策の期限が到来したことや、エネルギー価格の高騰による物価上昇、人手不足等の影響で2022年度の倒産件数は前年度比14.9%増の6,799件と3年ぶりの増加に転じ、2023年度も同30.6%増の8,881件と大幅に増加した。一方、同社の平均保証料率の推移は、コロナ禍で信用リスクが上昇した2020年度は1.63%と11年ぶりの上昇に転じたが、2022年度は企業倒産件数が増加したにもかかわらず前年度の1.46%から1.34%に、2023年度も1.26%へと低下した。これは信用リスクが上昇するなかで、戦略的にリスクの低い大口の売掛債権保証契約の獲得を推進し、逆にリスクの高い案件の契約を手控えたことが影響した。言わば、保証履行発生リスクを低減し、守りの経営を進めてきたと言える。
4. リスク要因
同社の業績における主なリスク要因として以下の3点が挙げられるが、現時点ではいずれも懸念する状況にはないと弊社では見ている。
(1) 収益構造リスク
同社の収益構造は、顧客から得られる保証料を売上高として計上する一方、リスク移転先である金融機関等に支払う費用を売上原価として計上しており、これらの差額が同社の利益となる。リスク移転先に支払う費用は複数年にわたる保証履行実績により決定されるため、一時的に多額の保証履行が発生しても短期的な売上原価の上昇要因とはならないが、継続的に保証履行が多発するような景気悪化時には、リスク移転コストが上昇する。このリスク移転コスト分を保証料へ価格転嫁できない場合には、利益率の悪化要因となる。また、景気悪化時には倒産リスク上昇により同社サービスへの需要が増加する可能性がある一方で、保証料率が上昇し過ぎると逆にサービスを利用するメリットが低くなるため、契約件数の減少や契約更新率の低下によって保証債務が減少する可能性が考えられる。そのほか、未曽有の不況によりリスク移転先である金融機関等が経営破たんした場合には、保証履行ができなくなるリスクもある。
(2) 競合リスク
同社のように事業会社の売上債権保証サービスを専業で手掛けている企業はほとんどなく、類似したサービスとして大手金融機関系列のファクタリング会社が提供している保証ファクタリング、損害保険会社が提供している取引信用保険等のサービスがある。ただ、引き受ける保証対象企業の範囲や保証限度額、対象債権等において、同社は多様なニーズにフレキシブルに対応できることが強みであり、現時点での競合リスクはほとんどないものと考えられる。また、類似の売掛債権保証サービスを提供する事業会社が出てきているようだが、既述のとおりリスク審査の精度が劣るため収益化に苦労しており、同社の脅威とはなっていない。なお、小規模事業者等の小口の売上債権保証サービスでは、ラクーンホールディングス<3031>の子会社である(株)ラクーンフィナンシャルと競合するが、同社全体に占める小口債権保証の比率は小さいため影響はほとんどない。
(3) 法的規制リスク
売上債権保証サービスに関しては、「保険業法」や「金融商品取引法」などの法的規制の対象となっておらず、今後、同サービスに関する法的規制が新たに制定された場合には、ビジネスモデルの変更や競争環境の変化等により業績に影響を与える可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 市場規模
同社の主力サービスの対象となる売上債権(受取手形、売掛金等)の市場規模は、200兆円を超える※1。こうした売上債権がすべて信用リスク保証のサービスを必要とするわけではないが、欧米では一般的に普及しているサービスであり、潜在的な成長力は高いと弊社では見ている※2。
※1 財務省「法人企業統計調査」によると、2024年3月末で240兆円(金融保険業除く)。
※2 例えば、日本では信用リスク保証サービスの浸透率が1%台に留まっているが、英国で12~14%、フランスで30~35%、ドイツで40%以上。
なお、保証料率に影響を与える企業の倒産件数の推移を見ると、2008年度の13,234件をピークに減少傾向が続き、2019年度に一旦、増加に転じたものの2020年度以降はコロナ禍での資金繰り支援を目的とした政府系金融機関による実質無利子・無担保融資政策が導入されたことにより再度減少した。しかし、これらの政策の期限が到来したことや、エネルギー価格の高騰による物価上昇、人手不足等の影響で2022年度の倒産件数は前年度比14.9%増の6,799件と3年ぶりの増加に転じ、2023年度も同30.6%増の8,881件と大幅に増加した。一方、同社の平均保証料率の推移は、コロナ禍で信用リスクが上昇した2020年度は1.63%と11年ぶりの上昇に転じたが、2022年度は企業倒産件数が増加したにもかかわらず前年度の1.46%から1.34%に、2023年度も1.26%へと低下した。これは信用リスクが上昇するなかで、戦略的にリスクの低い大口の売掛債権保証契約の獲得を推進し、逆にリスクの高い案件の契約を手控えたことが影響した。言わば、保証履行発生リスクを低減し、守りの経営を進めてきたと言える。
4. リスク要因
同社の業績における主なリスク要因として以下の3点が挙げられるが、現時点ではいずれも懸念する状況にはないと弊社では見ている。
(1) 収益構造リスク
同社の収益構造は、顧客から得られる保証料を売上高として計上する一方、リスク移転先である金融機関等に支払う費用を売上原価として計上しており、これらの差額が同社の利益となる。リスク移転先に支払う費用は複数年にわたる保証履行実績により決定されるため、一時的に多額の保証履行が発生しても短期的な売上原価の上昇要因とはならないが、継続的に保証履行が多発するような景気悪化時には、リスク移転コストが上昇する。このリスク移転コスト分を保証料へ価格転嫁できない場合には、利益率の悪化要因となる。また、景気悪化時には倒産リスク上昇により同社サービスへの需要が増加する可能性がある一方で、保証料率が上昇し過ぎると逆にサービスを利用するメリットが低くなるため、契約件数の減少や契約更新率の低下によって保証債務が減少する可能性が考えられる。そのほか、未曽有の不況によりリスク移転先である金融機関等が経営破たんした場合には、保証履行ができなくなるリスクもある。
(2) 競合リスク
同社のように事業会社の売上債権保証サービスを専業で手掛けている企業はほとんどなく、類似したサービスとして大手金融機関系列のファクタリング会社が提供している保証ファクタリング、損害保険会社が提供している取引信用保険等のサービスがある。ただ、引き受ける保証対象企業の範囲や保証限度額、対象債権等において、同社は多様なニーズにフレキシブルに対応できることが強みであり、現時点での競合リスクはほとんどないものと考えられる。また、類似の売掛債権保証サービスを提供する事業会社が出てきているようだが、既述のとおりリスク審査の精度が劣るため収益化に苦労しており、同社の脅威とはなっていない。なお、小規模事業者等の小口の売上債権保証サービスでは、ラクーンホールディングス<3031>の子会社である(株)ラクーンフィナンシャルと競合するが、同社全体に占める小口債権保証の比率は小さいため影響はほとんどない。
(3) 法的規制リスク
売上債権保証サービスに関しては、「保険業法」や「金融商品取引法」などの法的規制の対象となっておらず、今後、同サービスに関する法的規制が新たに制定された場合には、ビジネスモデルの変更や競争環境の変化等により業績に影響を与える可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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