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*15:05JST Jトラスト Research Memo(5):新3ヶ年計画初年度は減益予想も、2025年12月期以降は増益基調を計画
■Jトラスト<8508>の中長期の成長戦略
同社グループは、事業環境の変化を踏まえて新たに発表した3ヶ年計画(2024年12月期~2026年12月期)で、最終年度となる2026年12月期に営業収益1,529億円(2023年12月期比1.3倍)と、過去最高の更新継続を目指す。営業利益は2024年12月期には特殊要因により減益となるものの、2025年12月期から増益基調に転じ、2026年12月期は178億円(同2.2倍)と過去最高の更新を計画している。この新3ヶ年計画は正式な中期経営計画ではなく達成可能と考えられる保守的な業績予想であるものの、中期的な収益及び利益目標を示すことは企業の将来の業績予想に基づいて投資を判断する投資家にとって、非常に重要であると弊社では考える。
(1) 日本金融事業
信用保証業務の拡充と債権回収業務の強化によってさらなる収益の拡大を図り、安定的な利益計上によって同社グループ全体の業績を下支えする計画である。
信用保証業務では、子会社の(株)日本保証において、アパートローン・有価証券担保ローン・海外不動産担保ローンを中心に推進する。保証期間の長いアパートローンの占める割合が大きいこともあり、保証残高は安定推移しており、計画を上回るペースで順調に増加している。さらなる成長を目指し、エリアや指定業者の拡大や新築アパートの取り扱い数増、借り換え需要対応の促進などを図る。有価証券担保ローンでは、グループ間のシナジーを生かし相互の顧客の連携による保証商品の開発などを行う計画だ。
証券業務では「プライベートバンキングサービスを提供するウェルスマネジメントのJトラストグローバル証券」を前面に打ち出す。個人金融資産1億〜5億円を保有する富裕層を新たなターゲットと捉え顧客開拓に乗り出し、従来の金融資産5,000万〜1億円の準富裕層向けビジネスとの両輪で攻めることで預かり資産を現状の3,866億円から1兆円に増やす計画である。金融資産5,000万〜5億円のターゲット層にはスタートアップ・ベンチャー企業の創業オーナーも多く、企業成長をサポートしながら、創業者のプライベートバンカーとして資産運用ニーズにも応える。富裕層ビジネスについてこれまでプライベートバンカーとして培ってきた知見と経験を生かし、成長ビジネスであるウェルスマネジメントを本格的に立ち上げ、顧客開拓を加速する計画だ。
(2) 韓国及びモンゴル金融事業
市中金利の高騰による預金利率の上昇、韓国全体での延滞増加、個人回生(個人再生)・信用回復の増加傾向などにより引当金の積み増しの可能性があるなか、韓国各社は引き続き緩やかな成長を目標に掲げる。バランスの取れたRisk-Returnを第一に「量の成長」から「質の成長」を目指し、一定の資産規模を維持すると同時に資産内容の質的な向上を追求する。また、債権管理回収を高める努力を続ける一方、延滞率を考慮しつつ収益性が見込める新規貸付に絞るなど、業績改善につながる対策を講じている。以上の施策を推進することで韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は、2023年12月期の3,334百万円の損失から2024年12月期は837百万円に黒字転換し、2025年12月期は2,593百万円、2026年12月期は5,124百万円へと利益拡大を見込んでいる。
(3) 東南アジア金融事業
同社グループ成長のけん引役になると期待されるJトラスト銀行インドネシアでは、収益確保のために積極的な貸出残高の増加、NPL(不良債権)比率の低下による貸倒費用の削減、COF(調達金利)の低下、CASA(流動比率)の増加を主要課題としている。マーケティング活動として1億人獲得プロジェクトを実施し、「新規預金獲得」のほか、「開設した口座の利用」「預金残高の増加」を目的として預金口座開設を促進する。住宅ローンについても積極的に業務提携を展開することで、収益拡大につなげる計画だ。また、同行の知名度向上を目的に、2024年7月には、インドネシアのサッカークラブチーム「Persija(ペルシージャ)」とパートナーシップ契約を締結した。
同行は2021年11月以降、日系企業傘下にある現地法人と住宅ローンの業務提携を行っており、住宅ローン残高の伸長が期待される。2024年6月には香川銀行と業務提携契約を締結し、インドネシアに進出済または進出予定の香川銀行の取引先事業者をJトラスト銀行インドネシアに紹介する仕組みを構築した。日系銀行との提携は3行目となる。今後40年以上にわたり人口ボーナス期に入ることが予想されるインドネシアにおいて、それぞれの経営資源を相互活用することにより海外進出事業者の企業価値を高めるとともに、インドネシアの経済発展に寄与するものと考えている。
インドネシアの債権回収業務では、債権買取回収及び債権回収受託のプレイヤーの増加に伴い債権価格が上昇することも見込まれるが、回収力や資金調達力で実績のある同社グループは先行者利益を得て、ビジネスチャンスが拡大する見通しである。
カンボジアのJトラストロイヤル銀行では、生産性を向上させるとともに、デジタル分野を強化してよりスピーディーなサービス提供ができるよう取り組んでいる。引き続き富裕層顧客を主な基盤とし、リレーションシップマネージャー(顧客担当)と顧客との強固なリレーション力による貸出並びに運用提案により他行との差別化を図るとともに、ニーズを汲み取った商品開発やデジタル対応にも注力する。不良債権の回収や新規不良債権の抑制にも取り組み、収益拡大を目指す計画だ。カンボジアではコロナ禍以降に中国からの不動産投資が減少した影響などがあり、同行の営業利益は買収前の25~30億円の水準に戻っていないが、引き続き安定した利益を計上している。首都プノンペンでは中断していた建設工事の再開・着工の動きもあり、資金需要の回復が期待される。
これにより東南アジア金融事業の営業利益は、2023年12月期の1,019百万円の損失から2024年12月期は1,732百万円の利益に転換し、2025年12月期は4,503百万円、2026年12月期も7,630百万円へと利益拡大を計画している。
以上のように、同社グループでは日本金融事業で安定的に利益を確保・拡大する一方で、韓国及びモンゴル金融事業での黒字化に加えて、成長可能性が大きい東南アジア金融事業の利益拡大を実現するとともに、不動産事業の貢献により持続的な成長を目指す。加えて、今後も企業価値を高めるために、既存の成功事業をさらに成長させることができる事業や既存事業とのシナジーを期待できる事業、金融機関と協業できる事業などへ投資する方針と見られ、弊社では引き続き同社グループの成長戦略に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<HN>
同社グループは、事業環境の変化を踏まえて新たに発表した3ヶ年計画(2024年12月期~2026年12月期)で、最終年度となる2026年12月期に営業収益1,529億円(2023年12月期比1.3倍)と、過去最高の更新継続を目指す。営業利益は2024年12月期には特殊要因により減益となるものの、2025年12月期から増益基調に転じ、2026年12月期は178億円(同2.2倍)と過去最高の更新を計画している。この新3ヶ年計画は正式な中期経営計画ではなく達成可能と考えられる保守的な業績予想であるものの、中期的な収益及び利益目標を示すことは企業の将来の業績予想に基づいて投資を判断する投資家にとって、非常に重要であると弊社では考える。
(1) 日本金融事業
信用保証業務の拡充と債権回収業務の強化によってさらなる収益の拡大を図り、安定的な利益計上によって同社グループ全体の業績を下支えする計画である。
信用保証業務では、子会社の(株)日本保証において、アパートローン・有価証券担保ローン・海外不動産担保ローンを中心に推進する。保証期間の長いアパートローンの占める割合が大きいこともあり、保証残高は安定推移しており、計画を上回るペースで順調に増加している。さらなる成長を目指し、エリアや指定業者の拡大や新築アパートの取り扱い数増、借り換え需要対応の促進などを図る。有価証券担保ローンでは、グループ間のシナジーを生かし相互の顧客の連携による保証商品の開発などを行う計画だ。
証券業務では「プライベートバンキングサービスを提供するウェルスマネジメントのJトラストグローバル証券」を前面に打ち出す。個人金融資産1億〜5億円を保有する富裕層を新たなターゲットと捉え顧客開拓に乗り出し、従来の金融資産5,000万〜1億円の準富裕層向けビジネスとの両輪で攻めることで預かり資産を現状の3,866億円から1兆円に増やす計画である。金融資産5,000万〜5億円のターゲット層にはスタートアップ・ベンチャー企業の創業オーナーも多く、企業成長をサポートしながら、創業者のプライベートバンカーとして資産運用ニーズにも応える。富裕層ビジネスについてこれまでプライベートバンカーとして培ってきた知見と経験を生かし、成長ビジネスであるウェルスマネジメントを本格的に立ち上げ、顧客開拓を加速する計画だ。
(2) 韓国及びモンゴル金融事業
市中金利の高騰による預金利率の上昇、韓国全体での延滞増加、個人回生(個人再生)・信用回復の増加傾向などにより引当金の積み増しの可能性があるなか、韓国各社は引き続き緩やかな成長を目標に掲げる。バランスの取れたRisk-Returnを第一に「量の成長」から「質の成長」を目指し、一定の資産規模を維持すると同時に資産内容の質的な向上を追求する。また、債権管理回収を高める努力を続ける一方、延滞率を考慮しつつ収益性が見込める新規貸付に絞るなど、業績改善につながる対策を講じている。以上の施策を推進することで韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は、2023年12月期の3,334百万円の損失から2024年12月期は837百万円に黒字転換し、2025年12月期は2,593百万円、2026年12月期は5,124百万円へと利益拡大を見込んでいる。
(3) 東南アジア金融事業
同社グループ成長のけん引役になると期待されるJトラスト銀行インドネシアでは、収益確保のために積極的な貸出残高の増加、NPL(不良債権)比率の低下による貸倒費用の削減、COF(調達金利)の低下、CASA(流動比率)の増加を主要課題としている。マーケティング活動として1億人獲得プロジェクトを実施し、「新規預金獲得」のほか、「開設した口座の利用」「預金残高の増加」を目的として預金口座開設を促進する。住宅ローンについても積極的に業務提携を展開することで、収益拡大につなげる計画だ。また、同行の知名度向上を目的に、2024年7月には、インドネシアのサッカークラブチーム「Persija(ペルシージャ)」とパートナーシップ契約を締結した。
同行は2021年11月以降、日系企業傘下にある現地法人と住宅ローンの業務提携を行っており、住宅ローン残高の伸長が期待される。2024年6月には香川銀行と業務提携契約を締結し、インドネシアに進出済または進出予定の香川銀行の取引先事業者をJトラスト銀行インドネシアに紹介する仕組みを構築した。日系銀行との提携は3行目となる。今後40年以上にわたり人口ボーナス期に入ることが予想されるインドネシアにおいて、それぞれの経営資源を相互活用することにより海外進出事業者の企業価値を高めるとともに、インドネシアの経済発展に寄与するものと考えている。
インドネシアの債権回収業務では、債権買取回収及び債権回収受託のプレイヤーの増加に伴い債権価格が上昇することも見込まれるが、回収力や資金調達力で実績のある同社グループは先行者利益を得て、ビジネスチャンスが拡大する見通しである。
カンボジアのJトラストロイヤル銀行では、生産性を向上させるとともに、デジタル分野を強化してよりスピーディーなサービス提供ができるよう取り組んでいる。引き続き富裕層顧客を主な基盤とし、リレーションシップマネージャー(顧客担当)と顧客との強固なリレーション力による貸出並びに運用提案により他行との差別化を図るとともに、ニーズを汲み取った商品開発やデジタル対応にも注力する。不良債権の回収や新規不良債権の抑制にも取り組み、収益拡大を目指す計画だ。カンボジアではコロナ禍以降に中国からの不動産投資が減少した影響などがあり、同行の営業利益は買収前の25~30億円の水準に戻っていないが、引き続き安定した利益を計上している。首都プノンペンでは中断していた建設工事の再開・着工の動きもあり、資金需要の回復が期待される。
これにより東南アジア金融事業の営業利益は、2023年12月期の1,019百万円の損失から2024年12月期は1,732百万円の利益に転換し、2025年12月期は4,503百万円、2026年12月期も7,630百万円へと利益拡大を計画している。
以上のように、同社グループでは日本金融事業で安定的に利益を確保・拡大する一方で、韓国及びモンゴル金融事業での黒字化に加えて、成長可能性が大きい東南アジア金融事業の利益拡大を実現するとともに、不動産事業の貢献により持続的な成長を目指す。加えて、今後も企業価値を高めるために、既存の成功事業をさらに成長させることができる事業や既存事業とのシナジーを期待できる事業、金融機関と協業できる事業などへ投資する方針と見られ、弊社では引き続き同社グループの成長戦略に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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