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―減少傾向続く感染者数、医療機関の設備投資回帰で活躍期待へ―
コロナ禍で3度目の夏を迎えようとしている。こうしたなか、苦汁をなめてきた「医療機器」業界には、ようやく遅い春が訪れようとしている。繰り返されてきた新型コロナウイルスの流行は、病院での感染を恐れたことで患者の受診控えを招き、病院の経営を圧迫することになった。それは設備投資の抑制につながり、医療機器関連企業の業績にも影を落とすことになる。しかし、ここにきて感染者数も減少傾向にあり、政府もウィズコロナに舵を切るなか、今後は受診抑制も改善傾向を強めそうで、落ち着きを取り戻し始めた医療機関を再び設備投資へと向かわせる可能性が高い。じわり復活機運が高まる医療機器関連株のいまを追った。
●医療提供体制の警戒レベル引き下げ
国内における新型コロナとの闘いは、2020年1月20日に横浜を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号乗客の感染が2月1日に確認されたことで始まった。その後、感染拡大と縮小を繰り返すなか、日本経済は低迷することになる。同時に、感染の爆発的拡大は、重症患者数の大幅な増加につながり、医療機関の経営も疲弊させた。新型コロナが猛威を振るい重症患者が増加するなか、 人工心肺装置「ECMO(エクモ)」など一部の医療機器には特需が発生したものの、多くの設備投資は停滞することになった。更に、今年2月にはオミクロン株の急速な拡大もあり1日の新規感染者数としては過去最多の10万人を突破するなど、コロナ禍からの脱却とはほど遠い状況になり、医療機器メーカーの事業環境も厳しさを増した。
しかし、新型コロナの収束とはいかないものの、ここにきては医療機関を巡る状況も好転している。東京都は19日、重症者数や入院患者数の減少などを踏まえ「通常の医療との両立が可能な状況である」とし、医療提供体制の警戒レベルを4段階中の下から2番目に引き下げた。この警戒レベルに下がるのは、1月13日以来約4ヵ月ぶりのことだ。
●事業環境好転で業界関係者の声にも変化
こうしたなか、逆風続きの医療機器業界からの声にも変化が出始めている。昨年2月、医療機器メーカーへの取材では、「新規の受注は厳しい」という答えが多かったが、ここにきて業界大手に聞くと「成長軌道に復帰する見通し」と強気の姿勢を見せる。「病院側の体制が整備されたことで、一昨年のように患者を受け入れられないという状態にはなりにくくなったとみている。オミクロン株が広がった1~2月には手術の延期なども発生し、いったんは需要が減少することもあったが、その後は急速に回復をみせた。新型コロナ収束にはまだ時間を要しそうだが、これまでの再拡大程度であれば、そこまで大きなトップラインへの影響はないだろう」と話す。
ただ、当然のことながら医療機器メーカーの業績もまちまちで、いまだ苦境を脱しきれない企業もある。それでも、事業環境の風向きが急速に変わるなか、医療機器関連株の動向は要注目だ。たとえ、現在のところ業績が冴えない銘柄でも、中・長期的には回復基調を強める可能性が大きい。また、海外では一歩先にウィズコロナを実現し経済の正常化を取り戻した国も多く、グローバルに展開する企業が先んじて成長ロード復帰へと走り出している。
●躍動するオリンパス
大手では内視鏡 で世界トップクラスのオリンパス <7733> [東証P]の躍動が光る。11日の取引終了後、23年3月期の連結最終利益が前期比33.1%増の1540億円になりそうだと発表。2期連続で過去最高益を更新する見通しだ。今期は主力の内視鏡事業で消化器内視鏡システム「EVIS X1」の拡販を目指すほか、治療機器事業は注力分野の消化器科、泌尿器科、呼吸器科で、科学事業では中国を中心にそれぞれ収益成長を見込む。これを評価した形で急伸し、11日には2283円だった株価が、13日に2773円まで買われ株式分割考慮後の上場来高値を更新した。全般波乱地合いのなかも高値圏で頑強展開をみせており、今後の行方に投資家の関心が集まっている。
●テルモ、今期最終5期ぶりに過去最高益更新へ
カテーテルや人工心肺装置で世界高シェアを誇るテルモ <4543> [東証P]も業績好調だ。22年3月期の連結最終利益は前の期比14.9%増の888億1300万円になり、23年3月期も前期比12.6%増の1000億円を見込み、5期ぶりに過去最高益を更新する見通し。売上収益は各事業の成長ドライバーが牽引し同10.2%増の7750億円を計画しており、全体として新型コロナの影響から脱して、症例数などの需要は回復するとみている。株価は3月9日につけた3479円で大底を確認、その後は上下動を繰り返しながらも水準を切り上げ、現在は4100円近辺で推移。事業環境の改善という追い風が吹くなか、株価上昇ムードを後押ししそうだ。
●島津、株価上昇波動に乗り活躍期待
島津製作所 <7701> [東証P]は分析・計測機器大手で医用機器でも目を引く存在だ。同社は、一昨年の感染拡大期から新型コロナ検出試薬キットを発売するなど検査体制の拡充を支えたことで、株式市場でも投資家の視線を集めてきた。昨年9月には5550円まで買われ上場来高値を更新。その後は調整局面入りし、今年の3月中旬には3685円まで売られたものの、ここを起点に反転攻勢に出ている。全般波乱相場もものともせず上昇波に乗り、現在は4800円水準に位置し、なお上値指向を継続しており、5000円台奪還からの活躍期待も膨らむ。23年3月期の連結営業利益は前期比6.6%増となる680億円への伸びを見込み、3期連続で過去最高益を更新する見通しだ。
●エアウォータは回復基調鮮明
工業用ガス大手で医療用酸素でも首位クラスのエア・ウォーター <4088> [東証P]にも注目してみたい。同社は医療機器、病院設備、衛生材料など幅広い医療関連製品・サービスを手掛けている。医療関連事業については、新型コロナの影響を大きく受けた前年度に対して、主力である病院向けビジネスの事業環境が年度を通じて回復基調で推移。加えて、新型コロナの影響で一時控えられていた手術室など病院設備の改修工事・保守点検も復調し、堅調に推移している。この結果、22年3月期の連結営業利益は前の期比27.2%増の651億7400万円に拡大し、続く23年3月期も前期比7.4%増の700億円を計画し過去最高益を更新する見通し。株価は4月7日に直近安値1596円をつけた後は下値を切り上げる展開。現在は1700円台で推移している。
●シップHD、メディアス、川本産業などにも注目
シップヘルスケアホールディングス <3360> [東証P]は、医療機器・設備の一括販売などを行う。22年3月期は、診療制限のため手術が一部延期となるなど、通常の医療提供が例年に比べ抑制気味で推移したことから、連結営業利益で前の期比5.9%減の205億500万円で着地。続く23年3月期は、連結営業利益で前期比2.4%増の210億円を計画している。株価はじわり切り返し局面にあり、事業環境が好転するなか、ここからの展開には目を配っておきたい。
ここ株価が上値指向を強める静岡県地盤の医療機器卸のメディアスホールディングス <3154> [東証P]にも妙味がありそうだ。同社の22年6月期通期の連結営業利益は前期比28.5%減の19億円を計画するが、第3四半期累計の連結営業利益は前年同期比12.9%増の33億2000万円に伸び、通期計画の19億円をすでに超過している点も見逃せない。そのほかでは、株価は下値模索が続くものの、医療器具大手のニプロ <8086> [東証P]、使い捨て医療器具大手で、輸液・栄養領域、透析領域、外科治療領域、血液・細胞領域と活躍分野の広いジェイ・エム・エス <7702> [東証P]、医療用不織布の最大手で医療用キット販売に注力するホギメディカル <3593> [東証P]などの動向にも注視が必要だ。そして、23年3月期は営業利益段階で、前期比14.7%増を計画する医療用衛生材料大手の川本産業 <3604> [東証S]にも注目しておきたい。
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