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■中長期の成長戦略
1. 中期方針の数値目標
不二精機<6400>は、2025年12月期に売上高9,500百万円を目指す中期方針を掲げた。売上高の内訳は成形品事業6,500百万円、金型事業3,000百万円としている。利益面では高付加価値分野に集中することで利益率向上を目指しており、営業利益率7.5%を目標としている。
医療用精密金型及び自動車関連部品に経営資源を集中
2. 成長分野への注力
同社は事業として成形品事業の拡大に軸足を置き、競争力の源泉である射出成形用精密金型及び成形システム事業については、医療用・食品容器用分野に集中化を図っていく。一方、精密成形品その他事業では、自動車(2輪・4輪)関連部品に経営資源を集中し、アジア地区での生産拡大により価値の拡大を図る方針となっている。
この成長戦略に基づき、工場の増設、新工場開設、生産効率改善を加速させている。具体的な例として、タイ工場では、製品検査の自動化を進めることで1人当たりの収益性を高めている。またインドネシア工場においても、隣接する貸工場の増床による生産能力拡大、生産性向上により人員増を抑えて売上拡大に貢献している。このほか、同社は高知県宿毛市に、設備投資額4億円をかけ精密金型の新工場の開設を進めている。ここではCADによる金型設計、金型部品の精密加工作業を行う。また、EV関連部品の開発も積極的に行い、自動車産業部での裾野拡大にもつなげていく狙いもある。新工場は、2022年12月の操業開始の予定となっている。
(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業では、医療分野に注力していく方針となっている。医療用・食品用の成形品は安全性が重要で、素材として低溶出性などが要求されるほか、透明性、低臭気性、剛性、高圧蒸気滅菌等の耐熱性、耐衝撃性なども必要で、成型難度が高い。同社はCDケースで培った透明樹脂の精密成型金型技術で大量生産可能な金型の供給を行っていく。現在、売上はダイアライザー向けが最も多く、次いで注射器用が多いと言う。
また注射器ビジネスでは、PFS(プレフィールドシリンジ)の売上拡大なども期待される。PFSは針刺し事故の危険性軽減や薬剤調整作業時間の短縮、さらには保管効率化や運搬の簡便化などから各種製剤で採用が進んでいる。現在、ニプロ<8086>、テルモ<4543>、ジェイ・エム・エス(JMS)<7702>などの国内ユーザー、日系現地法人向けに供給している。なお2019年3月に発表された経済産業省の医療国際展開カントリーレポートによると、中国の医療機器市場は2018年の250.6億米ドル規模に対し、2019年以降も平均10%成長し、2022年には359.8億米ドルに達すると予想されている。同社の注力するダイアライザーに加え、関連する注射器やシャーレなどの消耗品向けも拡大すると見られ、いかにこれを取り込んでいけるかがポイントとなるだろう。
そのほかにも、既存の成形設備で取り数を増やすことが可能なホットランナー金型(射出成形時に可塑化された樹脂を製造部へ送る樹脂経路部分をヒーターで加熱し固化させずに生産効率を高める金型)を中心に需要拡大も目指すとしている。
(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業では、自動車部品事業に注力していく。同社は現在、タイ、インドネシア、中国(上海)において精密成形品の製造を行い、いずれの地域でも日系自動車メーカーの現地生産が拡大している。同社では2輪において日立Astemoを通じて本田技研工業向けが多く、一部ヤマハ発動機<7272>向けにも対応する。4輪においては日系現地法人である日立Astemo、デンソー<6902>、ミクニ<7247>、東海理化電機製作所<6995>、ミツバ<7280>、アイシン精機<7259>、住友電装、大同メタル工業<7245>などを通じて、トヨタ自動車<7203>や本田技研工業向けを中心とした自動車メーカーに採用されている。今後、日系自動車メーカーの4輪生産拡大が期待され、さらに軽量化に伴い金属から樹脂化への動きも加わり、樹脂成形品需要の拡大が見込める。具体的にはトヨタなど日系自動車メーカーのTier1(メーカーと直接取引する一次下請け)企業中心に、金型から製作できる強みを持ってユーザーの裾野を広げていく。
なお同社は2019年12月期にマツダ<7261>系の(株)ユーシンを主要取引先としている秋元精機工業を子会社化した。秋元精機工業は1960年設立で、精密プレス加工用の金型設計・製作と板金プレス部品、インサート成形品、絞り板金プレスなどの製造経験を持つ。同社はプラスチック金型の専業として事業展開してきたが、今後自動運転やEVなど次世代4輪自動車の方針とされる「CASE」製造に向け、精密金属部品を金型内にインサートして樹脂成形する「インサート成形品」への対応などを図る。具体的には車載用コネクタ部品などへの参入を想定している。
また、同社は新たに鈴鹿工場(2022年操業開始予定)を開設し、海外拠点の供給先である日系メーカーの集中する東海地区での量産拠点とする。グループ全体の精密成形品事業のマザー工場として、EVや自動運転などに対応した新製品の受注・開発拠点とすることとし、2022年12月期はEV関連新製品開発を中心に、設備投資増、研究開発費も積極投入していく方針としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
<EY>
1. 中期方針の数値目標
不二精機<6400>は、2025年12月期に売上高9,500百万円を目指す中期方針を掲げた。売上高の内訳は成形品事業6,500百万円、金型事業3,000百万円としている。利益面では高付加価値分野に集中することで利益率向上を目指しており、営業利益率7.5%を目標としている。
医療用精密金型及び自動車関連部品に経営資源を集中
2. 成長分野への注力
同社は事業として成形品事業の拡大に軸足を置き、競争力の源泉である射出成形用精密金型及び成形システム事業については、医療用・食品容器用分野に集中化を図っていく。一方、精密成形品その他事業では、自動車(2輪・4輪)関連部品に経営資源を集中し、アジア地区での生産拡大により価値の拡大を図る方針となっている。
この成長戦略に基づき、工場の増設、新工場開設、生産効率改善を加速させている。具体的な例として、タイ工場では、製品検査の自動化を進めることで1人当たりの収益性を高めている。またインドネシア工場においても、隣接する貸工場の増床による生産能力拡大、生産性向上により人員増を抑えて売上拡大に貢献している。このほか、同社は高知県宿毛市に、設備投資額4億円をかけ精密金型の新工場の開設を進めている。ここではCADによる金型設計、金型部品の精密加工作業を行う。また、EV関連部品の開発も積極的に行い、自動車産業部での裾野拡大にもつなげていく狙いもある。新工場は、2022年12月の操業開始の予定となっている。
(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業では、医療分野に注力していく方針となっている。医療用・食品用の成形品は安全性が重要で、素材として低溶出性などが要求されるほか、透明性、低臭気性、剛性、高圧蒸気滅菌等の耐熱性、耐衝撃性なども必要で、成型難度が高い。同社はCDケースで培った透明樹脂の精密成型金型技術で大量生産可能な金型の供給を行っていく。現在、売上はダイアライザー向けが最も多く、次いで注射器用が多いと言う。
また注射器ビジネスでは、PFS(プレフィールドシリンジ)の売上拡大なども期待される。PFSは針刺し事故の危険性軽減や薬剤調整作業時間の短縮、さらには保管効率化や運搬の簡便化などから各種製剤で採用が進んでいる。現在、ニプロ<8086>、テルモ<4543>、ジェイ・エム・エス(JMS)<7702>などの国内ユーザー、日系現地法人向けに供給している。なお2019年3月に発表された経済産業省の医療国際展開カントリーレポートによると、中国の医療機器市場は2018年の250.6億米ドル規模に対し、2019年以降も平均10%成長し、2022年には359.8億米ドルに達すると予想されている。同社の注力するダイアライザーに加え、関連する注射器やシャーレなどの消耗品向けも拡大すると見られ、いかにこれを取り込んでいけるかがポイントとなるだろう。
そのほかにも、既存の成形設備で取り数を増やすことが可能なホットランナー金型(射出成形時に可塑化された樹脂を製造部へ送る樹脂経路部分をヒーターで加熱し固化させずに生産効率を高める金型)を中心に需要拡大も目指すとしている。
(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業では、自動車部品事業に注力していく。同社は現在、タイ、インドネシア、中国(上海)において精密成形品の製造を行い、いずれの地域でも日系自動車メーカーの現地生産が拡大している。同社では2輪において日立Astemoを通じて本田技研工業向けが多く、一部ヤマハ発動機<7272>向けにも対応する。4輪においては日系現地法人である日立Astemo、デンソー<6902>、ミクニ<7247>、東海理化電機製作所<6995>、ミツバ<7280>、アイシン精機<7259>、住友電装、大同メタル工業<7245>などを通じて、トヨタ自動車<7203>や本田技研工業向けを中心とした自動車メーカーに採用されている。今後、日系自動車メーカーの4輪生産拡大が期待され、さらに軽量化に伴い金属から樹脂化への動きも加わり、樹脂成形品需要の拡大が見込める。具体的にはトヨタなど日系自動車メーカーのTier1(メーカーと直接取引する一次下請け)企業中心に、金型から製作できる強みを持ってユーザーの裾野を広げていく。
なお同社は2019年12月期にマツダ<7261>系の(株)ユーシンを主要取引先としている秋元精機工業を子会社化した。秋元精機工業は1960年設立で、精密プレス加工用の金型設計・製作と板金プレス部品、インサート成形品、絞り板金プレスなどの製造経験を持つ。同社はプラスチック金型の専業として事業展開してきたが、今後自動運転やEVなど次世代4輪自動車の方針とされる「CASE」製造に向け、精密金属部品を金型内にインサートして樹脂成形する「インサート成形品」への対応などを図る。具体的には車載用コネクタ部品などへの参入を想定している。
また、同社は新たに鈴鹿工場(2022年操業開始予定)を開設し、海外拠点の供給先である日系メーカーの集中する東海地区での量産拠点とする。グループ全体の精密成形品事業のマザー工場として、EVや自動運転などに対応した新製品の受注・開発拠点とすることとし、2022年12月期はEV関連新製品開発を中心に、設備投資増、研究開発費も積極投入していく方針としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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