太平洋工業のニュース
【QAリンクあり】太平洋工業、通期売上高および利益が過去最高 既存事業の拡販と新規事業領域の拡大で持続的な成長をめざす
目次
小川哲史氏:太平洋工業の小川でございます。本日はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。
これより、2023年度業績、ならびに2024年度通期予想について説明したのち、中期経営計画NEXUS-26の進捗について、説明させていただきます。
1-1 2023年度 連結業績
それでは、連結業績を説明します。
第4四半期の業績は、円安の進展による為替換算差により、売上高は前年比7パーセント増の513億円、営業利益は国内自動車生産の減少などにより、10パーセント減の32億円となりました。
通期の売上高は2,073億円、営業利益は144億円、経常利益は188億円、当期純利益は169億円となり、いずれも過去最高となりました。
なお、当期純利益には、特別利益として投資有価証券売却益155億円、特別損失として、連結子会社における固定資産の減損損失などがあり、75億円を計上しております。
1-2 連結売上高 増減要因
売上高は、プレス鋼材の有償受給化による減収影響はありましたが、販売物量の増加や円安基調の継続による為替のプラス影響などにより、前年同期比160億円増収し、2,073億円となりました。
1-3 連結営業利益 増減要因
営業利益は、物量増加による労務費・経費の増加や材料価格の高騰などのマイナス影響はありますが、販売物量の増加と原価改善の推進により前年同期比51億円増益し、144億円となりました。
1-4 連結事業別セグメント
事業別セグメントを説明します。
プレス・樹脂事業では、販売物量の増加により、売上高は前年比9パーセント増の1,499億円、営業利益は販売物量の増加と収益改善により54億円増加し、103億円となりました。
バルブ事業では、物量は前年並みでしたが、円安影響により、売上高は5パーセント増の571億円、営業利益は、円安による海外からの部品調達価格の上昇や材料価格高騰のマイナス影響を、為替差益や収益改善、価格転嫁などでカバーし、前年並みの41億円となりました。
1-5 連結地域別セグメント
地域別セグメントで説明いたします。
日本の売上高は前年比3パーセント減の679億円、営業利益は12億円増加し62億円、欧米の売上高は24パーセント増の969億円、営業利益は44億円増加し43億円、アジアの売上高は前年並みの424億円、営業利益は9億円減少し26億円となりました。
1-6 四半期別 連結業績推移
売上高と営業利益の、四半期別推移です。
第3四半期からプレス新工場が本格稼働しており、それに伴う準備コストや償却費の増加で利益が減少しています。第4四半期は顧客の生産ラインの停止により、販売物量が減少し、売上・利益は減少しました。
2-1 2024年度 連結業績予想
次に、2024年度通期予想について説明します。
通期の売上高は、2,000億円を見込んでいます。自動車の生産台数は前年並みと想定していますが、2023年度は新型車型の立ち上げが多く、2024年度は少ないため、立ち上げ時に一括計上される金型売上が減少し、全体の売上高は減少する見込みです。
営業利益は110億円、経常利益は130億円、当期純利益は100億円と予想しています。
2-2 通期 連結売上高 増減要因
通期の売上高は、金型売上の減少による販売物量の減少や為替影響、販売価格の低下により、前期の2,073億円から73億円減収し、2,000億円を予想しています。
2-3 通期 連結営業利益 増減要因
通期の営業利益は、原価改善を進める計画ですが、価格改定や物量減少、賃上げによる労務費増加などのマイナス影響により、110億円を予想しています。
2-4 通期 連結事業別セグメント
通期の事業別予想です。
プレス・樹脂事業の売上高は、物量減少により1,430億円、営業利益は70億円と予想しています。
バルブ事業の売上高は565億円、営業利益は40億円と予想しています。
2-5 通期 連結地域別セグメント
通期の地域別予想です。
日本の売上高は730億円、営業利益は43億円、欧米の売上高は905億円、営業利益は32億円、アジアの売上高は365億円、営業利益は28億円と予想しています。
2-6 連結設備投資・減価償却費
設備投資は、生産準備や改善、更新といった通常投資に加えて、将来の成長に向けた投資を行っています。
2023年度は、大垣地区の新プレス工場建設やバッテリーEV向けの電子膨張弁の生産準備などを含め、315億円の投資を行いました。
2024年度は、後ほど説明するバルブ新工場や金型工場、開発センターの建設投資を含め、300億円を予定しております。
お客さまからの受注拡大や市場の拡大を見据え、生産能力増強を行うとともに、より効率的な生産体制の構築に向けた投資も行い、競争力強化を進めてまいります。
2-7 連結貸借対照表
連結のバランスシートについて説明します。
2023年3月末と比較し、2024年3月末の総資産は343億円増加しました。主な要因は、新プレス工場等の投資や政策保有株式の時価評価により、固定資産が増加したためです。
なお、政策保有株式は順次売却を進めており、2023年度に158億円の売却を実施しました。
また、フランス、韓国の連結子会社に関する固定資産について、将来の回収可能性を慎重に検討した結果、74億円の減損を計上しました。
2-8 連結キャッシュフロー
キャッシュフローについては、グループ内キャッシュマネジメントを強化し、効率的な資金運用を推進しています。
2023年度は工場建設、設備投資によるキャッシュアウトと、政策保有株式売却によるキャッシュインにより、期末の現預金残高は129億円増加しました。
24年度はバルブ新工場、金型工場、開発センターの建設などのため、現預金残高は140億円減少します。
2-9 株主還元
株主還元について説明します。
2023年度の配当は、3月18日に修正開示しました配当予想のとおり、特別配当27円を含む期末配当55円、年間配当77円です。2024年度の配当金につきましては、年間52円を予定しています。
また、決算発表と合わせて開示しました自己株取得ですが、株主還元および資本効率の向上、機動的な資本政策遂行を目的として、150万株、20億円を上限に実施します。
これにより、総還元性向は51パーセントを予想しています。
3-1 中期経営計画 NEXUS-26 進捗
ここからは、昨年発表しました中期経営計画「NEXUS-26」の進捗を説明します。
「NEXUS-26」では、2026年度を最終年度として、財務価値目標と非財務価値目標を設定しました。
それぞれの目標についての進捗はご覧のとおりです。先ほど通期予想でもご説明したとおり、2024年度はいったん減収減益となりますが、目標の達成に向けた取り組みを進めてまいります。
3-2 事業別進捗:プレス・樹脂事業
次に、事業ごとの進捗を説明します。
プレス・樹脂事業では、技術、製品の開発や拡販は順調に進んでおり、売上の拡大に向けた生産体制の構築を推進しています。
プレス事業では、超ハイテン技術を活かした電動車向け新製品や既存プレス部品の拡販による、受注の拡大をめざしています。昨年立ち上げたプレスの新工場は、順次稼働率を上げていき、売上・利益に寄与する見通しです。
樹脂事業についても、バッテリーEV向けの製品開発、拡販が進んでおり、物量増加に向けた生産体制の構築に取り組んでいきます。今後のバッテリーEV動向も見極めながら、需要に合った生産能力の増強を進めてまいります。
3-3 事業別進捗:バルブ事業
バルブ事業では、熱マネジメントシステム用、電子膨張弁をはじめとした、電動車向けバルブの開発、拡販を進めており、継続して受注を獲得しています。
4月17日に発表させていただきましたが、今後の電動化に伴う市場拡大を見据え、事業拡大と競争力強化のため、電動車向けバルブを生産する工場を建設いたします。
建設にあたっては、ものづくりの基本を追求するとともに、設備の高効率化によるCO2排出量の低減に加え、太陽光発電システム等の導入によりカーボンニュートラル実現に取り組んでまいります。
また、今後の電子膨張弁の事業展開については、欧米を中心に海外拠点も活用しながら製品ラインナップの拡大と拡販を進めることとしており、今回建設する新工場を開発・生産を主導するグローバルマザー工場として、電子膨張弁をはじめとする、電動車向けバルブ製品を生産する予定です。
3-4 事業別進捗:新事業
新事業では、モビリティ以外の分野での柱を作っていくために、さまざまな挑戦を続けています。昨年度には、7件の新商品をリリースし、今後も自社リソーセスによる開発と、オープンイノベーションも活用しながら、新商品・新事業への挑戦を継続していきます。
これまでにリリースしてきた、牛体調モニタリングシステムや物流管理システムなどのポテンシャルのある商品は、認知度を高めるために、それぞれの商品特性に合わせた効果的な拡販活動を進めております。
3-5 事業別進捗:新事業
IoT技術を活かした、顧客の課題解決に貢献する商品を紹介します。
マルチセンシングロガー「e-WAVES」は、6種類のセンサーで輸送状況の監視・分析が可能で、医薬品業界で求められるGDPガイドラインや食品業界でのHACCP(ハサップ)に適合する、精度の高い輸送の品質管理に最適です。
温度と位置のみに計測項目を絞ったエントリーモデルから、再生医療製品にも適したハイエンドモデルまで商品ラインナップを拡充することで、幅広いニーズにお応えし、採用を拡大しています。
ご覧の「エネグラフ」は5月9日に、販売を開始します。メーターから使用量データを収集するエッジデバイスを取り付けることで、電気やガス、エアー、水などを利用する生産設備から使用量データを収集し、クラウドを通じてリアルタイムに見える化し、工場の省エネ活動を支援します。
もともとは、当社の工場でのDX取り組みとして、社内で開発し使用していたシステムですが、安価で手軽に導入できるため、外販用のパッケージとして販売することとしました。
3-6 事業別進捗:新事業
新事業では、社会課題解決に結びつくビジネスを軸に開発を進めています。新しい発想で、多様な商品を開発しており、昨年度にリリースした新商品を紹介します。
嚥下チェッカー「ゴック音」は、唾液の飲み込み回数を簡単に計測でき、オーラルフレイルチェックを手軽に行える商品です。主な販売先として、歯科医師やドラッグストアなどを想定しています。
社内の製造現場で運用している改善ツールをパッケージ化した「直Q楽R(ちょっきゅうらくらく)」は、現場のペーパーレス化、品質向上、業務効率向上を簡単に低価格で実現できる商品です。
「MATOMAT(マトマット)」は、樹脂製品を生産する際に発生するウレタンの端材を活用し、アップサイクルした防災用マットです。通常時は学校の椅子のクッションとして使用し、非常時にはつなぎ合わせることでマットとして利用できるため、保管用のスペースがなくても、災害に備えることができる商品です。
また、開発部門以外でも取り組んでいる活動として、社内公募型の新規事業創出プロジェクトを立ち上げています。
初年度である昨年は100名を超える社員が参加し、94件のアイデアが寄せられました。その中から、仮説構築、審査を経て、現在2つのチームが事業化検証を行っています。このプロジェクトは継続的に行っており、今は2024年度の新規アイデア募集を行っているところです。
長年、事業活動を行っていると、社員自らが自分たちの事業ドメインを固定化してしまい、新しい領域に挑戦しづらい環境に陥ってしまうことがあるかと思いますが、会社の中において、おもしろいコア技術、おもしろい人財を見つけることが大切なのではないかと思います。
新しい発想で新しいことに取り組むことは、やってみると大変ですが、おもしろいことばかりであると気がつきます。変化が大きく、先行きが不透明な時代において、「過去の常識にとらわれることなく、新たな発想で挑戦すること、変わり続けていくことが当たり前」という企業文化を育んでいきたいと考えています。
3-7 資本効率向上に向けた取組み
資本効率向上に向けた取り組みを説明します。
当社は財務価値目標として、2026年度にROE8パーセント以上、2030年度10パーセント以上を実現し、PBRを向上することをめざしています。
これまでご説明した各事業での成長戦略に加えて、収益体質、基盤の強化、投資効率の向上、バランスシートマネジメントを進めることで、資本効率を向上してまいります。
3-8 サステナビリティ:人財戦略の進捗
人財戦略の進捗について、説明します。
人財戦略は中長期経営構想の基盤であり、「従業員が、それぞれの思いをもって力が発揮でき、持続可能なあしたのために新しい価値をつくっていく」というパーパスを実現するための重要な取り組みであると考えており、昨年、従業員エンゲージメント調査を実施し、経営目標を設定しました。
肯定的回答率を指標とし、2023年度実績48.2パーセントに対して、2026年度は60パーセント、2030年度には70パーセントをめざします。
また、調査内容を分析することで、エンゲージメントを向上していくための4つの重点取り組みをテーマアップしております。
会社のビジョンやトップの思いに共感してもらうこと、事業戦略を自分事として行動できるようにするための日々の会話を大切にすること、また、会話を通じて、上司・同僚との信頼関係が構築され、心理的安全性が高まっていくことで、誰もが前向きな意見を気兼ねなく発言し、提案できるようになるため、互いに高め合える職場が実現できます。
そして、従業員が仕事にやりがいを感じ、成長・学びを実感できれば、活力の源となり、パフォーマンスの向上にもつながります。
これら4つの重点取り組みを推進することで、従業員エンゲージメントを高め、事業の成長、企業価値の向上につながるという好循環を生み出していきたいと思います。
3-9 サステナビリティ:CO2削減の取り組み
環境負荷の極小化は製造業として重要な課題であり、長期目標として「PACIFIC環境チャレンジ2050」を掲げて取り組んでおり、CO2排出量については、削減の取り組みと情報開示の充実を進めています。
昨年完成した新プレス工場は11月より本格的に稼働しておりますが、カーボンニュートラル実現をめざしたマザー工場として、3メガワット級の太陽光発電設備の増設や高効率設備の導入、自働化による効率化など、省エネを推進しています。
情報開示の面では、環境課題に関する取り組みや情報開示の質を評価するCDPより、気候変動部門で4年連続、リーダーシップレベル「Aマイナス」の評価を受けました。加えて、2023年のサプライヤー・エンゲージメント評価においては、最高評価の「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」にも選定されました。
また、当社グループのサプライチェーン全体において、温室効果ガス排出量削減や気候変動リスクの緩和に向けて取り組んでいることに加えて、CO2排出量の第三者検証を導入するなど、開示の充実にも取り組んでおり、外部機関からも評価されています。
3-10 サステナビリティ:ステークホルダーとの信頼醸成
ステークホルダーとの信頼醸成の取り組みについて説明します。
能登半島地震の被災地の石川県七尾市など4つの自治体、30校の小中学校に対し、先ほどご説明した防災マットを6,000枚寄贈しました。一日も早い復興をお祈りするとともに、今後の防災や防災教育にも役立てていただければと思います。
そのほかにもTPMSの啓発キャンペーン、地域スポーツ振興、次世代を担う子どもたちの支援などを通じて、地域社会の発展に貢献し、絆を深めています。
今後も中長期の成長と、顧客・社会課題解決に向けた取り組みを統合的に推進し、企業価値の向上をめざしてまいります。以上で、説明を終わります。
Q&A
質疑応答はこちらに掲載されています。
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