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双信電機のニュース
―電力や通信網、GPSなど社会インフラへの影響を警戒、電磁波や停電への備え急げ―
総務省は6月21日、「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」の報告書を発表した。これによると、「太陽フレア」爆発などの極端な宇宙天気現象が通信・放送・測位、人工衛星、航空無線、電力などの社会インフラに異常を発生させ、社会経済活動に多大な影響を与える恐れがあるとして、これら宇宙天気現象を現実のリスクとして捉え、国家全体としての危機管理の必要性を提言している。
日本では、これまであまり問題視されてこなかったが、金子恭之総務相は社会的な影響を考慮した新たな予報の整備など必要な取り組みを進める考えを示しており、今後対策市場が活発化する可能性は十分にある。関連銘柄には今から注目が必要だろう。
●太陽フレアとは
太陽フレアとは、太陽の表面で発生する爆発現象のこと。太陽には活動の周期があるが、その活動が活発になると、表面で巨大な爆発現象が起きるようになり、この現象が「太陽フレア」と呼ばれている。規模が小さなものは毎日、大規模なものは十数年程度の間隔で発生しているが、大規模な太陽フレアが発生すると、太陽嵐と呼ばれる現象に発展し、電磁波や高エネルギーの粒子、電気を帯びたガスなどが放出される。これらは早いものだと約8分で、遅くとも数日の間に地球にも届き、地球の地磁気や電離圏に大きな乱れを生じさせ、社会インフラなどに大きな影響をもたらすことがあるという。
例えば、1989年3月に起こった太陽フレアでは大規模な磁気嵐が発生。それに伴いカナダのケベック州では保護リレーの不要動作による送電システム障害が発生し、約9時間にわたり約600万人が影響を受ける停電が発生したほか、アメリカでは気象衛星「GOES」との通信が途絶えたことによって気象データが消失した。また、2003年10月には、南アフリカ共和国で変圧器の鉄心付近の加熱により変圧器の焼損が発生したほか、スウェーデンでも送電システム障害が発生し、大規模な停電が起きている。
●最悪シナリオで予測される被害
前述の報告書では、「100年に1回またはそれ以下の頻度で発生する極端な宇宙天気現象がもたらす『最悪シナリオ』を検討した結果」として、携帯電話やテレビが2週間にわたって断続的に利用できなくなったりする事態が起こるとされている。また、防災行政無線、消防無線、警察無線、タクシー無線、列車無線などの通信システムに多大な支障が生じ、これらを用いる都道府県・市町村・公共機関などの公共サービスの維持が困難となるほか、110番や119番などの緊急通報もつながりにくい事態になるとしている。
更に、GPSの精度が大幅に低下し、航空運用では世界的に運行見合わせや減便が多発すると予測。カーナビや自動運転なども正常に機能しなくなり、最大で数十メートルの誤差が生じ、その結果衝突事故が発生したり、安全確保のための運行見合わせが断続的に発生したりするとしている。
電力分野でも設備上・運用上の対策を措置していない電力インフラでは、広域停電が発生すると予想している。電力供給の途絶や逼迫に伴い社会経済や全産業が広範囲に影響を受けるもようだ。
●25年にも大規模な太陽フレアが発生か
NASA(米航空宇宙局)とNOAA(米国海洋大気庁)の専門家グループによると、最も近い太陽活動の極大期は25年7月ごろになると予測されており、大規模な太陽フレアが起こる可能性が指摘されている。既に太陽活動の活発化は始まっており、米スペースX社が2月3日に打ち上げた人工衛星「スターリンク」49基のうち、太陽活動によって引き起こされた磁気嵐の影響で40基を喪失したことは記憶に新しい。
太陽フレア対策は間近に迫った課題であるが、これまで日本ではあまり俎上に上ることはなかった。ただ、社会インフラに与える影響が大きいことから欧米や中国などは既に対策に乗り出しており、日本でも対策が急がれている。
政府は警報に関する体制の強化や宇宙天気予報の精度向上などに取り組むとしているが、企業サイドでも特に通信業界、放送業界、電力業界、航空業界、宇宙・衛星システム業界、衛星測位関連業界の関係企業は、速やかに行動に着手することが必要としており、今後急速に対策関連市場が立ち上がりそうだ。
●電磁波への対策製品や工事銘柄に注目
注目されるのは、電磁波への対策に関連する銘柄だ。
技研ホールディングス <1443> [東証S]は子会社の技研興業が医療施設向けの放射線防護・電磁波シールド 工事などを手掛けている。また、外来の電磁波を遮蔽し、かつ内部で発生させた電磁波を外部へ漏洩させないシールドルームなどの開発・製作も行っている。
巴コーポレーション <1921> [東証S]は、建築空間に電磁波シールドを提供し電磁波の漏洩と妨害電磁波の侵入防止を実現。また、空間全体を金属でシールドし、天井・壁の5面あるいは床を含めた6面に電波吸収材を施工した電波暗室の施工も手掛ける。13年からはTDK <6762> [東証P]製電波暗室の指定施工会社として、直接発注者から電波暗室設備全体を請け負う体制に移行している。
帝人 <3401> [東証P]は、高い透明度と日射遮断性能を持ちつつ、電磁波シールド機能を併せ持ったフィルム「レフテル」を展開。特に開口部の対策として非常に有効としている。また、EMI(電磁妨害)シールド性を持った炭素繊維複合材料も手掛けている。
セーレン <3569> [東証P]は、銅線などでつくられた「導電メッシュ」をガラスで挟み、優れた光透過性と高い電磁波シールド性能をあわせ持った「電磁波シールドウィンドウ」を開発。MRIルームの窓や医療機器、測定・制御装置、試験装置など電子機器の表示ウィンドウへ展開を図っている。
三井金属 <5706> [東証P]は、子会社の三井金属エンジニアリングが電磁波の侵入・放出を効果的に遮蔽する「エミシャット」を展開。電磁遮蔽機能と防食機能を兼ね備えた導電性亜鉛箔テープもあわせて医療機関などへの納入実績も多い。
タツタ電線 <5809> [東証P]はスマートフォン向け電磁波シールドフィルムで世界的に圧倒的なシェアを有している。更にここで培った技術をもとに電気自動車(EV)向けの電磁波シールドフィルムを開発し応用範囲を広げている。
このほか、電磁波シールド機能を持つ「CARMIX電磁波吸収体」を開発した阿波製紙 <3896> [東証S]や、透明導電膜や金属薄膜を使った電磁波遮断コーティング「EMIシールド膜」を手掛けるジオマテック <6907> [東証S]、半導体製造装置や工作機械、医療機器などから発生する電磁波ノイズ対策用製品としてノイズフィルターを展開する双信電機 <6938> [東証S]にも注目。更に、停電対策として、明電舎 <6508> [東証P]、古河電池 <6937> [東証P]、富士電機 <6504> [東証P]なども関連銘柄に挙げられよう。
株探ニュース
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