トレックス・セミコンダクターのニュース
【QAあり】トレックス・セミコンダクター、トレックスは小型・省電力製品、フェニテックはパワー半導体で回復目指す
アジェンダ
前川貴氏(以下、前川):トレックス・セミコンダクター取締役執行役員の前川です。本日はお時間をいただきありがとうございます。それではさっそく、説明を開始します。よろしくお願いします。
本日のアジェンダです。
会社紹介、事業内容、2025年3月期の直近の業績と今後の予想、成長戦略、株主還元についてご説明します。
会社概要
前川:会社概要です。
1995年に設立し、2014年にJASDAQスタンダード市場へ上場しました。東証二部、一部を経て、2022年4月に東証プライム市場に移行した半導体メーカーです。
本社は東京都中央区にあり、トレックス・セミコンダクターという横文字の会社名ですが、日本の企業です。現在の代表取締役社長は木村岳史です。資本金は約30億円で、事業内容は半導体デバイスの開発や設計製造、販売です。
従業員数はトレックスグループを含めると1,040名で、単体では188名です。単元株式数は100株で、決算期は3月末日です。
沿革
前川:沿革です。
スライドに「電源IC一筋」と記載のとおり、半導体の分野の中でも、電源ICという分野で製品を展開しています。当社の特徴は、省電力・小型化の技術で事業を続けているところです。それを一番の売りにしています。
スライド左側に示しているのは、本社機能の沿革です。先ほど「本社は東京都中央区にあります」とお話ししましたが、設立自体は岡山県です。当時から東京都に本社を設置し、その後大阪府に関西支社、北海道に札幌技術センターと国内で進めながら上場し、現在の状況になっています。
スライド右側に示しているのは、当社の販売子会社やR&Dセンターなど、いわゆるグループ会社になります。1995年に国内に本社設立後、まずシンガポールに販売会社を設立しています。
当時、ソニーの「ウォークマン」に当社の商品が使用されたこともあり、マレーシア工場への営業先としてシンガポールに会社を設立しました。
その後当社のグループを含めてヒットし、海外への展開を強化しました。後に、TOREX USA、ヨーロッパ、上海、香港、台湾に会社を設立しました。直近ではベトナムに工場を、アメリカにR&Dセンターを設立しました。
また、フェニテックセミコンダクターを100パーセント子会社化したところが、大きなポイントです。
トレックス・セミコンダクターグループの構成
前川:事業内容についてご説明します。
当社は半導体メーカーですが、トレックス・セミコンダクターとフェニテックセミコンダクターの2つが大きな事業の柱になっています。
本体であるトレックスは、ファブレスであり、工場を持たないアナログ電源ICを専業にしている会社です。来年の2025年で設立30年になります。
トレックスの強みは、省電力・小型、アナログ回路を使う技術を継続して蓄積している点です。アナログ電源に特化したものを得意としています。
当社はファブレスですが、マーケティングから営業活動、設計・生産・納期管理など、工場で生産する機能以外は品質保証もすべて有しています。
ファブレスであるメリットとして、使用したい半導体工場がある程度使用できるため、特徴あるプロセスを使いながら、製品を設計、製造、生産できる点が挙げられます。品質保証部門も持っており、非常に高い品質を維持できています。
先ほどお話ししたとおり、ワールドワイドな製品を展開しています。
対照的に、フェニテックセミコンダクターは、いわゆる半導体受託専業に分類される工場会社です。ファウンドリと呼ばれます。
ディスクリートやパワーデバイスをメインに生産しています。また、トレックスは、CMOSアナログのプロセスを使用しています。
フェニテックは、トレックスよりも長い50年以上の歴史を持っています。半導体において長く日本を支えている会社のため、品質面は非常に信頼がおけると思っています。
最近では、車載であるIATF16949の認証を受けた工場を展開しています。後ほどご説明しますが、ファウンドリだけではなく、オリジナル製品も行っています。
トレックスとフェニテックを「いいとこ取り」だと考え、グループとして展開しています。
どのような点が「いいとこ取り」かというと、トレックスにとっては、使用したいファブリケーション(製造工場)を使える点です。
フェニテックにとっては、ファウンドリだと市場情報が入りにくいですが、市場情報はトレックスから得ることができるという点です。
トレックスは親会社ですが、売上は15パーセント程度しかありません。独立性はフェニテックも強く、残りの85パーセントはトレックス以外のお客さまと事業を展開しています。
トレックスは子会社であるフェニテックに対し、約70パーセントから80パーセント程度を委託しています。残りの20パーセントから30パーセントは、フェニテック以外のファブリケーションを使い、フレキシブルに展開することで、このグループが成り立っています。
拠点
前川:現在、当社のグループ会社はワールドワイドに展開しています。
スライドの青色で示している部分が販売拠点で、トレックスが中心となります。
ヨーロッパと中東周りをカバーするのが、イギリスに設置しているトレックスヨーロッパです。ASEANをカバーするのが、トレックスシンガポールです。中国の上海、深圳、香港のほかに、台湾にもオフィスがあります。アメリカは、カリフォルニアのアーバインに販売拠点を持っており、R&Dセンターも設置しています。
国内は東京が本社で、大阪府に関西支社、北海道に札幌センター、愛知県に名古屋営業所があります。
フェニテックは、岡山県に第1工場と第2工場、鹿児島県にも工場があります。営業所は京都府にあり、基本的にはワールドワイドにカバーしています。
トレックスの事業内容①
前川:トレックスの事業内容です。
当社がトレックスとフェニテックに分けて展開する、電源ICについてご説明します。スライド左側の図は、パソコンを例にしています。
電源ICとは、いわゆるACアダプターのような黒い箱型のものではありません。例えばパソコンの中にある緑色の電子ボードには、非常に多くのマイコンやメモリ、Wi-FiやBluetooth、チップセットなどが搭載されており、それぞれに必要な電源と電圧が異なります。
当社の電源ICは、適切な電圧や電流を供給するだけではなく、ノイズを抑えたり、消費電力を落としたりなど、さまざまなニーズに合わせて電源を供給します。緑色のボードには、通常、何系統かの電源ICが使用されます。
そのようなものを展開しているメーカーは何社かありますが、トレックスの一番の特徴は小型・省電力です。
大きさにおいては、0.5ミリ角程度のものから、シャープペンシルの芯より薄い0.3ミリ程度のものまで展開しており、小型の機器に入れやすいようにしています。
小型にする理由として、携帯電話やスマートフォンに代表されるように、多くがバッテリー駆動である点が挙げられます。さらに小型のBluetoothのイヤホンは、小さい上に何時間も迫力ある音を再生でき、非常に省電力化されています。そのようなところに当社の製品が採用されやすいです。
以上のことから、小型・省電力を特に売りにしています。
トレックスの事業内容②
前川:先ほど、さまざまな分野に使用されているとお伝えしました。イメージしやすいのは、緑の電子基板です。上に電子部品が搭載されていると、必ずいくつかの電源ICが必要になります。
スライドに記載しているような家電、医療品、ウェアラブル機器、産業機器など、実はありとあらゆるものにマイコンがあります。マイコン、インターフェース、ポートがあれば必ず電源ICが必要になります。最近ではWi-Fi、Bluetoothにも電源ICが必要であり、どこにでも使用されています。
特に注目されている分野は、車です。自動運転やさまざまなものを通信する手段として一気に電装化が進んでおり、非常に大きく成長する分野だと思っています。
フェニテックの事業内容①
前川:フェニテックの事業内容です。
ファウンドリと呼ばれる、いわゆる受託生産をする工場です。フェニテックがシリコンのウェハを購入し、その上にディスクリートや電源ICなどを焼き付けてウェハを製造します。CMOSといわれるプロセスよりは、ディスクリートのほうが得意な会社です。
最近はディスクリートの中でも、パワー半導体といわれる、省電力で高電圧製品への特化にシフトしている状況です。さまざまな会社のものを、受託されて作っています。
フェニテックの事業内容②
前川:ファウンドリの特徴として、レシピを持ち込みそのまま生産するものもありますが、自分たちで作り、販売するものもあります。
実はフェニテックの場合は、半分は受託で、半分はフェニテックオリジナルのものを、他社ブランドで販売しています。
購入者はフェニテックで購入し、自社ブランドで販売することができます。自社の製品ラインナップを増やすことを考えた場合、自分たちのブランドイメージが向上します。
この仕組みを成立させるには技術力が必要です。自社の技術力を持っていることが、フェニテックの特徴となります。
トレックスグループのターゲット市場
前川:トレックスグループの柱になる2つの会社のまとめです。トレックスはファブレスで、フェニテックはファウンドリです。
現在、主な製品として、トレックスは電源IC、フェニテックはディスクリート、パワー半導体、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、次世代の酸化ガリウム(Ga₂O₃)を手がけています。どちらも省電力に貢献するキーデバイスを提供する方向性で進んでいます。
トレックスの主な製品は、電子部品用の電源ICです。
今後の重点市場として、産業機器の5GやIoTモジュール、全固体電池、車載機器の電子制御系、自動運転、ADAS、車載カメラなど、電子部品向けの電源をターゲットにしています。
フェニテックの主な製品は、パワー半導体です。
今後の重点市場として、産業機器のモーター系産業ロボット、鉄道、インバータ、発電機、車載機器のEV向け製品など、非常にハイパワーな半導体を中心にターゲットにしており、お客さまも多くなっています。
方向性は同じですが、取り組んでいるものは異なります。
2025年3月期 第2四半期業績概要(連結)
前川:第2四半期の業績についてご説明します。
売上高は前年比マイナス5.5パーセントの125億2,400万円です。営業利益は前年比プラス227.2パーセントの3億3,600万円で大幅に成長しています。経常利益は6,900万円、純利益は500万円と、こちらも増加しました。
海外売上高比率は、昨年の68パーセントに対し、今年は70パーセントです。トレックスグループは、海外で非常に多くの商品を販売しています。
トレックスも販売拠点がありますが、フェニテックも海外のお客さまが70パーセントと、同程度の売上を占めています。昨年の為替レートは141円で、今年は152円です。減価償却費は10億8,900万円、設備投資は16億9,600万円です。
2025年3月期 第2四半期業績 売上高
前川:売上高の内訳をご説明します。
スライドのグラフの左側が昨年の上期、右側が今年の上期です。濃い青部分がトレックス、薄い青部分がフェニテックです。どちらもトータルでは下がっている状況です。
具体的にはスライドに記載のとおり、トレックスは、中国市場が回復傾向にあるものの、日本・欧州市場の落ち込みが続き減収となりました。また、産業機器、一般民生機器分野が減少しました。フェニテックは、中国市場が回復したものの、それ以外の地域が減少し減収となりました。産業機器、車載機器分野も減少しています。売上高はスライドに記載のとおりです。
2025年3月期 第2四半期業績 営業利益
前川:営業利益についてご説明します。
利益面は、昨年は8,900万円でしたが、今年は3億3,600万円と上昇しています。トレックスは為替の影響と棚卸評価損の戻りが発生し、増益となりました。
為替の影響は、昨年と比較すると10円ほど為替が安くなっていますが、当社は約70パーセントがドル売りとなっているため、良くなっていることです。
前期は非常に在庫が多く、なかなか売れない見込みで、棚卸評価損をマイナス5億7,000万円発生させてしまいました。しかし、今年は売れていることもあり、プラス3億1,000万円ほど戻ってきています。
フェニテックは、売上の減収に伴い減益となりました。
売上高・営業利益の四半期推移
前川:スライドではこれまでの四半期ごとのトレンドをお示ししています。
スライドのグラフの一番右に位置するのが直近の第2四半期です。2年ほど前から横ばいに近い状態が続いており、なかなか回復の傾向が見られない状況です。
2025年3月期 業績予想 P/L概要及び主要指標
前川:2025年3月期の業績予想です。
当初、5月の段階で売上高280億円、営業利益10億円の予想でしたが、下期に上がる可能性はまだ強くないこと、上期と同じ値を折り返すイメージをしていることから、売上高は250億円、営業利益は4億円に下方修正しています。
半導体市場の成長性について①
前川:成長戦略についてご説明します。
まず半導体市場の成長性についてです。経産省の資料によると、半導体全体の市場規模は2020年から2030年に向けて倍増し、50兆円から100兆円の規模になることが見込まれています。
2025年の現段階では、この数字はなかなかシビアで厳しいと思いますが、そのような展望があるということです。
半導体市場の成長性について②
前川:当社が展開しているアナログの予想です。
アナログICとディスクリートの分野に特化して見ると、2020年と2030年を比較すると、トレックスの製品群は約2.1倍になる予想です。
一方で、フェニテックにおいては、今後主力にしようとしているパワー半導体は4.7倍に成長することが予想されています。当社としてはぜひ今後に期待し、成長分野に積極的に取り組んでいきたいです。
トレックス・セミコンダクターの電源ICの“強み”
前川:具体的な戦略についてご説明します。
トレックスは電源ICの中でもDC/DCコンバータ製品の開発を得意としています。この商品は回路が難しいため簡単にコピーされにくく、開発にかなり時間がかかる商品です。当社はそれを、さらに小型・省電力・低ノイズの3つに特化して製品展開しています。
コイルとコンバータを組み合わせたコイル一体型製品である「"micro DC/DC"コンバータ」のシリーズ展開に非常に力を入れており、ラインナップもかなり増えてきています。
コイル一体型 XCLシリーズ 形状紹介
前川:コイル一体型「XCL」シリーズについてご紹介します。
ポケットタイプは、ICをコイルで覆ってしまう方法です。スタックタイプは、パッケージの中でコイルの上にシリコンを載せて同時に実装します。マルチプルタイプは、横に置きます。クールポストタイプは、放熱に適しており、熱を逃しやすいようにポストを立ててコイルとICを一体化します。
当社はこのような4つのタイプをシリーズ化して展開しています。このような展開をしているのはトレックスしかないと考えており、これらの技術に特化しています。
小型/低EMIを実現するTOREXのコイル一体型 "micro DC/DC"
前川:当社の製品の1つに、被せるタイプのポケットコイルがあります。コイルでICを被せることで輻射ノイズが外に出ないため、二次的にも非常に良いというデータが出ています。
すでに完成から10年以上経つため、いろいろなところで採用していただいていています。特に、通信系高周波のノイズがシールドされて抑えられているため、Wi-FiやBluetoothといった通信系のチップセットに使われやすくなっています。
トレックス製品の受賞歴
前川:2018年から2023年まで、DC/DCコンバータだけで4つの賞を受賞しています。
TOREX Business and Product Direction
前川:トレックスの製品展開についてご説明します。
今後、産業機器向けのデータセンターや、制御・データ処理系向け、車載、医療機器向けといった、特に高付加価値を要求される分野でDC/DCコンバータを展開していきたいと考えています。
コイルと一体型だと値段が高くなるため、きちんと良さを説明し、なおかつこの技術を必要としてもらえるような分野をターゲットとしています。
Li 2次電池を使用した、低電圧動作の高性能マイコンの電源構成 例
前川:実際の使用例について、もう少し深掘りしてご説明します。
スライドはLi 2次電池を使用した低電圧動作の高性能マイコンの電源構成例です。右側の白い四角の中に「MPU/Memory FPGA」と青字で記載しているのがマイコンです。スライドの薄い青枠部分は、トレックスの製品で使われる機器です。
実際、1つのマイコンだけでも4つか5つの系統が使用されており、数個レベルでDC/DCコンバータが使用されています。充電のソリューションが含まれていますが、こちらも当社の1つのターゲットとなっています。
トレックス製品のコラボレーション/ソリューション
前川:もう1つ、トレックス製品のソリューションについてご紹介します。
スライドには、イーアールアイさまと日本ガイシさまとトレックスの3社がコラボして開発した「環境電源デモボード」を掲載しています。
BluetoothのLow Energyのチップを使用し、エナジーハーベストという、いわゆる震動や太陽光パネルなど、自然から非常に微力なエネルギーを取り込むソリューション案となっています。
このような分野を研究されていたり、実用されているところでデモボードを利用すると、一気に基板を作ることができます。
スライド右側の「EsBLE TYPE2」の図には、中央に日本ガイシさまのラミネートされた薄い「EnerCera(エナセラ)」が乗っています。これに充電し、例えば夜でもBluetoothの信号を出すことができるようなソリューションを展開しています。
このような製品でまずは初期実験をしてもらえればと思い、実験ボードとしてお出ししました。
【同期整流 降圧DC/DCコンバータ】まもなくリリースの製品
前川:まもなくリリースする製品を1つご紹介します。
外付けの中耐圧のコイルで、これはエアコンのような製品に使用するDC/DCコンバータとなっています。
汎用的な電源ICやこのようなDC/DCコンバータを含め、まだまだラインナップを増やしていこうと考えています。
【コイル一体型 昇圧DC/DCコンバータ】新製品紹介
前川:スライドの製品は先ほどご紹介した中耐圧のものとは真逆で、電池1本で動くところを狙っています。アルカリやニッケル水素の電池1本で0.6ボルトから起動がかけられるような機器向けのDC/DCコンバータです。
36ボルトの製品も新しいラインの低電圧の製品も、どちらも新製品としてまだまだ開発している状況です。今後もDC/DCコンバータを世の中にお出ししていきたいと思っています。
パワー半導体 製品開発/製品ラインナップを強化
前川:パワーデバイスの製品開発についてご説明します。
フェニテックが、パワーデバイスにかなり力を入れています。トレックスとして、今まではあまりパワーデバイスの販売はしてこなかったのですが、子会社がラインナップを持っているため、当社も徐々に展開していきたいと考えています。
起爆剤にしたいと思っているのは、今流行りのSiCです。フェニテックはオリジナル製品の「SiC(シリコンカーバイト)」を販売するところから始めるため、我々もパワーデバイスの製品展開を進めていきたいと思っています。
フェニテック new Vision
前川:フェニテックの成長戦略についてお話しします。
2024年1月にビジョンの刷新をしました。ファウンドリ事業を通じ、すべてのステークホルダーから信頼されることにより持続的成長を目指します。
ファウンドリ事業なので、お客さまとのお付き合いが非常に長くなります。一度始めたら5年から10年以上のお付き合いとなるため、相互間の信頼関係としてのパートナーシップを結んでいき、自分たちの中で技術を作っていくビジョンになっています。
鹿児島工場の状況.1
前川:工場の設備投資も実施し、キャパシティを増やしています。
建屋自体は、2年前にトレックスのアナログIC向けに総額約44億円をかけ、鹿児島工場の生産体制を増強するかたちで5号館まで設立しました。そこに新たにクリーンルームを増設し、装置を入れてキャパシティを増やしました。
トレックス向けの生産は約3倍に増えており、トレックス以外でも空いているスペースに装置を入れさらにキャパシティアップを進めています。工場としての売上増大につながるポイントです。
パワー半導体の開発強化と販売促進
前川:パワーデバイスについてです。
世の中にはシリコンを使ったパワーデバイスと、化合物半導体を使ったパワーデバイスがあります。
両者を比較したときに安価な材料であるシリコンを使用したものには「IGBT」や「MOSFET」と呼ばれるものがあり、こちらの展開を進めています。特に「MOSFET」は、安くて小型なものはどこにでも使用でき、分野的にはまったく廃れていないため、今後もどんどん力を入れていきたいと考えています。
化合物半導体では、最近の省電力開発に必須である炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム、酸化ガリウムの3つについても、試作や量産を進めているところです。
しかし、残念なことに、昨年に対して今年は若干売上高が減少しています。
SiCパワーデバイス開発とファウンドリ事業
前川:SiCパワーデバイスについて、深掘りしてご説明します。
スライドに掲載しているのが、フェニテックのオリジナルSiCです。SBDは、すでに第4世代、いわゆる世の中と同等レベルのものが量産体制に入っています。現在、お客さまにサンプルを提供し、ご評価いただいています。評価が良ければ、採用され売上につながっていくと思います。
続いて、現在取り組んでいるのはSiCを使用したMOSFETです。1,200ボルト、20アンペアのMOSFETを開発しています。すでにプレーナー型は設計とサンプル作成が完了し、2024年11月から世の中にサンプルをご提供し始めたところです。研究レベルではトレンチ型の開発も進めています。
配当方針
前川:株主還元の方針についてご説明します。
当社はできるだけ安定した株主還元を考えています。スライドには、方針である「戦略的投資による成長力の向上を図りつつ、当社を取り巻く経営環境並びに中長期の連結業績および株主資本利益率の水準を踏まえて実施することといたします。
配当につきましては、業績水準を反映した利益配分として連結配当性向20パーセント以上、安定的かつ継続的な株主還元の拡充として株主資本配当率(DOE)3パーセント程度を当面の目標として実施してまいります」と記載しています。
我々の方針は変わっていません。
配当方針
前川:配当です。
今期は中間配当28円、通期配当56円とする予定です。
安定的な配当を継続することを一番に考えており、DOE3.0パーセントを目標としています。
IRサイトのご紹介
前川:決算の発表自体は11月14日に行い、機関投資家さま向けの決算説明会を11月19日に開催しました。スライドに記載のリンクで、弊社社長の説明をはじめ、本日と同様の話が別の目線で見られますので、ぜひ一度ご覧ください。
私からの説明は以上です。ありがとうございました。
質疑応答:電源ICの市場見通しについて
坂本慎太郎氏(以下、坂本):ここからは資料に沿ってご質問したいと思います。まずは電源ICについてです。
いろいろな製品に使われていると思いますが、多いもので1つの製品に何個くらい使われているのでしょうか?
個人的には車が一番多そうだと思っています。
前川:使用個数はさまざまですが、おそらく車の場合は、ECUだけでも1台あたり30個ほど使用しています。ECUはマイコンに搭載されており、マイコン1つあたり電源ICが4個、5個使用されるケースがあります。
1つのマイコンあたり電源ICが30個として、マイコンが4つあれば120個ほどです。ECUではないパネルやセンサーとなると、かなり多いです。今後もどんどん増えていきます。
坂本:高性能であることも理由のひとつだと思いますが、省電力のため、車以外の製品への採用も増えていると思います。実際のところはいかがでしょうか?
前川:採用先はいろいろあります。デジタルカメラのようになくなった市場もありますが、期待しているところでは、買い替え需要に伴うAI搭載のパソコンや、すでに当社が参入しているカメラモジュール、5Gなど、いろいろなところで使用されるようになっています。今後も需要が高まると期待しています。
質疑応答:電源ICのコンペティターについて
坂本:世界トップクラスの小型・省電力電源ICを開発・販売をされているというお話がありました。こちらについて同業他社はあるのでしょうか?
前川:同業他社は世界中にあります。世界で最も大きいのは、テキサス・インスツルメンツ(TI)です。
国内で電源ICを取り扱っているのは、ロームや日清紡マイクロデバイスがコンペティターです。日清紡マイクロデバイスは、新日本無線とリコーを事業統合し展開されています。これらの競合が類似の製品を取り扱っています。
質疑応答:コイル一体型XCLシリーズの特徴について
坂本:コイル一体型XCLシリーズについて、今後についていろいろ教えていただきました。販売数量として多いのはポケットタイプでしょうか?
前川:そうです。ポケットタイプは最も歴史が長く、特徴も含め、数字的にも一番多いです。
ただし、先ほどお伝えしたように、コスト的に安くできているのはスタックタイプです。
また、現状で最も数が出ているのはポケットタイプですが、最近で一番推しているのは、DC/DCコンバーターで発生する熱をうまく逃がしてくれるクールポストタイプです。
坂本:ポケットタイプは熱がこもりやすいのですか?
前川:ポケットタイプも、放熱は悪くはありません。
しかし、さらに電流がほしいとなると大きなコイルやチップを大きくしていくと熱が伴います。ダイレクトにコイルの熱を逃がすためには、クールポストタイプの特徴が活きてくると考えています。
坂本:ポケットタイプは昔から取り扱っていることもあり、得意分野なのでしょうか?
もしくは、業界のスタンダードなのでしょうか?
前川:得意分野というより、当社でしかポケットタイプを取り扱っていません。コンペティターがまったくポケットタイプに入ってきていない状態です。
坂本:そのため、ポケットタイプの製品が多いということですね。非常によくわかりました。
質疑応答:パワー半導体の成長性について
坂本:続いて、パワー半導体の強化についておうかがいします。
新製品は従来品や他社製品にない特徴があるのでしょうか? もしくは、優位性があるため、さらに開発したということでしょうか?
前川:当社は、パワーデバイスに関しては後発のため、他社に先んじてというよりも追いかけている最中です。世の中に同じようなものが多くある状況です。
ただし、シリコンカーバイド自体を供給するメーカーはまだ少なく、フェニテックはそこに注目して取り組んでおり、当社は親会社として、市場に供給していきたいと思っています。
今後はリーズナブルな価格や汎用性といったところに持っていきたいですが、まずは市場を調べている段階というのが現状です。
坂本:パワー半導体製品を強化する背景に、将来的に拡大する市場であるという見込みもありますか?
前川:おっしゃるとおりです。シリコンカーバイド、窒化ガリウム、酸化ガリウムに注力しており、少なくともシリコンカーバイドは将来性があります。
シリコンの「IGBT」もファウンドリのため、いろいろなラインナップを作れるメリットがあります。それらのうち、どれを自分たちのものとして出していくか選択する必要があります。
シリコンカーバイドは、フェニテックが広島大学と一緒に10年以上前から研究開発し、ようやく物になったため、期待しています。
坂本:こちらのスライドが、将来的な市場予想です。こちらもフェニテックとのシナジーの1つですね。
前川:おっしゃるとおりです。当社は今まで電源ICばかりで、フェニテックはパワー半導体を持っていましたが、やはり販売先の顧客層がまったく違います。電源ICを販売したメーカーにパワー半導体を持っていっても毛色が違います。
しかし、当社がフェニテックからパワー半導体を仕入れられることはメリットといえます。
今後は当社とフェイス・トゥ・フェイスでお付き合いいただけるお客さまの開拓を進めていきます。大きな市場なので、期待をしています。
質疑応答:中国事業の利益割合について
荒井沙織氏(以下、荒井):「中国事業の利益割合を教えてください」というご質問です。
前川:定量的にはお答えしにくいところですが、過去、アジアにおけるマーケットの多くは中国にありました。売上が高かったため利益も一定額ありましたが、利益率としては、中国はあまり高くないということが言えます。
全体のうち、30パーセントぐらいがアジアの売上で、アジアのうちの半分以上が中国、残りが台湾などです。
質疑応答:第1四半期と第2四半期の利益率の違いについて
荒井:「第1四半期と第2四半期の利益率の違いの要因について、トレックス、フェニテックそれぞれ教えてください」というご質問です。
前川:どちらにもいえることは、社内レートにおいて為替が第1四半期が155円程度、円高に振れた時期があり第2四半期は150円程度と、為替の問題で落ちています。
その中で、トレックスでは利益が出ましたが、評価損の戻りというプラス要因が生じています。昨年、評価損を大きく出してしまいましたが、今年になって売れたことで、利益が出やすかったということです。
反対に、フェニテックが利益を落としたのは、大きく2つの要因があります。
1つ目は、電力料金が上がってしまったことです。第2四半期は7月から9月の真夏にあたり、工場稼働のため、9,000万円ほど上がりました。
2つ目は、フェニテックで大きな減価償却が始まったことです。先ほど鹿児島工場生産能力増強とお伝えしたように、一昨年まで鹿児島工場への投資を行いました。稼働が始まって以降は減価償却費が増えています。
質疑応答:フェニテックの今後の見通しについて
荒井:「フェニテックの赤字は一時的なものでしょうか? 売上が回復傾向であるにもかかわらず、利益が落ちている理由を教えてください」というご質問です。
前川:トレンドを見ていただくとわかるように、今の売上は損益分岐点付近にあり、赤字と黒字の境目です。売上が上がれば利益も必ず回復するものの、現在はその回復を待っている最中です。
社内的に特に大きな問題を抱えているわけではなく、ある一定の固定費は保っているため、売上が上がれば元に戻り、利益が出ると考えています。
質疑応答:パワー半導体における、市場の在庫調整による影響について
坂本:「売上が上がれば」というお話がありましたが、半導体のサイクルや、コロナ禍で在庫が少な過ぎたことによる生産停滞などのメーカー側の理由もあると思います。
このような仕事をしていると、在庫を溜めたのではないかという話を各社から聞くことも多いのですが、そのような受注減少はありましたか? 先が若干見えている部分もあると思いますが、例えば「最悪期は脱した」というようなイメージで結構なので、教えていただければと思います。
前川:スライドのグラフを見るとわかるように、当社は2023年に、非常に売上が上がっています。このタイミングで、在庫は多く積み上がっています。
お客さまであるセットメーカーの需要があり、取り合いのように作られたという背景があります。現在は一気に反転し、なかなか物作りが行われていない状況です。流通在庫もあり、当社メーカーも在庫を持っています。
トレックスもウエハの在庫を持ってしまっています。売れれば売上につながります。
坂本:製品が溜まっている間にモデルチェンジが起こっても、しばらくは使える部品なのでしょうか?
前川:はい、そのとおりです。当社の汎用品といわれるものは、スペック的には5年から10年、平気で使用できます。ものにより、いわゆる最先端のものは早く消費したい気持ちもありますが、そこまでスペックを求めない場合は、何年か前の製品でも十分に使えます。
坂本:製品自体も小さいですね。
前川:はい、小さいです。しかし、メーカーによっても違いますが、あまり小さくしすぎると、実装装置が特殊になって高くなってしまいます。安く作りたい場合は、数年前の製品を使っていただくと安くできます。
ご質問の答えとしては、当社の製品は5年から10年使用できる製品のため、在庫を持っていること自体にそこまで不安はありません。
質疑応答:「当社の目指す姿(サステナビリティ)」について
荒井:「『当社の目指す姿(サステナビリティ)』について、『Powerfully Small!』と掲げられている経緯と思いを教えてください」というご質問です。
前川:「Powerfully Small!」は、20年ほど前より掲げている理念です。
当社は電源というパワーを供給する部品を提供する会社として、また、その力強さとして「Power」を、当社が得意とする小型・省電力すなわち「Small」という2つのキーワードを合わせています。
CMOS電源ICとパワーデバイスによって、脱炭素社会の実現を目指しています。
スライドに「今までも、これからも」とあるように、企業理念はもとより、世の中の流れにも非常にマッチしており、今後も「Powerfully Small!」を使っていきたいと思っています。
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