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【QAあり】QDレーザ、「RETISSA Display Ⅲ」の成長可能性に期待 中計では全社黒字化を目指し爆発的成長の基盤形成へ

投稿:2023/11/28 17:00

第64回 個人投資家向けIRセミナー

菅原充氏(以下、菅原):本日は多くの方にお集まりいただき、誠にありがとうございます。株式会社QDレーザ代表取締役社長の菅原です。よろしくお願いします。

本日はタイトルに「2024年3月期第2四半期決算説明資料」と銘打っていますが、技術も含め、我々の目指すところや中期計画に向けた流れについてもご紹介します。

Mission

菅原:当社の理念は、「人の可能性を照らせ。」です。言い換えると、「半導体レーザの力で、『できない』を『できる』に変える。」ことを目指しています。具体的には、お客さまが使う装置の性能が一気に向上すること、新しいアプリケーションや新しい市場を創出することを狙っています。

その中でも、スライドに記載の情報処理能力の飛躍的向上、視覚障がい者支援、眼疾患予防、視覚拡張など、できる領域を拡張する挑戦を続けています。この2つが我々の一番コアな目指すところになっています。

本日は、まず我々のレーザデバイスとレーザ網膜投影の事業の構成や、技術を含めてどのような体制で取り組んでいるかをご紹介し、その後、業績ハイライトと中長期の成長に向けてお話しします。

そもそも半導体レーザとは?

菅原:まず、半導体レーザについてです。毎回お話ししている内容になりますが、こちらは1ミリメートルほどの小さなチップで、ピンセットでつまめるかつまめないかくらいのものです。

それに電流を流して電子を注入していくと、あるところからレーザ発振を起こします。つまり、電流を流すと中で光が増幅し、光が行ったり来たりして発振現象を起こすということです。

みなさまの中でご覧になったことがある方はおそらくほとんどいらっしゃらないと思いますが、光通信やCD・DVDに使われる光記録では半導体レーザはコアな技術です。光通信では年間1億台弱、光記録では年間数億台市場に出荷されています。今でも光通信では年間8,000万台ほどが世界中に敷設されており、インターネットを支えています。

QDレーザへの期待

菅原:半導体レーザの歴史は長く、先ほどお伝えした光を増幅する原理は、1915年に一般相対性理論が提唱された頃と同時期にアインシュタインによって提唱されました。1960年には、この原理を使って非常に大きなレーザも発明されました。また、2年後の1962年には半導体レーザが出来上がったというとてつもない進歩があり、その後、光ファイバーが発明され、1980年代には光通信の使用が始まりました。

光ファイバーは、30キロ飛ばしても光の強度が半分にしかならないという、非常に透明な、遠隔地まで情報を運ぶことができ、これが光通信の元です。

この時、日本電信電話公社、富士通、NEC、沖電気工業がさまざまな努力でDFBレーザという、情報を遠くに飛ばすことができる半導体レーザを作りました。それが1995年からのインターネットの始まりにつながっています。これにより、グローバルなネットワークシステムが出来上がったということです。

さらに、2020年には光を使ってネットワークとつながる情報処理デバイスとして、スライドに記載のさまざまな装置が出てきました。5G基地局、スーパーコンピュータ、視覚支援、スマートグラス、データセンタ光化、顔認証、眼底撮影、車載通信、自動運転用LiDAR、バイオ検査、レーザ加工など、これらはすべてレーザがキーデバイスになっています。この一角を占めていくことが我々の狙いです。

我々が2030年までにとらえることができる市場は、半導体レーザ単体で600億円ほどあると思っています。そのうちの一角を占めていくことが、今後10年くらいの目標です。

当社コアテクノロジーと競合優位性

菅原:市場の一角を占めていけると考える理由についてご説明します。我々が自信を持っているのはコア技術です。レーザを作る材料の技術、デバイスを設計する技術、光を制御する技術の3つを持っています。

量子ドットという材料を作る技術は、半導体結晶成長技術です。それを先ほどの非常に小さな半導体の増幅材料にしてレーザの中に閉じ込め、レーザを設計し、レーザ化していくことができます。

さらに、出来上がった1ミリメートルほどのレーザチップを小型モジュールのパッケージに入れ、装置に入れられるようにします。

そして出てきた光を網膜に入れたり、色を変えたりなど、さまざまなことができます。これが我々の競争力の源泉になっています。

量子ドット量産技術の紹介

菅原:先ほど「材料を作る」とお話ししましたが、量産型MBE装置という、量子ドットを作る技術についてご説明します。MBE装置は、宇宙空間並みの高真空の装置です。その中にウエハを置きます。下にセルという金属の筒があり、そこを熱してシャッターを開け閉めすると、1秒間に1原子層分ずつ飛んでいき、下から原子を吹き付けます。これにより、原子レベルで精密制御された材料を作ることができます。こちらは当社の中で行っています。

QDレーザ独自の製造プロセス

菅原:一方、ウエハをチップ化してパッケージ化する後工程は、すべて外部のファブで行っています。国内に半導体レーザチップのファブが3つあり、パッケージはそれ以上にあります。

セミファブレス体制ということで、その特徴として数台から数千万台まで作ることができます。また、固定費がほぼ変動費化されており、固定費は常に一定のまま、大きな設備投資なく作ることができます。

その結果、小さなところから新しいアプリケーションを先頭を切って立ち上げられることが一番の強みだと思っています。

QDレーザが開発・販売する半導体レーザのバリエーション

菅原:現在は4種類のレーザを提供しています。後ほど数字でもご紹介しますが、小型可視レーザは当社の発明で、USAと日本で特許を持っています。また、高出力FPレーザは半導体工場のセンサとして使われ始めています。

DFBレーザは、ウエハの検査、レーザマイクロ加工、脳検査、衛星間通信などで使われます。さらに、量子ドットレーザはシリコンに導入することで光配線用として使われ始めています。

VISIRIUM TECHNOLOGY

菅原:もう1つの事業の柱をご紹介します。レーザ網膜投影という、0.5ミリメートルほどの非常に細いビームを瞳孔を通して眼の中に入れ、網膜に映像を描き上げる技術です。細い穴を通して月を見ると、乱視の方でも月がきれいに見えると思います。まさにその技術を使っており、このピンホール効果とレーザを使うことで網膜前面にくっきりと明るい映像投影ができます。

これにより、角膜や水晶体に頼らず見ることができ、フリーフォーカスで見えるため、ARグラスとして最適です。また、網膜の周辺部でもピントが合うため、網膜の中央は使えないが、端は見えるという網膜症の方に、ピントの合ったくっきりとした画像を届けることができます。

レーザアイウェア事業

菅原:我々は今まで40件の特許を出願し、すでにかなりの件数が登録されています。特許を見るとわかりますが、世界中でこの技術を持って製品にできる企業は当社だけです。

我々は、Low Vision Aidによって見えづらいを「見える」に変えることができます。また、「見える」の健康寿命を延ばすことも可能です。

現在、日本では緑内障で失明される方が毎年数千人いらっしゃいます。今の日本では視野狭窄などを自覚できるような検査システムはまったくないと言っても過言ではありません。それが街中でできるようになるため、早期発見により「見える」の健康維持を延ばすことができます。

また、「見える」の世界を拡張するというのは、まさにスマートグラスのことです。こちらはスマートフォンのディスプレイとして、2026年から2027年頃の事業化を考えています。現在、TDK、NTTなどと一緒に作っているスマートグラスで結実することを期待して進めています。

世界初の網膜投影アイウェア

菅原:ロービジョンの方は世界人口の数パーセントとなっており、2.5億人の方が眼鏡を使っても視力0.3以下の世界を生きています。網膜投影アイウェアは、そのような方々に仕事をする、移動する、楽しむといった面での支援を行い、さらには新しい世界を発見してもらえるようなデバイスにしていきたいと思っています。

RETISSA MEOCHECK

菅原:眼の健康チェックの領域では、今年9月に「RETISSA MEOCHECK」を600台販売しました。いろいろなところに置いて、いつでもどこでも自分で眼の健康チェックができます。今、タクシー業界でも使われ始めており、日本交通社ではこれまで5,000人の眼の健康チェックを行いました。

Vision Health Care分野の立ち上げ

菅原:眼の健康チェックサービスの導入例です。ご質問がありましたら、後ほど詳しくご紹介します。

次世代レーザアイウェアに向けた要素技術開発

菅原:スマートグラスについてご説明します。これまで「RETISSA Display Ⅱ」と「RETISSA メディカル」というアイウェアを発売してきました。「RETISSA Display Ⅱ」は850台を販売してきましたが、その次世代品の開発を進めています。

「RETISSA Display Ⅱ」はロービジョンの方向けで、一般の方が使える製品としてはまだ不具合もあり、未熟なところがありました。しかし、スマートグラスはそれを超えて、次世代のスマートフォンの端末として一般の方も使える究極の姿を目指し、いよいよ本格的に開発を進めています。

開発の目標として、1つ目に低電力化が挙げられます。「RETISSA Display Ⅱ」の消費電力は数ワットですが、これを10分の1以下にします。

2つ目は、アイトラッキング駆動システムの導入です。今までは網膜に映像を入れるために、まっすぐ前を向いていなければいけませんでした。しかし、眼がどこを向いてもレーザがそれを追いかけ、網膜に投影する技術が実験室ですでに動いています。昨年5月に特許も出願しており、来年春にはデモンストレーションできる見込みです。

3つ目は、高画質への対応です。スマートフォンのディスプレイとして必要な要素・技術はこの3つでそろうと考えています。これを、先ほどお伝えしたTDKやスマートフォンメーカーと連携しながら、開発を進めているところです。

ここまでが事業の概略です。光配線や量子ドットレーザを含め、我々の先端技術を使ったさまざまなレーザによる事業や、別の事業の柱としての網膜投影技術をご紹介しました。眼の健康チェックサービスも始まりつつありますが、そちらについては別途ご質問があればご紹介します。

業績ハイライト

菅原:業績ハイライトです。上期のレーザ事業(LD事業)の売上高は、前年同期比3パーセント増の4億5,100万円、アイウェア事業(LEW事業)は一気に伸びて1億8,600万円となりました。その結果、全社売上高は6億3,800万円となり、これまでの最高額となりました。

業績ハイライト

菅原:LD事業の営業利益は、前年同期比3パーセント増となりました。全社としては営業損失となり誠に申し訳ありませんが、前年同期比で4,500万円改善しており、LEW事業の売上が貢献しています。LEW事業の中身は、後ほどご説明します。

業績ハイライト

菅原:スライド左側の表はお伝えしたとおりです。右側の表は主要製品群別売上サマリーです。DFBレーザ、高出力レーザ、量子ドットレーザ、LD事業計、LEW事業計はそれぞれ前年同期比でプラスとなりました。

残念なところは、小型可視レーザです。こちらはQDレーザの発明品で、バイオ系で非常に重要なポジションを占めつつあります。しかし、COVID-19の収束やロックダウンの終了もあり、中国での市場が少し伸び悩み、在庫調整のために前年同期比でマイナスとなりました。こちらは下期、あるいは来年度以降に持ち直し、さらに上がっていくと考えています。

貸借対照表

菅原:貸借対照表です。資産合計は、現金及び預金の増加により15億1,000万円の増加となりました。負債合計はスライドに記載のとおりです。自己資本比率は93.3パーセントとなっています。

キャッシュフロー

菅原:現金及び現金同等物の期末残高は、前年同期から23億5,900万円増加の50億3,500万円となりました。これは、MSワラントを発行したことによる資金調達によるものです。こちらは4月に終了しましたが、現在50億円の資金がありますので、これをもって事業活動をさらに発展させていきます。

売上高+受注状況

菅原:現在の売上高と受注状況です。受注状況の内容は、年度内に売上として計上されることがほぼ確定しているオーダーです。それも合わせると、全体の売上高は計画比61パーセントで、直近3ヶ年最大の8億8,600万円となります。

精密加工用・計測用DFBレーザ:売上高

菅原:製品ごとにご説明します。精密加工用・計測用DFBレーザは、いろいろなアプリケーションをご紹介しながらご説明します。

まず、特に計測分野の売上高が前年同期比で非常に大きくなっています。計測というのは、半導体ウエハ検査のことです。30センチメートルのウエハに、50ピコ秒から13ピコ秒の瞬間の光を当ててスキャニングします。半導体ウエハに欠陥があると、そこで光が散乱されて上に飛びます。それが上にあるディテクタでチェックされてAIに画像解析され、ウエハの不良がわかるという仕組みです。

これはシリコンのウエハだけではなく、プロセスをしたウエハに書かれているいろいろなラインの欠損・断線も見ることができます。さらに、最近はレーザを高速化したことにより、半導体ではなくリソグラフィー用のマスクそのものの欠陥も発見できるようになってきています。この需要が非常に大きく伸びてきていると思います。

また精密加工では、中国の台頭を強く感じます。昨今、中国のレーザ加工の論文発表数は世界で圧倒的な多さになっています。さらに、それをベースに中国ではさまざまな新しいレーザ加工企業が出てきています。

現在、そのような企業と取引が始まっています。業界の新興国ということは、その国で新しい産業が勃興しているという意味でもあります。我々のレーザを使ってもらいつつ、タイアップも行いながら市場を広めていきたいと考えています。

DFB レーザ

菅原:DFBレーザは、スライドにあるようなものです。これからもどんどん伸びていくと思います。今の段階では、なかなかアプリケーションを図示化するところまでうまくいっていませんが、今度の中期経営計画の発表ではお伝えしたいと思います。

バイオ検査装置用小型可視レーザ:売上高

菅原:バイオ検査装置用の小型可視レーザについてです。電流注入型で緑や黄緑、オレンジ色のレーザを1つのパッケージで出力できるようにした、世界初・世界最低電力・世界最高安定・世界最高速のレーザです。

しかし、先ほどお伝えしたように、COVID-19の収束により、血液を検査するためのデバイスの需要がやや停滞してしまったことは残念です。

こちらの装置は「フローサイトメータ」と呼ばれています。検査方法としては、まず血液を採取します。それを試験管に入れて細いチューブに通し、横から我々のレーザを当てます。そうすると、通ったものが白血球、赤血球、血小板のどれなのかがわかります。

顕微鏡もかなり広まってきています。スライド中央に「STED顕微鏡」と書いてありますが、こちらは空間分解能50ナノメートルの顕微鏡です。100ナノメートルあるCOVID-19の半分の分解能を持っており、まったく眼に見えない領域の大きさが測定できる、非常に高分解能の装置です。

STED顕微鏡は、2014年にノーベル化学賞を受賞しており、どんどん広がってきています。スライドには100台と書いてありますが、これまで累計400台を受注・納品しています。

余談ですが、今年のノーベル賞は量子ドットでしたね。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):量子ドットも御社に関係ありますか?

菅原:残念ながら、こちらは関係ありません。量子ドットには2つの分野があり、今回受賞したのはディスプレイ用のガラスの量子ドットです。弊社で開発を行っているのは、半導体レーザの量子ドットの分野です。こちらはきっと、いずれ物理学賞を受賞できると思います。

坂本:なるほど。ありがとうございます。

センサ用高出力レーザ:売上高

菅原:センサ用高出力レーザは、半導体工場のセンサが伸び始めています。数はまだ多くなく数億円ぐらいの市場ですが、おそらく今後大きく伸びていくと思います。

その中で、日本の半導体工場の中のセンサやセンサメーカーからの受注も伸びています。半導体工場の動画を見ると、レールの上でロボットが走っていく装置がありますが、そのウエハの搬送機用のライダーやクリーンルームの中のパーティクルカウンタとして使われています。半導体工場が建設、増設、改修されるたびに、このようなものがどんどん入ってくると思います。

通信用量子ドットレーザ :売上高

菅原:通信用量子ドットレーザについてです。我々はまさにこちらのために技術開発を行ってきました。いずれはノーベル賞もあり得る分野だと思っています。

シリコンフォトニクスとは、シリコンと一緒になっている光配線のことです。専門的にはNear Packaged Optics(NPO)と言います。アイオーコア社から6万台の受注があり、ちょうど出荷が始まっているところですが、それ以外にも、日本やアメリカ、ヨーロッパの8社の企業と連携を行って技術開発をしています。

量子ドットレーザ

菅原:スライドの左側にある図が量子ドットです。1個が20ナノメートル程度です。COVID-19の大きさが100ナノメートルですので、それよりさらに小さいものです。それをレーザ1本に100万個程度詰め込んでいます。

その右側の図には、黄色い4本の線があります。この1本1本の中に量子ドットが100万個程度入っており、4本のレーザが1チップになっています。この集積チップがマルチレーザチップです。

顕在化し始めたシリコンフォトニクス(電子・光集積回路技術基盤、コンピュータチップの光通信)

菅原:このマルチレーザチップを、アイオーコア社の5ミリ角のシリコンチップに乗せて金属で貼り付けると、100ギガビットのトランシーバになります。光ファイバーをつけて、どこかに飛ばすという仕組みです。このプロセス技術も、経済産業省の10年間のプロジェクトで完成しており、いよいよ実装段階に来ています。

この技術によりFPGAとFPGAあるいはASICの間を光ですべて繋ぐことで、トータルのコンピューティングパワーを一気に上げることができます。おそらくスーパーコンピュータへの応用に相当活かせると思います。あるいはデータセンタや、2030年前後には自動運転車の中の画像伝送などにも使われると思います。

そのため、2030年で1,000万台を超えることが期待できるような世の中の動きが徐々に出てきました。特に生成AIの登場は非常に大きな意味があります。

そのようなこともあり、コンピュータのパワーをいかに上げるかが次の課題になっており、いよいよ光が導入される段階に来ています。

レーザアイウェア(LEW):売上高

菅原:レーザアイウェアの数字です。幸い、前年同期比387パーセント増の1億8,600万円で仕上げることができました。ドライバーは3つあります。

1つ目は「RETISSA MEOCHECK」です。眼の健康チェック用に600台出荷し、1億円以上の売上にできました。また、2つ目は「RETISSA NEOVIEWER」、3つ目は「RETISSA ONHAND」です。

RETISSA MEOCHECK

菅原:簡単に1つずつご紹介します。まず「RETISSA MEOCHECK」は、スライドの画像のような装置を覗き込み、自分で見えたか見えないかボタンを押します。すると、アルゴリズムに従って緑内障や白内障、黄斑変性が発見できます。すでにエビデンスが取れ始めており、論文もこの半年で少しずつ出来上がってきた状況です。

菅原:また、「RETISSA NEOVIEWER」は、ソニー社と一緒に開発しているカメラです。ソニー社のデジタルカメラにバンドルして、日本とアメリカで200台弱出荷しました。すでに100台前後は、一般の方にソニーストアから買っていただいています。

「RETISSA ONHAND」については、今上期は貢献がありませんでしたが、下期に主に公共施設へ導入されます。図書館や美術館、博物館、学校などに敷設される予定です。

また、「RETISSA Display Ⅱ」「RD2CAM」は850台となっています。アナリストの方に「潰えた」と書かれていましたが、決してそのようなことはありません。まずは新しい3製品において、調整のいらないかたちで公共空間で使ったり、楽しみを見つけたりする個別のアプリケーションに特化して作ります。

スライドの一番下に開発受託とありますが、次世代レーザ網膜投影型アイウェアの開発を進めている段階です。繰り返しますが、決して「潰えた」わけではなく、我々にとってのスマートグラスは「RETISSA Display Ⅲ」だという認識です。

RETISSA NEOVIEWER(RNV)

菅原:こちらのカメラはとても意義深いものだと思っています。ロービジョンの学校の先生から、「見えない人は生活の95パーセントで困っていない。しかし、仕事や移動、楽しみがどうしても欲しい。それを与えてくれる装置が必要だ」と言われ、このカメラに行き着きました。このカメラを使うことで、自分で見えない方や見ることに困難がある方が、初めて自分の眼で見て写真が撮れるようになりました。

Low Vision Aid分野製品の拡販活動

菅原:移動ができたり、水族館・動物園を見て楽しんだり、文字が読みやすくなって勉強ができる、仕事ができるなど、さまざまなイベントを通して、そのような声を実感しています。

また、スライド左下にある「With My Eyes 4」というプロジェクトでは、4番目のプロモーションビデオができました。これは、ソニー社の「α」シリーズのカメラに我々の網膜投影のビューファインダーをつけたものです。これにより、サーキットで走っている車を見ながら撮ることが可能になり、そのようなイベントを実施することもできました。

この網膜投影の技術は、最適なアプリケーションを見つけていくことで着実に世の中に広まってきています。

RETISSAシリーズ展開状況:アイウェア製品

菅原:アイウェアに関して、あらためてお伝えします。累計800台以上を販売してきましたが、今お伝えしたように、仕事ができる、楽しみが見つけられる、本が読めるといった装置に特化しながら販売を広めています。

技術開発はかなり進みつつあります。スマートグラス(=Display III)は、TDKなどのいろいろなメーカーと開発することで、現実に少しずつ近づいてきています。

次世代レーザアイウェアに向けた要素技術開発

菅原:先ほどもご紹介しましたが、技術開発はどんどん進んでいます。さらに、低電力化や高画質化、アイトラッキングなど、多くの問題を解決に導く3つの要素技術も揃ってきています。少しずつデモを行いながら、みなさまにご紹介していきたいと思います。

中期事業目標(3ヵ年程度)

菅原:事業の成長についてご説明します。これから3ヵ年程度の中長期で、まずは全社黒字化を達成し、その後の爆発的成長の基盤を形成することが我々の狙いです。

スライドにもいろいろ記載していますが、まずレーザデバイス事業では、3年後の営業黒字3億円超を目指しています。粗利益率40パーセント確保とありますが、こちらは18億円の売上で達成できます。また、その時には新製品の売上高が約4億円を占め、量子ドットレーザは数十万個も出ると見込んでいます。

次に、レーザアイウェア事業についてです。昨年の売上は2.6億円でしたが、今年は4億円強とする計画です。そこにもう1ステップ加えて10億円を目指します。昨年度に500台売れていたものが、今年は1,000台を超えるくらいですが、それを5,000台にすることが目標です。中国、台湾、米国とグローバルに展開し、こちらを実現していきます。

また、ご質問があれば、眼の健康チェックサービスが実際にどのようなビジネスモデルで7万人に到達できるかをお伝えしたいと思います。

中長期の成長

菅原:中長期の成長の全体像です。グローバルニッチなものから始まり、アイウェア事業、シリコンフォトニクス、眼の健康チェック、スマートグラスと成長の種が着々と集まりつつあります。

レーザデバイス事業の戦略

菅原:スライドに細かく書いていますが、中期経営計画を発表する段階では、文字ではなく図にすることで、一見してすぐわかるような成長曲線にしたいと思います。

一言お伝えしたいのは、スライドの右側にある最終製品の市場規模予測についてです。こちらはシステムまで入れた最終の市場規模であり、部品事業の取り分はこの1パーセント程度を想定しています。

その結果が600億円です。この中で我々が3分の1のシェアを獲得し、100億円から200億円程度を2030年度の目標として現在進めているところです。

レーザアイウェア(視覚情報デバイス)事業の戦略

菅原:レーザアイウェアには数字がありませんが、中長期では数字も入れたかたちで発表したいと思っています。3つのモデルと眼の健康チェックサービス、スマートグラスがこれから進んでいく方向になっています。

質疑応答:黒字化の目途について

坂本:まず、黒字化の目途はいつ頃でしょうか?

菅原:2025年か2026年です。早くて2年半、遅くても3年後には黒字化したいと思います。先ほどレーザが18億円とお伝えしました。実はアドミニストレーション(管理)のコストもカバーする営業利益は3億円です。同時に、アイウェア自体は事業部自体が最低でもプラマイゼロとなります。それが黒字の基準のため、クリアするのは2年半から3年と見込んでいます。

質疑応答:アイオーコア社からの追加注文について

坂本:アイオーコア社からの追加注文はありますか? 利益については先ほどお話しいただきましたが、量的な面でボリュームが減ることはありますでしょうか? 可能な範囲で教えてください。

菅原:累計6万個の受注をいただいたのは4月であり、今はまだその出荷を続けている状態です。そのため、今からその後の受注について話しているところです。

坂本:生産も順調ですか?

菅原:おっしゃるとおりです。これまでに製造ラインができ上がっているため、生産に関しては問題ありません。

質疑応答:量子ドットレーザのカスタム先の進捗状況について

坂本:「量子ドットレーザのカスタム先の進捗状況について、量産化の目途を教えてください」というご質問です。

菅原:一番大事なのは低コスト化です。ウエハを3インチから4インチに変えることで歩留まりがさらに上がり、チップの取れ数も倍ぐらいになります。このようなことにより、低コスト化への対応は十分できていると思います。

もともとガリウム砒素のCDやDVDを作っていた製造ラインに流して使っているため、4インチが一番得意です。むしろ製造には丁度よいサイズでできていると思います。

坂本:流用や転用が可能なのですね。

菅原:そのとおりです。したがって、直径10センチのウエハを次々と流せるようになりました。当面の低コスト化や量産には十分対応できると思います。

質疑応答:アイウェアについて

増井麻里子氏(以下、増井):実は関西で眼鏡型のアイウェアを試させていただいたのですが、スマホの映像が長方形のようなかたちで見えました。普通の景色を見る場合は眼鏡の横にカメラを付け、映像を網膜に映すことで見ることができましたが、焦点を当てることが少し難しかったです。

菅原:見ることが難しかったということですよね。

増井:おっしゃるとおりです。ロービジョンの方もお連れしていたのですが、最初は少し難しくて時間がかかってしまいました。焦点が合えばきちんと見えましたが、合わせるのが難しかったです。

菅原:実は焦点を合わせることが難しい点が、網膜投影における最大の弱点です。レーザビームは瞳孔を通る必要があるため、眼鏡が少しズレると見えなくなってしまいます。しかし、アイトラッキングによって解消される見込みが出てきています。

増井:次世代のアイウェアということでしょうか?

菅原:そのとおりです。眼鏡がズレてもビーム位置を調整できるようになってきているため、そのような不具合は解消されると思います。

また、アイウェアの場合、FOV(視野)が26度と狭かったのですが、すでに2倍程度に広がり、非常に大きな画面で見えるようになっています。まだ実験の段階ですが、これを商品化しようとしています。

坂本:将来はさらに視野が広がる可能性があるということですか?

菅原:装置のサイズとのトレードオフになりますが、原理的には真横まで見ることができます。VRヘッドセットのように完全に覆ってしまえば、ほぼ真横まで広げることが可能だと思います。

質疑応答:眼の健康チェックサービスのビジネスモデルについて

坂本:眼の健康チェックサービスのビジネスモデルについて、「血液検査に1回数千円いただくのか、1家に1台血圧計のような医療機器を販売するのか、どのようにビジネスにつなげていくのか教えてください」というご質問です。

菅原:前提として、眼に関する早期発見は難しく、チェックシステムがありません。人間ドックでは眼底撮影や視野検査が約5パーセントしか導入されていませんし、企業の健診ではバルーンを見て視力を測ったりするだけであるため、誰しもが病院に行かなければ視野検査はできません。まずは、そのような検査をどこでもできるようにしていきます。

ビジネスモデルとしては、まずはドライバーなど眼が重要な方々に広げています。日本のタクシー運転手の方は約30万人となっており、バス・トラック・パイロットの方まで含めると約128万人の方が運転を行っています。そのような方々の事業所を訪問している検診業者と一緒に検診に入ることで、我々が健康診断の一角を占めています。このようにして、いくばくかのお金をいただくビジネスが成り立っています。

まずは5,000人から始めた段階ですが、他の業界にもどんどん広げていきます。医師が健診サービスを行わずとも、例えば人材紹介会社に依頼してチームを作ったり、検診業者に委託したりすることで、眼の健康チェックサービスをどこででも手軽にできるようになることが目的です。

また、DX化も推進しています。検査で取得したデータを我々のサーバに送って解析し、管理者に自動で返送します。こちらはレンタルとして貸し出して実施します。

例えば、200人程度の事業所において、社員の時間が少し空いた時に自ら1分で眼の健康チェックを行うと、結果がどんどん蓄積されます。そして、「病院へ行った方がいいですよ」「大きな問題はありません」など、個人にも管理者にもわかるサービスを行っていきます。月額5万円のサブスクリプションであれば、年間で60万円となり、200件成約できれば1億2,000万円になります。

このようなサービスをはじめ、みなさまの眼の健康を守り、失明を救える社会にしていくことを、東北大学と一緒に進めようとしています。

最初の拠点はおそらくコンタクトレンズ店です。コンタクトレンズ店は法律上、眼鏡店にあるオートレフやフォロプターなどの眼鏡を処方するための装置を置けないことになっています。しかし、そこに民生機を置くことで、眼の疾患やドライアイ、乱視、老眼、眼底視力が1人で測れるようになります。

坂本:ドライアイもわかってしまうのですか? おもしろいですね。

菅原:そのような装置を置くことで集客につながったり、街角でコンタクトの処方ができたり、眼の健康を守ったりできるようになるはずです。

質疑応答:「RETISSA Display Ⅱ」の成長可能性について

坂本:国内証券のレーティングと目標株価の大幅な引き下げについて、大変多くの質問が届いています。主な要因は、おそらく「RETISSA Display Ⅱ」の成長の可能性が少し危惧されていることを前提にレポートを書かれたことだと思います。

私は現物を読めていませんが、質問された方々も、そのような考え方で見ていらっしゃるようです。このあたりの背景や情報をいただければ、株主や視聴者の方も理解が深まるのではないかと思います。

菅原:アナリストの方からいただいたコメントは、半分は当たっていますが、残り半分は当たっていません。確かに「RETISSA Display Ⅱ」は、850台の段階でいったん打ち止めにします。ただし、これをベースにして、フラットなミラーやアイトラッキング、低電力や高画質の開発がどんどん進んでいます。

このような技術を使って「RETISSA Display Ⅲ」の準備をしています。私もそこがゴールであり、最大の勝ち目だと思っています。すでにロービジョンの方向けにはこの数年間で3商品が出ており、その後は一般の方も使用するスマートグラスがゴールとなります。潰えているというよりは、技術も自信もますます高まっている状態です。

坂本:発展的に高まっているということですね。

菅原:アナリストの方には、今後も引き続き我々に関する評価やレポートを出していただければありがたいとお話ししています。

質疑応答:アイウェアとレーザの原価率について

坂本:おそらく将来の利益のイメージを膨らませたいということだと思いますが、「アイウェアとレーザの原価率はどのぐらいでしょうか? アイウェアの先行投資が大きいと思いますが、軌道に乗った時の利益や将来的な原価率はどのぐらいを目指していくのでしょうか?」というご質問です。

菅原:中期経営計画の粗利益としては、レーザが4割、アイウェアが3割を1つの基準として想定しています。IPO時に「10万円の商品を10万台売って100億円にする」とお伝えしましたが、スマートグラスが完成すれば、このような数字が出てくると思います。

ただし、原価を売価10万円の半分程度にして販売できることがベストです。そこはこれからパートナーとも連携しながら、どのくらい自信を持って一気に10万台生産するのかが重要だと思います。

仮に5万円の商品の原価が2万円だとすると、一度に20億円が必要になるため、今後の資金のバランスと投資時期に対しては、マーケティングや営業の力も借りながら進めていくものだと思います。 

質疑応答:社員数減少の理由と今後の計画について

坂本:「以前は50人程度の社員がいましたが、現在は43人に減少しています。売上を伸ばしていくにあたって人員が必要だと思いますので、減少の理由と今後の計画を教えてください」というご質問です。

菅原:我々はアイウェアや網膜投影の最終商品を作っていますが、いずれはモジュール本体のコア技術に戻っていくこともあり、「オープンクローズ」と呼んでいます。したがって、自分たちの手で最終商品を販売するところから少しずつコアな領域に集中していく中で、コア技術者を集め、技術を高めていくことが大事だと思っています。

そのような意味で、現在はレーザや網膜投影などのコア技術を開発できる若手の人材を募集している段階です。ヘッドハンティングも用いながら、医師免許をもっている優秀な技術者を集めていきたいと思います。

坂本:営業を増やさなければ売れないという側面もありますが、どちらかと言えば、将来は開発型の事業に戻していくようなビジョンなのでしょうか?

菅原:そのとおりです。営業に関しては、ソニー社のマーケティングチームと非常に強くタイアップしたり、製造と同じように代理店や連携パートナーの力をうまく借りたりすることを想定しているため、まだ自前で広めていく段階ではないと思っています。

質疑応答:量子ドットレーザの量産化に関するボトルネックについて

坂本:先ほどボトルネックはあまりなさそうだというお話がありましたが、「受注済の量子ドットレーザ6万個のうち、2万個が出荷済となっていましたが、量産可能な状況における出荷数にしては少ないように感じます。既存のMBE装置で何十万個も量産できると聞いていましたが、量産化にボトルネックはあるのでしょうか? 例えば、フリップチップボンディングができる工場の確保が難しいなどがあれば教えてください」というご質問です。

菅原:1億台生産する場合はMBE装置が10台ほど必要ですが、1,000万台までは2台で対応可能です。

坂本:片方はメンテナンス中のサブの装置ですよね?

菅原:おっしゃるとおりです。もう1台なければお客さまに安心していただけないため、早めに2台体制にして対応します。さらに、1,000万台を生産する時にはスーパーコンピュータやデータセンタ、車にも導入されているフェーズとなっています。2030年に向けた体制を作っていきたいと思います。

坂本:1台作るのにいくら費用がかかりましたか?

菅原:インフレ前は装置自体で3億5,000万円かかりました。

坂本:大きな利益を生む装置ですが、メンテナンスは度々必要なのでしょうか? 案外ずっと回せるものですか?

菅原:1年から1年半に1回のメンテナンスが必要です。これは超高真空の釜で、中に金属のセルが入っているのですが、それがなくなると、一度中を開けて砒素を削り落とし、すべてきれいにして取り替えます。

坂本:メンテナンスでは、どのぐらいの期間止まるのでしょうか?

菅原:2ヶ月です。

坂本:それは確かに装置がもう1台あったほうがいいですね。

菅原:メンテナンスが起こることは事前にわかるため、その前に若干ウエハを作って溜めていますが、確かに現状に対してよく1台で回せているとは思っています。NECから来た大変優秀なエンジニアの方がうまく対応してくれているおかげです。ただし、そこに頼るわけにはいきませんので、もう1台は早めに用意することになると思います。

質疑応答:「IOWN」の進捗について

増井:「IOWN」の進捗について、お話しできる範囲で教えてください。

菅原:これは私の推測ですが、NTTの一番の目標は、2030年の6Gに向けて1ペタビットの光通信を作ることです。現在はデジタルコヒーレントという技術を用いて、NTTと富士通、NECと一緒にどんどん技術を高めています。

この技術によって、光通信は10テラビットから数10テラビットになります。しかし、まだその先もあるため、本当のゴールまでにはさらに光通信のパイプを太くするためのさまざまな技術開発が必要です。

我々が取り組んでいる光配線は、その先にあるコンピュータの技術です。NTTや「IOWN」も、パイプをテラビットまで太くするよりも前に、光を用いた技術で、その先にあるコンピュータの情報処理をさらに高めていこうとしています。

LSIの周りにNear Packaged Opticsという光配線のチップを置いてつなぎ、ASICという、LSIと光のチップを1つのパッケージにするCo-Packaged Opticsがあります。NTTのロードマップは、まさにこのようになっています。

Near Packaged OpticsとCo-Packaged Opticsのレーザ材料には、インジウム燐を使いますが、我々はガリウム砒素の量子ドットを使用しているため、材料が異なります。インジウム燐のレーザが最後まで生き残るかどうかは、私にもよくわかりません。

ただし、シリコンにインジウム燐を貼り付けて本当に信頼性があるのか、壊れないのかということ、さらに温度が高温になるとインジウム燐レーザは動かないため、本当に使い切れるのかということが挙げられます。彼らの技術はまだ学会で発表されている段階のため、実用化には時間がかかるのではないかと考えています。

これは私の意見であり、オーソライズされたものではありませんが、量子ドットのほうが高温でも壊れない上に、すでに実用段階である他、温度が変わっても使用できる強い技術だと思っています。

配信元: ログミーファイナンス
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